田村芽実さんが企画・脚本・演出を手掛ける「シアターユニット小梅ちゃん」の旗揚げ公演『オンリー・ロンリー・ガールガールガール』-普通になれなかった私たちに捧ぐ物語-。出演は田村芽実さん自らが直々にオファーした原田真絢さん、伊藤かの子さんと、田村さんご自身も出演する3人芝居です。施設で共に育ち、大人になった3人の女性を描いた本作に挑む思いを伺いました。
※本記事はシアターユニット小梅ちゃんより取材制作費の提供を受け、Audience編集部の企画・編集により制作しています
1人では書けない。共演から生まれた3人の物語

−シアターユニット小梅ちゃんの旗揚げ公演として『オンリー・ロンリー・ガールガールガール』という作品を選んだ理由をお聞かせください。
田村「これまで自分1人で作品を作ったり、趣味で小説を書いたりはしてきたんですけれど、誰かとやる作品となると1人ではなかなか書けない部分があって、外側からの要素やエネルギーをもらわないと書けないなと思っていました。そんな中、2025年にミュージカル『SIX』で原田真絢ちゃんと共演して、真絢ちゃんと一緒に何かやりたいなという想いが漠然と生まれていきました。
また演劇作品をやる時には吉澤嘉代子ちゃんに音楽を頼みたいというのは何年も前から話していましたし、衣装を手掛けていただくオンリーチャイルドはひとりっ子2人組のファッションブランドで、2人の会話が凄く面白くて、こういうのを舞台化したら面白いだろうなと思っていたんです。そういった色々な要素を取り入れて、『オンリー・ロンリー・ガールガールガール』が生まれました。
最初は2人芝居を想定していたのですが、2人で話を転がしていくのって凄く難しくて。そこでもう1人プラスして、この役を誰かやってくれる人はいないかな?と考えていました。そんな時に『キンキーブーツ』で伊藤かの子ちゃんとご一緒して、凄く素敵な女優さんだなと思ってお願いさせていただきました」
原田「台本を書き始める前の構成段階から、一緒に温泉に行きながらお話を聞いていたので、もうここまでたどり着いたんだなと今実感しています。こんなにすぐに実現できるとは思いませんでした」
伊藤「私は急に電話がかかってきて、“ぜひ”とお返事しました。この可愛いめいめいからは想像できないくらい、深い作品だなとやるたびに思っています」
田村「フライヤーも可愛らしくてキャッチーな感じなんですけれど、結構稽古場は大変だよね(笑)。私は台詞で全てを伝えすぎる戯曲が好きではなくて、演出や照明、役者の力が加わってこそ完成されるものだと思うんです。戯曲で完成し過ぎてしまっているものを見ると、役者としてはもっと芝居に委ねてくれても良いのにと思う。行間を信じるということにこだわって創ったので、だからこそ行間を埋める作業がお2人は凄く大変だろうなと思います。
言葉だけではいくらでも嘘をつけるけれど、その日その日でリアルに出る感情の機微を感じられ、そこに共鳴するというのが演劇を観た後にもらえるお土産だと思っていますし、そこにこだわって自分は生きてきました。だからこの作品にもそれを求めているのですが、創る側となると思っていたより大変でしたね」

当て書きでもらった“ギフト”
−原田さん、伊藤さんは、田村さんのこだわりが詰まった作品に出演してみてどのように感じていますか。
伊藤「私はここまでお芝居をするのが初めてですし、出演者が3人しかいなくて、ずっとこの3人の誰かの心情を見ているという状態も初めてなので、初めてづくしです。私の居方(いかた)が少し変わるだけで、2人の役の生き方が変わってしまったり、舞台上のどこにいるかによってお客様からの見え方が全く変わったり。同じ台詞を喋っていてもどんどん変化していくので面白いです」
原田「この作品の構造が、観にきていただけたらきっと楽しんでいただけるようなワクワクする構造になっていて、その分やる方はそれを成立させなければいけなくて。パズルのように“ここを変えたらここが噛み合わない”というのが起こるので、トライアンドエラーを繰り返しています。パズルが完成するのかなと不安になる日もあるんですけれど、凄く役者に任されている作品なのでやりがいがありますし、出来立てほやほやの脚本、出来立てほやほやの演出で、みんなで苦しみながらも創っていく充実感があります」

−各キャラクターは当て書きされているのでしょうか?
田村「どちらも当て書きですね。真絢ちゃんは最初から真絢ちゃんがやることを想定して書いています。かの子ちゃんはアイカとシオリどちらをやってもらうのが良いか最初悩んでいたのですが、読み合わせをした時に、シオリの方が合いそうだなと感じました。そこからかの子ちゃんに合わせてかなり書き直しました」
−お二人は演じる役柄がご自身に重なると感じる部分はありましたか。
伊藤「私は凄くありますが、真反対なこともありました。相手側の気持ちになったことはあるけれど、当事者の気持ちになったことはなかったなとか。あとはずっと感じないようにしていたけれど、本当は心の奥底にあった感情を引っ張らないとできないシーンがあったりして。過去の自分と向き合うような稽古の日々になっています」
原田「これは当て書きのギフトだと思っているんですけれど、自分の主観と外から見た自分とのギャップを思い知りましたね。無意識でやっていたことや、外側から見て良いなと思ってくれていることと本来の自分とのギャップがあって、凄く不思議な感覚です。普段の役であれば自分とのギャップがあっても恐怖はないですけれど、今回は外から見えている自分に、今の自分が辿り着けるのだろうかという、あまり出会ったことのない感情になっています。
でも確かに奥底にあって、小さい頃の自分を思い出すような感覚もあります。初めて台本を読ませてもらった時には号泣してしまって、電話したんです。出会ってからまだ数年ですし、作品も2作品しかご一緒していないのに、小さい頃から私のことを知っていたのかな?と思うくらい、自分が無くしてしまったものや、無意識にもらっていた宝物が散りばめられていて。凄く心が洗われました」
伊藤「感じないでいたほうが生きやすかったものを感じないとできないシーンがあったり、一回本当の自分と向き合わないと出来ない役なんですよね。自分の持っている傷とちゃんと向き合わないと次に進めない感じがあって、昔小さい頃に自分が思っていたけれど、今は感じないようにしていたことに向き合わざるを得なかったです」

子どもの“まっすぐさ”に対するリスペクトを込めて
−3人の会話劇から、普段は隠している本音や想いが見えてくる作品ですよね。
田村「私自身が生きていく上で、少女性やイノセント、童心という言葉を大事にしています。子どもという存在も大好きですし、その上で凄く敬意を払っていて。まっすぐさとか素直であることにリスペクトがあるんです。でも“感情的”だったり“子どもっぽい”という言葉は未熟なイメージとして捉えられがちで、そこに疑問を持ってきました。学生時代から子どもである部分を封印してお仕事をしてきたので、どこかに子どもの部分を置いてきたような自覚もあるんです。だからその自分を救ってあげたいという思いもありますし、特に女性は無自覚なうちに搾取されてきたことが多いと思います。こういったことを調べていくと複雑で、何か問題提起をしたいわけではないですけれど、そういう部分がなんとなく作品に現れたのかなとは思います」
原田「作品の中で3人の様子を見ていると、女子の中で共通してある楽しさや可愛さが凄く大切に扱われているように感じます。それはお客様にとっても可愛く映るだろうなと思いますね。何か押し付けるのではなく、その可愛い様子を観ていただくという提示の仕方が凄く良いなと思います」
伊藤「人によって生きてきた過去は全然違うので、1人1人が刺さるシーン、言葉が各々違うだろうなと思います。でも真絢ちゃんが言ったように、硬くではなくて柔らかく、ほわーんと届けるのが素敵だなと思って。色々なことを受け取ってもらえたら嬉しいです」
田村「嬉しいです。人に言えない傷って誰しも抱えていると思っていて。言うほどでもない傷というのは潜在的にあると思いますし、こういうことあったな、でも人に“いつまで悩んでいるの?”と言われたらもっと傷つくしな、という傷やトラウマは誰でもあると思うんです。この作品を観にきてくださった方には、そういったことを今日は抱きしめて寝て良いんだなと思えるような作品になれば良いなと思います」
−最後にメッセージをお願いします。
原田「客席のあなたも一緒に物語を紡いでいく、そんな作品です。
コメディ要素もたっぷりありますので、構えずに気楽な気持ちで、劇場に足を運んでくれたら嬉しいです」
伊藤「アイカ・シオリ・ヨツバという3人の名前も、その人らしい、その人の人生を映した名前になっているなと思います。観終わった後に、こういう意味なのかな?と想像してもらえたらなと思います」
田村「初めてのことで不安も多いですが、キャストもスタッフも、全員が我が事として動いてくださっています。人の心に作品を届ける時、創る人の意気込みや、どれだけ稽古場で葛藤し、自分の役や作品と向き合ったかというのは、伝わると思います。私と同じように皆さんが作品と向き合ってくださって、お客様に誠実に創ってきたということは、胸を張って言えます。女優が下駄を履かせてもらって作品を創らせてもらっているのではなく、友達を集めてワイワイやっているものでもなく、全てに向き合って全力でやってきたので、観にきてくださる方にはそれが伝われば良いなと願っています」

『オンリー・ロンリー・ガールガールガール』-普通になれなかった私たちに捧ぐ物語-は2026年10月1日(木)から7日(水)まで有楽町「I’M A SHOW」にて上演。公式HPはこちら
いつも演劇・ミュージカルで心奪われるお芝居をされる田村芽実さん。才能あふれる田村さんのシアターユニットは、田村さんらしい可愛い世界観と、心の奥底の孤独や傷を包み込むような温かさに満ちていました。原田真絢さん、伊藤かの子さんとのコラボレーションにより、どんな化学反応が起こるか楽しみです。




















