ジョージ・バーナード・ショーが書いた戯曲で、ブロードウェイでのミュージカルが大ヒットした『マイ・フェア・レディ』。1964年に公開された映画版は、現代でも人気の女優オードリー・ヘプバーンがヒロインを演じ、当時アカデミー賞主要部門を制覇しました。一見、華やかなシンデレラストーリーの本作ですが、当時の男尊女卑、階級社会、女性のアイデンティティへの複雑な感情が映し出されており、改めてみると考えさせられる作品にもなっています。

なまりの強い田舎娘が、舞踏会で注目を浴びるレディに

ヒロインは、貧しい花売り娘のイライザ(オードリー・ヘプバーン)。ある夜のこと、たまたま声をかけた言語学者であるヒギンス教授(レックス・ハリソン)と出会ったことで、イライザの人生が変わっていきます。田舎で育ったイライザに対して、彼女の強いなまりをなおすことができると言ったヒギンス教授。

良い暮らしを夢見るイライザは、その言葉に期待を膨らませ、ヒギンス教授のもとを訪れます。しぶっていたヒギンス教授でしたが、友人からの「イライザをレディにできるか」という賭けの提案で乗り気に。そうして、イライザはヒギンス教授の家に住み込み、なまりを治すために猛特訓を受けることになるのです。

厳しい教育にも逃げ出すことなく努力したイライザは、きれいな話し方ができるようになりました。そして、社交界の世界に踏み出していきます。苦戦しながらも実践を積み、6週間後に行われた舞踏会では見事なレディに! 王子からダンスを申し込まれるまでに成長を遂げたのです。賭けに勝って喜ぶヒギンス教授のそばで、夢が叶ったイライザ本人は複雑な表情で——。

美しいイライザから、参考にしたいメイクアップやヘアスタイル​​

外で、花売りをしていた貧しいイライザ。そんな彼女がヒギンス教授の家に住み込むようになり、洋服や髪型もきれいになり変身! 参考にしたい、ヘアスタイルや、エレガントなお洋服がたくさん出てくるのも本作の魅力のひとつ。

社交界や舞踏会でのドレスシーンでは、パーティーで参考にしたいヘアスタイルやメイクアップも! とくにドレスは56年前とは思えぬほどスタイリッシュなデザインで、ウェディングドレスの参考にもなりそうです。そんな素敵な衣装を纏って美しい声で歌う、美しすぎるイライザのミュージカルシーンは、観ていて心が躍ります。

深いテーマも織り込まれたシリアスな側面​​

元祖『プリティ・ウーマン』と評される事も多い本作ですが、ラブコメ要素は一切なく、どちらかというと深いテーマが織り込まれています。

ヒギンス教授の教えで、優雅なレディに変貌を遂げたイライザ。しかし、それに対して素直に喜べません。ヒギンズ教授の労働階級に対する差別や、女性蔑視の態度に疑問を持ち続けていたからです。言葉は上流階級になっても、ヒギンズ教授のイライザに対する態度は花売り娘のまま。ヒギンズ教授はイライザが家を出て行ってしまってから、初めて彼女の存在の大切さに気づきます。様々な問題や複雑な感情が映し出されている『マイ・フェア・レディ』。時代に沿った価値観と比べて考えて見られる、興味深い作品です。

菜梨 みどり

永遠の人気女優オードリー・ヘプバーンが見事に熱演した『マイ・フェア・レディ』。同時期に公開された同じミュージカル映画『メリーポピンズ』の主演を務め、『マイ・フェア・レディ』のミュージカル舞台で主演を務めたジュリー・アンドリュースが、当時アカデミー賞の主演女優賞を獲得したのだとか…。そんな裏話もなんのその、わたしが見る限り素晴らしい演技を見せていました。すでに観たという方も、『メリーポピンズ』とセットで改めて鑑賞してみるのもオススメです。