第66回岸田國士戯曲賞、最終候補作品の1つに加藤シゲアキさん脚本の『染、色』(せんしょく)が選ばれ、大きな話題となりました。岸田國士戯曲賞の存在を初めて知った方も多いのではないでしょうか。岸田國士戯曲賞とはどんな賞なのか、どんな基準で選ばれるのか等をご紹介していきます。

新人劇作家に贈られる岸田國士(きしだくにお)戯曲賞

株式会社白水社が主催している岸田國士戯曲賞。1955年に新劇戯曲賞として始まり、1961年に「新劇」岸田戯曲賞、1979年に岸田國士戯曲賞に改称されました。1月〜12月の1年間に発表され、雑誌発表や単行本にて活字化された作品が選考対象とされています。しかし演劇作品の脚本を活字化される機会はあまり多くありませんよね。そこで、選考委員等の推薦があれば、生原稿・台本であっても対象となることがあるそうです。また近年は、オンライン上演の作品も対象とされています。

作品・男優・女優・演出家・スタッフに贈られる読売演劇大賞などとは違い、岸田國士戯曲賞はその名の通り、演劇の台本である「戯曲」に贈られます。新人劇作家の奨励と育成を目的に設立された賞のため、新人劇作家の登竜門であり、「演劇界の芥川賞」だと呼ばれています。受賞者には正賞として時計、副賞として賞金が授与されます。毎年1作品が選ばれるとは限らず、該当作なしの年や、2〜3作品が選ばれる年もあります。

2022年開催(2021年上演が対象)の第66回岸田國士戯曲賞は、選考会が2月28日午後5時から東京神保町・學士會館にて開催。選考委員は岩松了さん、岡田利規さん、ケラリーノ・サンドロヴィッチさん、野田秀樹さん、矢内原美邦さん。現在最終候補作品9作品が発表されています。第66回岸田國士戯曲賞最終候補作品一覧はこちら

三谷幸喜、宮藤官九郎も受賞!岸田國士戯曲賞の過去受賞者とは

岸田國士戯曲賞はこれまで、演劇界に大きく名を残した劇作家たちが受賞してきました。劇作家つかこうへいさんは戯曲『熱海殺人事件』で、1974年に当時最年少の25歳で岸田國士戯曲賞を受賞。紀伊國屋ホールでは2021年改修後の柿落とし公演として上演されるなど、今でも日本中で愛され続けている作品です。

今は選考委員を務める野田 秀樹さんは、『野獣降臨』で1983年に受賞。その他過去受賞作品に、平田 オリザさんの『東京ノート』(1995年)、松尾 スズキさんの『ファンキー!――宇宙は見える所までしかない』(1997年)、岩井秀人さんの『ある女』(2013年)などがあります。また、連続テレビ小説『あまちゃん』や大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』でも知られるクドカンこと宮藤官九郎さんは戯曲『鈍獣』で2005年に受賞。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』も話題の三谷幸喜さんは『オケピ!』で2001年に受賞しています。

Yurika

日本のエンタメ界に影響を与える劇作家の登竜門となっている岸田國士戯曲賞。第65回が開催された昨年は、期間限定で最終候補作品がWeb公開されていました。今後ますます活躍していくであろう劇作家の作品を、いち早くチェックしておきましょう。