シアタークリエにて11月6日に開幕するミュージカル『SONG WRITERS』。作・作詞・音楽プロデュース:森 雪之丞さん、演出:岸谷五朗さんによる日本発オリジナルミュージカルで、約10年ぶりの再々演を迎えます。屋良朝幸さん、中川晃教さんら出演者が公開稽古と囲み取材に臨みました。

“この世に100の悲しみがあっても101個めの幸せを書き足せばいい”

2013年に作・作詞・音楽プロデュース:森 雪之丞さん、演出:岸谷五朗さんによってシアタークリエにて初演されたオリジナル・ミュージカル『SONG WRITERS』。自信過剰な作詞家エディ・レイクと気弱な作曲家ピーター・フォックスを中心に、ヒットミュージカルを生み出すことを目指した若者たちが、徐々にエディが描いた作品の世界に飲み込まれていく…というミュージカル愛溢れる作品です。

自信過剰な作詞家エディ・レイク役の屋良朝幸さんと、気弱な作曲家ピーター・フォックス役の中川晃教さん、お調子者の音楽ディレクターのニック・クロフォード役の武田真治さん、マフィアのボスのカルロ・ガンビーノ役のコング桑田さんら、初演オリジナルメンバーに加え、実咲凜音さん、相葉裕樹さん、青野紗穂さん、蒼木陣さん、東島京さんを新キャストに迎え、11月6日からシアタークリエにて上演されます。

公開稽古では、森雪之丞さんと岸谷五朗さんによる解説と共に、4曲が披露されました。まず披露されたのは、エディとピーターがいかにして作詞・作曲のコンビを組んだのかが語られる「ソングライターズ」。

「(エディとピーターは)まだまだプロにはなれていないんですけれども、僕らがやっていることはきっとみんなに伝わるだろうという気持ちを持って歌うシーンです。“この世に100の悲しみがあっても101個めの幸せを書き足せばいい”、この書き足せばいいということが『SONG WRITERS』の大きな意味だと思っています」と森雪之丞さんが語ると、すかさず岸谷さんが「良い詞ですねぇ」としみじみ。

岸谷さんは「初演から印象的な振りはほとんど変わっていません。今回この楽曲に関しては8小節新しい振りが入っているんですけれど…初演からアッキー(中川晃教さん)がずーっと間違っている振りがあって、今回も間違ってます(笑)。でもそれがピーターの個性になっているので直しません」とお茶目に語りました。

ピーター演じる中川さんはピアノを奏でながら歌唱し、屋良さんは流石のキレのあるダンスと力強い発声で、2人の対照的な性格と抜群のコンビネーションを描いていきます。本作の楽しい雰囲気が一気に伝わるナンバーです。

そして「人の心に生まれる様々な感情を言葉にするのが役目さ。だが、そこにはセンスと可愛げが必要だ」「言葉が舞いあがるためには音楽っていう風が吹いてなきゃだめなんだ」というエディの台詞に共感するミュージカルファンは多いのではないでしょうか。

次に披露されたのは、実咲凜音さん演じるマリー・ローレンスが才能を見せる「秘密があれば」。エディと偶然知り合ったマリーでしたが、素晴らしい歌声を披露し、彼らのディーバとなっていきます。

実咲凜音さんはその華やかさとしなやかなダンスで魅了。衣装を着た本番ではより心踊るナンバーになることでしょう。

そして楽曲後半で、エディが書き始めたマフィアたちの物語の世界が入り込んでいきます。コング桑田さんは個性たっぷりにマフィアのボス、カルロ・ガンビーノを演じ、笑いを誘いました。

3曲目は、エディが書いた世界の中で、マフィアの潜入捜査を行うジミー・グラハム(相葉裕樹さん)と、ジミーの元恋人で現在はカルロの情婦であるパティ・グレイ(青野紗穂さん)の切ない恋心を歌った「愛はいつも愚かなもの」が披露されました。

別れを選んだ2人の悲しみを相葉さんと青野さんが歌い上げ、最後にはエディとマリーにオーバーラップしていきます。

最後に披露されたのは、「あなたがスターだ!」。武田真治さん演じる、お調子者の音楽ディレクターのニック・クロフォードが、南部訛りのマリーに対して、訛りさえなければスターになれるのに、と歌う楽曲です。岸谷五朗さんは「武田真治、大暴れですね」と紹介し、武田さんも「お待たせしました!」と笑顔に。武田さんのサックス演奏が入った楽曲であり、『マイ・フェア・レディ』『王様と私』のオマージュも入れられています。

ニックが熱く語る傍らで、エディとピーターは息ぴったりに合いの手を入れ、マリーはお酒を飲んで酔っ払う…エディ、ピーター、ニック、マリーがドタバタに踊りながら繰り広げる、ミュージカルらしい楽しさが詰まったナンバーです。

中川さんのコンサートでの会話が、再々演実現のきっかけに

囲み取材には、屋良朝幸さん、中川晃教さん、実咲凜音さん、武田真治さん、森雪之丞さん、岸谷五朗さんが登壇しました。

森雪之丞さんからは、2013年に初演された『SONG WRITERS』の再々演にあたって、「この10年で日本は凄くミュージカルブームになりました。テレビの特番でミュージカルの演目が大きな話題になったり、舞台でしか歌っていなかったシンガーがコンサートを開けるようになったり。ミュージカルに対する偏見が凄く減ったと思います。ただやっぱり、どうしてもアメリカやイギリスの作品が多いです。日本のクリエイターは素晴らしいですし、日本の音楽は世界を席巻していくと思いますので、これから日本のクリエイターもオリジナル作品を一生懸命作ってほしい。その足がかりとして、日本のオリジナル作品で3回目の公演ができるということを誇りに思って、この作品に挑みたいと思います」と強い思いが語られました。

そして岸谷五朗さんは「世界でとっても悲しいニュースがたくさん飛び交っていますが、我々エンターテイメントの力で本当に劇場に来てくださるお客様に何とか元気を届けたいなと思っています。そんな役割を2024年は担って作品作りをしています」とコメント。

屋良朝幸さんからは本作について、「ミュージカルに対する気持ちがすごく変わった作品」と語られ、また「この作品はとてもファンが多くて、再演はいつやるんだという声が入ってきていたんです。アッキーのライブにゲストで出た時に『SONG WRITERS』やりたいよねという話をしたら、プロデューサーさんが話を進めてくださったと聞いた」と再々演が実現した裏話が明かされました。

これには中川さんも「シアタークリエで行ったライブのシークレットゲストに登場してくれたんです。お客様はシークレットゲストが屋良朝幸さんだと知らないわけですから、どんな反応かなと思っていたら想像を超える拍手喝采で」とお二人の姿を待ち望んでいたファンが多かったことを語ります。

武田真治さんは「そのライブに呼ばれていないんだけど…?」と不満そうながら、再々演は「涙が出るほど嬉しかった」と語ります。「次にまた必ず再演があってほしい作品ですし、その時に活きの良い連中に“次は俺にやらせろ、私にやらせろ”と言われるような公演をすることが、五朗さん、雪之丞先生に対する恩返しかなと思っております」と熱い想いが明かされました。

新キャストとしてカンパニーに加わった実咲凜音さんは、「稽古初日から息の合った、出来上がっている状態があって、約10年ぶりと言えど阿吽の呼吸があったので、心の中では結構焦っていました。でも皆さんが表現したいことを毎日お稽古場で挑戦されている姿を見て、私ももっともっとがっついて行かなければと刺激を頂きながら、この役に臨ませて頂いております」と意気込みました。

撮影:鈴木文彦

ミュージカル『SONG WRITERS』は11月6日から28日までシアタークリエにて上演。その後、12月7日から8日に大阪・森ノ宮ピロティホール、12月11日に愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館ビレッジホールにて上演されます。公式HPはこちら

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Yurika

屋良さんが「こんなにライブ感あふれるお芝居はなかなかない」と語った本作。ミュージカル愛に詰まった脚本・演出はもちろん、息の合ったカンパニーによる化学反応にも注目です。