芳根京子さん、渡辺翔太さん(Snow Man)がダブル主演を務め、石丸幹二さんら実力派キャストを迎えるBunkamura Production 2026『ウェンディ&ピーターパン』。初日開幕を前に、取材会と公開ゲネプロが行われました。

「最高なネバーランドにお連れできるように」「ピュアな気持ちでやれれば」

『ウェンディ&ピーターパン』取材会には芳根京子さん、渡辺翔太さん、石丸幹二さんが登壇しました。

ウェンディを演じる芳根京子さんは「お稽古が始まって約1ヶ月半、まだ明日が初日というのがピンと来ていない感覚があるんですけれど、チーム一丸となってみんなで初日に向けてお稽古を重ねてきたので、自信を持って初日を迎えられる気がしています。初日が楽しみです」と心境をコメント。

ピーターパンを演じる渡辺翔太さんは、「ウェンディ視点のピーターパンということで、皆さんが抱いているピーターパンのイメージから、これを観ていただくと相当奥深さが伝わるかなって思うのと。来ていただいた皆様には、(劇場は)新宿のど真ん中ですけれど、ここはネバーランドだぞということを伝えて、お客様も本当にネバーランドに来た気分になっていただけたら」と意気込みます。

石丸幹二さんは「エネルギッシュでフレッシュな若い力に支えられながら稽古をしてきて、今ピークのところに来ています。気持ちとしては、飛んでいるよね、もう。芝居的にもフライングが多いですし、現代の技術を使った色々な見せ方をした舞台となっていて、客席に座られた方を必ずあっと言わせられる舞台になっています。稽古ではミラノ座に来る前にBunkamuraシアターコクーンを使うことができて、舞台上での準備をかなりしっかりすることができました。ですから胸を張って、僕たちのショーをお見せできるところまで来ています」と手応えを語りました。

本作の演出を手がけるジョナサン・マンビィさんの印象を問われると、「こんなに笑いが溢れる稽古場ってあるんだというくらい、毎日みんなでゲラゲラ笑いながら。マンビィさんの演出で、“そういう考え方もあるんだ”と自分の中になかった思考回路をすごく切り拓いてもらいました。台詞1つ1つにしっかり意味があるということ、それをちゃんと落とし込んで舞台に立たなくてはいけないプレッシャーもあるんですけれど、毎日がすごく濃くて充実していて、こんなにも自分の成長を感じ、吸収している毎日って贅沢だなと感じていました」と振り返った芳根さん。

渡辺さんはこの言葉にニヤリと「こんなに明るい現場があるんですねって言うと他の現場が…」と言うと、芳根さんは「そう言うからそうなっちゃう!揚げ足取って!」と言い返し、まるでピーターパンとウェンディのようなやりとりが。

渡辺さんは「本当に新鮮なことだらけ。稽古場ではテーブルワークと言って、いわゆる座学みたいな、大学で講義を受けているような台本と向き合う時間があって。学生に戻った気分で、僕は当時から座学が苦手だったので本当に必死でやっていました。そこから稽古をやった時にマンビィさんにgreatと言われた時の嬉しさは大きかったです。やっぱり楽しいながらも緊張感のある稽古場でしたから、greatと言われるのは嬉しかったですね」と振り返ります。

また「細部にまでこだわっているので、フライングでは飛びますけれど、緊張で台詞は飛ばないように…」と言うと「おっうまい!ここ使ってください!よっ渡辺翔太!」と先ほどの仕返しのように盛り上げる芳根さんでした。

石丸さんはマンビィさんについて「とてもポジティブな方なので、何かを伝える時にもものすごく大きな温かいものが届くんです。彼が“それは違う”と言うことは一度もありませんでした。まず“そうだね”と受け止めてくださって、なぜそう思ったのかを聞いてくださる。その上で“でも僕はこう思うよ”と、このやり取りが僕たちの心をほぐしてくれた。これが、稽古場がすごくスムーズに進んだ大きな理由の1つだと思いました。マンビィさんのことを僕たちみんな愛しているし、彼も愛をいっぱい注いでくれて、愛に包まれたこのストーリーにぴったりの演出家でした」と語ります。

フライングシーンも盛りだくさんの本作ですが、石丸さんは「しょっぴーの飛び方で好きなのは、ワイヤーじゃない飛び方をするところ。そこがかっこいいです」と絶賛。渡辺さんも「みんなで飛ぶシーンは視覚的にも分かりやすいですし、照明や音響も合わさって美しく見えると思うので注目していただけたら」と語ります。

芳根さんは「ピーターの登場シーンはすごくかっこいいので、ウェンディは見られないんですけれど、稽古場では薄目を開けて見ていました」と明かしました。

最後に石丸さんから「ここからお客様の前でのパフォーマンスが始まり、客席とのキャッチボールが始まります。僕たちも球を取りながら、素敵な返球をできたら」、

渡辺さんから「幹二さんが言ったように、お客様を巻き込むようなやり取り、一体感を生まなければいけないシーンもたくさんあります。とにかくお客様に観に来てよかったなと笑顔で帰っていただくことが一番かなと思いますので、僕たちが楽しめばお客様も楽しんでいただけるかなという思いで、ピュアな気持ちでやれればいいなと思っております」、

芳根さんから「美術のセットも細かくて美しくて、映像も音楽も照明も、全てが合わさった時にどんな空間が広がるんだろうと。私たちはやっている側だから見ることは出来ないんですけれど、本当に素晴らしい美しい世界が広がっているという自信があります。観に来てくださった皆様を最高なネバーランドにお連れできるように、みんなで怪我なく事故なく、最後まで全員で大千穐楽まで駆け抜けていきたいと思います。来てくださる方は何も考えず、ただ楽しむ心だけを持って劇場に来ていただければ。楽しい時間を過ごしてもらえるよう、私たちが精一杯頑張りたいと思います」とメッセージが贈られ、会見が締めくくられました。

「これはただの遊びなんだ。死ぬって素敵な冒険じゃないか」

2013年にジョナサン・マンビィさんの演出で英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの新作公演として上演され、英国内でも再演された『ウェンディ&ピーターパン』。日本では「シアターコクーンが海外の才能と出会い、新たな視点で挑む演劇シリーズ DISCOVER WORLD THEATRE」の第11弾として2021年に上演されて以来、5年ぶりの上演となります。

言わずと知れた世界的名作「ピーターパン」をスコットランド出身の劇作家エラ・ヒクソンさんがウェンディの視点から大胆に翻案。ダーリング家に体の弱い末っ子トムという新たな登場人物を加えることで、家族の“喪失からの再生”を丁寧に描き出します。

ダンス、フライング、小道具、美術、映像などを駆使した“フィジカルシアター”のスタイルを取る本作では、身体表現も印象的に活用されます。例えばピーターパンがウェンディと出会うきっかけになる“影”。影を複数人の役者が演じることで、ダーリング家に隠れた1人の“影”をピーターが取り戻しにやってくる…というファンタジーながらも人間的な温かみのあるシーンが実現しています。彼ら“影”はピーターと共にロストボーイズと遊び、フック船長と戦い、ピーターが飛ぶのを支えます。

フック船長に迫るワニも役者が表現することで、より“時の番人”としての役割が明確に。

ウェンディがネバーランドに向かうのは、失ったトムを取り戻すため。ネバーランドではロストボーイズに母親の役割を押し付けられるという、原作通りのジェンダーバイアス的要素も描かれますが、彼女は自らの目的を見失わず、トムを探す冒険に1人で出かけていきます。

家族を気遣い、愛する弟のため勇気を振り絞って行動していく力強いウェンディ像を芳根京子さんが瑞々しく表現。運命を切り拓いていく女性でありながらも、1人で解決するのではなく、周囲と話し合おうとする姿勢を持ち、人々を巻き込んでいく姿も印象的です。

ウェンディの弟ジョンとマイケルを演じるのは、鳥越裕貴さんと松岡広大さん。無邪気な少年らしさいっぱいの姿から、兄弟の死による虚無感や寂寥感が滲む姿への変化を繊細に見せていきます。彼らはネバーランドで楽しい時間を過ごすことで、少しずつ現実を忘れていってしまい…。

母親ミセス・ダーリング役には池谷のぶえさん、父親ミスター・ダーリング役に石丸幹二さん(フック船長と2役)。明確に夫婦関係の変化を描き出すことで一家全体に漂う喪失感を印象付けます。

一方、“永遠の少年”であるピーターパンを演じる渡辺翔太さんは、お調子者なピーター像をエネルギッシュに描きながらも、ウェンディの核心に迫る言葉を意図的に避けている様を絶妙なバランスで見せ、ピーターの隠し持つ多面的な側面を感じさせます。

心躍るフライングシーンやフックとの戦闘シーンも盛りだくさん。身体能力の高さでピーターの自由自在な存在感を描き出します。

彼は本当に“永遠の少年”なのか。彼が持つ孤独と幸福に触れた時、ピーターパンの新たな一面が見えてくるのではないでしょうか。

そしてフック船長を演じる石丸幹二さんは圧巻のカリスマ性で海賊を率いながらも、“時間への恐怖”が強調されることで、多くの大人の観客を共感を呼ぶキャラクターに。

玉置孝匡さん演じるスミーが愛情深く、コミカルに、献身的にフックを支え続けます。

富山えり子さん演じるティンクはより嫉妬深く愉快なピーターの相棒に、天野はなさん演じるタイガー・リリーは周囲に頼らず1人で勇敢に戦う姿が印象的です。

美しい美術・衣裳を手がけるのは、『かもめ』 (エディンバラ・ライシーアム劇場)、『101匹わんちゃん』『ラ・カージュ・オ・フォール』(リージェンツパーク)、『アニー』『グリース』(ウエスト・ エンド、英国ツアー)、『サンセット大通り』(英国ツアー)なども手がけるコリン・リッチモンドさんです。

「たった1つで良い、楽しいことを思い浮かべて」。家族の喪失を主軸に据えることで、ピーターのこの言葉が大きな意味を持っていきます。大切な人を忘れたくない。大きな悲しみの中、ウェンディはどのように新たな一歩を踏み出していくのでしょうか。

撮影:岩堀和彦

Bunkamura Production 2026/DISCOVER WORLD THEATRE vol.16『ウェンディ&ピーターパン』は2026年6月12日(金)から7月5日(日)まで東京・THEATER MILANO-Za、7月13日(月)から20日(月・祝)まで大阪・フェニーチェ堺 大ホールにて上演されます。公式HPはこちら

Yurika

英国が生んだ名作ファンタジーをロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが新たな解釈で描く。その手法にフィジカルが多く盛り込まれているのも演劇的かつ英国的で、美しい作品です。劇場は現実からエスケープする場所でありながら、自分と、社会と向き合う場でもある。と、今年のトニー賞でも語られていましたが、まさに本作は、夢のような空間で魅せつつも、悲劇的な現実と向き合う側面が鋭く描かれています。