2025年5月にシアタークリエにて上演が決定したのは、20世紀を代表する劇作家ノエル・カワードのウェルメイド・コメディ『陽気な幽霊』。熊林弘高さんが演出を手掛け、主演の田中圭さんをはじめ、若村麻由美さん、門脇麦さん、天野はなさん、あめくみちこさん、佐藤B作さん、高畑淳子さんが出演します。

第二次世界大戦中のロンドン大空襲に直面した経験から生まれた、幽霊を題材にしたコメディ

1941年7月にロンドンのピカデリー劇場にてウエストエンド初演された『陽気な幽霊』。5年間で1997回という驚異的な連続上演記録を達成し、1945 年には名匠デヴィッド・リーン監督により映画化されました。その後もブロードウェイを始め世界各地の劇場で繰り返し上演され、再び2020年に映画化されるなど、カワードの喜劇の最高傑作と言われている作品です。

ノエル・カワードは1899年イギリス・ロンドン郊外に生まれ、上流階級・中産階級を背景にした洒脱でウィットに富んだコメディの劇作家として成功をおさめました。俳優、作詞家、作曲家、演出家、映画監督、プロデューサーとして多彩に活躍し、社交界のセレブリティとしても有名な人物。タートルネックを舞台で初めて着用し、シルクのガウンでマスコミの取材に登場するなど、ファッションも注目されたポップスターです。

「人生はうわべだけのパーティー」という考えを元に、洗練された喜劇を中心に四十数篇の戯曲を書き、その代表作のひとつが『陽気な幽霊』です。

カワードはこの作品を、第二次世界大戦中のロンドン大空襲で数々の死と破壊に直面した経験を元にわずか6日間で書き上げたと言います。戦時中に幽霊を題材にしたコメディを上演することに否定的な意見が多かったものの、その予測を裏切り、多くの熱狂的な観客に迎え入れられたこの作品は、幽霊も生きている人間も同じ存在という、カワード独特の人間観を描いています。

今回『陽気な幽霊』の演出を手がけるのは、熊林弘高さん。2010年に『おそるべき親たち』の演出で毎日芸術賞千田是也賞を受賞。2024年2月には『インヘリタンス―継承―』を演出しました。

主演の作家チャールズ役は多数の映画・ドラマ・舞台で活躍が続き、現在ドラマ『わたしの宝物』に出演中の田中圭さん。熊林さん演出作品への出演は、『Tribes トライブス』（2014年）、『夜への長い旅路』（2015年）、『かもめ』（2016年）に続き4作目となります。

田中さんは本作の出演にあたり、「約9年ぶりに熊林さんの演出でご一緒させていただきます！最初に脚本を読んだ時に熊林さんらしくない戯曲だなとワクワクしました。会話劇は軽妙で、どのような表現になるのだろう、というト書きもたくさんあり、ご一緒するキャストの皆様も楽しみです。このキャストに熊林さんがどう味付けしていくのか、染めていくのか楽しみでなりません。きっと僕が今想像しているもの以上のものになるのだろうな。とワクワクしています。熊林さんとは久々なので、成長している姿を見せられたらいいなと。楽しんで臨ませていただきます。舞台『陽気な幽霊』是非楽しみにしていてください！」とコメントしました。

そして共演には、チャールズの元妻であり幽霊となって姿を現すエルビラ役に若村麻由美さん、チャールズの二番目の妻ルース役に門脇麦さん、霊媒師アーカティ夫人役に高畑淳子さん、かかりつけの医師ブラッドマン博士役に佐藤B作さん、ブラッドマン夫人役にあめくみちこさん、メイドのエディス役に天野はなさんが揃いました。

＜ストーリー＞
舞台は 1941年、イギリス・ケント州にある小説家チャールズ・コンドマイン（田中圭さん）の自宅の居間。チャールズは再婚した妻ルース（門脇麦さん）と暮らしている。
新しく雇ったメイドのエディス（天野はなさん）が不慣れで準備がままならないが、チャールズは小説の取材をしようと霊媒師アーカティ夫人（高畑淳子さん）を呼んで、かかりつけの医師ブラッドマン（佐藤Ｂ作さん）とその夫人（あめくみちこさん）を招待し、降霊会を催した。
霊は現れず、アーカティ夫人はイカサマだという結果に終わったが、客が帰った後、７年前に亡くなったチャールズの先妻エルビラ（若村麻由美さん）が幽霊となり姿を現す。しかしエルビラの姿はチャールズにしか見えず、ルースはチャールズが酔っていると思いこみ、一方でチャールズは先妻がいると言い張る。エルビラはチャールズとルースの間に色々とちょっかいを出し、それは徐々にエスカレートして夫婦の間に諍いが生じ、やがてとんでもない結果を招いてしまう――。

『陽気な幽霊』は2025年5月にシアタークリエ、6月に梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、福岡市民ホール 中ホールにて上演されます。公式HPはこちら