2024年12月16日から帝国劇場にて上演されるミュージカル『レ・ミゼラブル』。帝劇クロージング公演として、現・帝国劇場で最後の「レミゼ」の幕が上がります。帝国劇場で行われた本作の製作発表記者会見の様子をお届けします。

新キャストが「独白」「夢やぶれて」などを披露

ミュージカル『レ・ミゼラブル』製作発表記者会見では、新キャストによる5曲の歌唱披露とキャストからの挨拶、またキャストの帝国劇場での思い出が語られました。

まず歌唱披露されたのは、ジャン・バルジャン役:飯田洋輔さんによる「独白」。劇団四季にて『オペラ座の怪人』『美女と野獣』など数々の作品で主演を務め、2023年末に退団した飯田さん。重厚感のある歌声と強い眼差しでバルジャンの人生の転機を歌い上げ、製作発表記者会見に参加した500名のオーディエンスからは歓声も上がったほど。会場を一気に『レ・ミゼラブル』の世界へといざないました。

歌唱披露のトップバッターを務めた飯田さんは「歌い出しは思い切ってやろうと思えていたのですが、歌っている途中から手が痺れ出して…本当に緊張していたのかなと思いました」と振り返りました。

続いて披露されたのはファンテーヌ役:昆夏美さん、生田絵梨花さん、木下晴香さんによる「夢やぶれて」。この製作発表限定の三重奏のハーモニーでの披露となり、3人の美しくも芯のあるファンテーヌの姿が垣間見えました。

昆夏美さんは「飯田さんの「独白」が本当に素晴らしかったので、この流れを3人で引き継ごうと思ったんですけれども、緊張しました。でも3人(での歌唱)だったので、とても貴重な経験をさせていただきました」と振り返り、生田さんは「本番に入ってしまうと3人で同じステージに立つことはできないので、今日が凄く大事な思い出になりましたし、3人で一緒に緊張を味わって、終わってハグをしあって、チーム感を感じられたので、終わった今は安心しています」と安堵の表情。

木下さんも「3人で緊張を分け合って、無事に届けることができて嬉しいです」と笑顔で語りました。

3曲目は、アンジョルラス役:小林唯さんとアンサンブルによる「民衆の歌」。小林さんは緊張感が窺えながらも、伸びやかな歌声で仲間たちを率い、魅了します。

小林さんは「初めての帝国劇場、0番のどセンターで強烈なスポットライトを浴びて圧倒されて…反省点もたくさんあるのですが、初日までにブラッシュアップして、劇場をぶち壊す勢いで(笑)、歌っていきたいと思います」と意気込みます。

4曲目は、エポニーヌ役:清水美依紗さん、ルミーナさんによる「オン・マイ・オウン」。柔らかさの中に芯を感じる清水さんの歌声と、ルミーナさんの突き抜けるような力強い歌声。それぞれの異なるエポニーヌ像が見え、ルミーナさんは韓国にて既にエポニーヌ役を演じていることもあり、エポニーヌとしての情景がはっきりと見えてくるようです。

堂々たる姿とは裏腹にお二人は大変緊張されていたようで、揃って「何も覚えていないです(笑)」とコメント。清水さんは「交互に歌うことは今までもないし、これからもないと思うので、ルミーナちゃんが表現するエポニーヌを感じ取って、お互いに感じ取り合いながら歌えたんじゃないかなと思います」と振り返り、ルミーナさんは「帝国劇場で歌うことも、製作発表で歌うことも初めてで、緊張しました」と語りました。

そして最後に、オールキャストによる「ワン・デイ・モア」が披露されました。ソロパート歌唱はバルジャン役:佐藤隆紀さん、ジャベール役:小野田龍之介さん、エポニーヌ役:ルミーナさん、マリウス役:山田健登さん、コゼット役:水江萌々子さん、テナルディエ役:染谷洸太さん、マダム・テナルディエ役:樹里咲穂さん、アンジョルラス役:木内健人さん。オールキャストの圧巻の迫力で歌唱披露が締め括られました。

「自分の人生を正しい人であろうとする」バルジャン役の苦しさ

キャスト挨拶ではプリンシパルキャストから意気込みが語られ、緊張感溢れる中、テナルディエ役の斎藤司さんは「私の下にも後輩が育ってきて、六角くんと染谷くんを指導しなければいけないと思っています(笑)。今回は横隔膜を4枚ほど増やして、非常にパワフルな声量で立ち向かいたいと思います!」と会場を和ませます。

これには六角精児さんも「斎藤さんに付いていきたいと思います」と続き、初めてのテナルディエ役に挑む染谷洸太さんも「2017年2019年とアンサンブルとして出演させて頂いて以来、この作品に帰ってくることができてとても嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいです。テナルディエという役は20代の頃からいつか演じてみたいと思っていた役でして、尊敬する先輩方からたくさん学ばせて頂きながら、自分らしく楽しみながら、そして斎藤さんに付いていきたいと思います」と感慨深く語りつつも、抜群のチームワークを見せていました。

ジャン・バルジャン役を2011年から務めている吉原光夫さんは2011年当時の製作会見での歌唱を振り返り、「この劇場が危険な場所に思えました、宇宙に飲み込まれるみたいに広大に見えるんです。『レ・ミゼラブル』も好きな作品なんですけれど、やる度に怖くて辛くて苦しくて。それを14年目やるということは大きくて、大嫌いな劇場と一緒に幕を閉じられるということも意味のあることなんだなと思って劇場を眺めていました。多分、(本当は)好きなんです。この劇場には色々な人の思いや声、影があると思うのですが、今回はそれらと手を携えて、仲直りをして楽しく終えられたら良いなと思っています」と、バルジャンに長年向き合ってきた吉原さんならではの言葉が紡がれました。

そして質疑応答では、様々なキャストが帝国劇場への想いを語りました。『レ・ミゼラブル』ではマリウス役を務め、『千と千尋の神隠し』では菊田一夫演劇賞を受賞、『キングダム』では主演を務めた三浦宏規さんは、「帝劇に初めて立ったのは2019年の『レ・ミゼラブル』で、その1個前(2017年)の公演を客席から観たんです。その時に絶対に俺もこのステージに立ちたいと強く思って、何回も観に行って。翌々年のオーディションを受けてありがたいことに合格したんですけれど、僕的には不完全燃焼というか、自分が思った通りにはできないなって悔しいまま終わったんですけれど。『千と千尋の神隠し』『キングダム』とこの劇場に育ててもらった感覚があって、またこうして最後の『レ・ミゼラブル』に出られることが凄く嬉しいですし、自分が納得する形で終えられたら良いなと、最後の帝劇に恥じない努力をして挑みたいと思っています」と熱い想いを語りました。

エポニーヌ役の屋比久知奈さんは帝国劇場で2016年に開催された『集まれ!ミュージカルのど自慢』に出場し、最優秀賞を獲得したことがデビューのきっかけに。「私にとっては初めて、この劇場で、作品の中で生きてみたいと思った劇場なので、凄く思い出深いです。クロージング公演なのは寂しいですけれど、この舞台に立ててお別れを言えるのは有り難いですし、作品の世界に変わる、不思議な感覚のある劇場なので、噛み締めながらエポニーヌとして生きられたら」と語ります。

撮影:鈴木文彦

最後に吉原さんから本作について、「『レ・ミゼラブル』という作品は最後に浄化があって、神がいらっしゃって、救っていただける役を僕は演じています。それを通じて、自分の人生も正しい人であろうとする、それが非常にしんどいんだと思います。でも、生きていくことはしんどいんだと思うんです。楽がしたくて生まれてきているわけではなく、自分の存在意義を探して、自分の大河を生きようとしているんじゃないかなと。そう思うと当然、この作品は自分の人生をかければしんどくなるし、適当にやればやれる。どっちをチョイスするかですけれど、この環境、このカンパニー、このチームは楽にはさせてくれない。自分の人生と照らし合わせてこの舞台で勝負させるという意気込みがあるので、好きなんですけれど、辛さや苦しみ、怖さもある。新しい出演者の方はそれを楽しんだ方が良いかなと思うし、みんな同じ思いで、手が震える思いで舞台に立っていることで、良いチームになれるんじゃないかなと思っております」と思いが語られ、会見が締め括られました。

ミュージカル『レ・ミゼラブル』は2024年12月16日(月)から12月19日(木)までプレビュー公演、12月20日(金)から2025年2月7日(金)まで帝国劇場で上演。その後、大阪・福岡・長野・北海道・群馬と全国ツアー公演が6月まで行われます。公式HPはこちら

Yurika

ミュージカル『レ・ミゼラブル』は自分の人生にとって特別な作品だと感じる観客が多いと思いますが、出演者にとってもそうなのだと感じる製作発表記者会見でした。