6月6日(火)からPARCO劇場で開幕するPARCO劇場開場50周年記念シリーズ『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?~』。木村達成さんをハムレット役に迎え、日本人らしい“新ハムレット”を描き出します。初日を前に行われた会見&ゲネプロリポートをお届けします。

いびつな愛を受け取って

撮影:宮川舞子

太宰治が昭和16年(1941年)、32歳に初めて書き下ろした長編小説で、シェイクスピアの『ハムレット』をより日本人に身近に、そして太宰節満載で描いた作品です。演出・上演台本を手がけた五戸真理恵さんが「137ページ中133ページは太宰の言葉で作った」ため、台詞には難解な言葉が並び、出演者の皆さんは一様に大変な稽古だった様子。

オフヰリヤ役の島崎遥香さんが「今日まで先輩方にたくさんアドバイス頂いて、特に松下(由樹)さんにはお時間を割いて頂いて稽古に付き合って頂いた」と語ると、ホレーショー役・加藤諒さんは「僕は(池田)成志さんにたくさんアドバイス頂いて。不安で押しつぶされそうなところを凄く成志さんに救って頂いた」と思わず涙。「まだ始まってもないのに!」「明日初日だぞ!」と島崎さんや木村さんに笑顔で突っ込まれつつ、池田成志さんへの感謝と意気込みを伝えました。

ポローニヤス役・池田成志さんは本作について「一言で言うと、とても問題作だと思います。不条理劇のようにおとなしい芝居かと思えば、ぶっ飛んでいて、また急におとなしくなり、詩劇のように朗々と語る場面もあれば、人情劇のようでもある。見ている人があまりにも人間ってこんなに喋るんだと呆れられないように演じたいと思います」と魅力を表現。

難解な台詞や、回りくどい言い回しも多い中で「全てのセリフに愛があります。それをいかに立体化するかを皆さんと試行錯誤してきた」と五戸さん。「お客さんを真剣に愛するような作品だなと思っているので、変なところもたくさんあるんですけど、いびつな愛を受け取ってもらったら」と本作への想いを語りました。

「伝わらない愛は受け取れないし、存在するのかも分からない。出来るだけ伝えて欲しい」

太宰治が描いた“新ハムレット”を演じる木村達成さんは、稽古中「愛を言葉で表現しない日本人の気質と、言葉で伝えることの重要さ」に思いを巡らせていたと言います。「舞台上で台詞を発しているのがハムレットなのか、木村達成なのか、太宰治なのか。自分でも訳わからなくなってしまうことがある」ほど、ハムレットにシンパシーを感じていた木村さん。

「それだったらちょっと嫌な男だね?(笑)」という島崎さんの言葉にも、「嫌な男なんですよ僕は!(笑)そこが似ているので、世間からこういう見られ方するんだなと気づいた瞬間(作品)でもあって、それが恥ずかしいです」と語るほど、木村さんは本作のハムレットに共通点を感じているそう。木村さんの“嫌な男”っぷりにも注目です。

ハムレットと言えば、父を殺して王位に就いた叔父に復讐するというのが主の物語ですが、本作のテーマは愛と言葉。木村さんが「言葉がなくなりゃ同時にこの世の中に愛情もなくなるんだ」、レヤチーズ役・駒井健介さんが「愛は言葉だ」という台詞がお気に入りだと挙げた通り、日本人の“愛をはっきり言葉にするのは恥ずかしい”という気質が故に巻き起こるハムレットの複雑な心情が描かれます。

木村さんは「伝わらない愛は受け取れないし、存在するのかも分からない。出来るだけ伝えて欲しいなというのが今の木村達成であり、ハムレットの気持ち」と語りました。

ピンクのジャージ、スマホゲーム、ラップ?!現代の若者なハムレット

撮影:宮川舞子

「ハムレットという作品をグッと身近に感じながら、見たことのない作品になっていると思う」とガーツルード役・松下由樹さんが語った通り、ピンクのジャージを着て、寝転んでスマホゲームに興じ、内に秘めた想いを「ハムレットRap」で歌うハムレットは、とっても現代的。木村さんが強く共感しているからこそ出るハムレットの人間くささ、愛情を求めたり親に反抗したりといった若者ぽさが、新たなハムレット像を与えてくれます。

撮影:宮川舞子

シェイクスピアの描いたハムレットとオフィーリアは鬱々とした雰囲気のキャラクターですが、本作のハムレットとオフヰリアはすぐにイライラしたり、拗ねたり、議論に興じたりと無邪気な子供っぽさが印象的。オフヰリアはハムレットに傷つけられるどころか、ハムレットの複雑性を理解し、彼と議論することを楽しんでいます。

撮影:宮川舞子

本作の舞台設定は「デンマーク」と語られていますが、太宰治が生きた日本を思わせるような演出もあり、架空の国のようにも思える、不思議な世界観。身近に感じながらも、手が届きそうで届かないような不思議さが、“問題作”であり、唯一無二の魅力でもあると言えそうです。

撮影:宮川舞子

『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?~』は6月6日(火)から25日(日)まで、PARCO劇場で上演。その後福岡・大阪にて上演が行われます。チケットの詳細は公式HPをご確認ください。

チケットぴあ
Yurika

“華とクセを併せ持つ実力派俳優陣”と銘打っている通り、個性的な役者たちの魅力がぶつかり合う作品に仕上がっています。