2025年1月、東急シアターオーブにて世界初演されるミュージカル『ケイン&アベル』。イギリスのベストセラー小説を元に、フランク・ワイルドホーンさんら海外クリエイターが集い、オリジナル・ミュージカルを制作します。ケイン役の松下洸平さん、アベル役の松下優也さんら出演者が製作発表に臨みました。
「誰も観たことのない新しいミュージカルを」
イギリスの国民的作家ジェフリー・アーチャーさんのベストセラー小説を、音楽:フランク・ワイルドホーンさん、脚本・演出:ダニエル・ゴールドスタインさんにて東宝・キューブが世界初ミュージカル化するミュージカル『ケイン&アベル』。
ブロードウェイで上演中の『グレート・ギャッツビー』の音楽を手がけたネイサン・タイセンさん(歌詞)とジェイソン・ハウランドさん(編曲)、『&Juliet』の振付を手がけたジェニファー・ウェーバーさん(振付)と、ブロードウェイで今活躍するクリエイターが集結し、世界を見据えた初演を創り上げます。
ウィリアム・ケイン役には東宝ミュージカル初主演となる松下洸平さん、アベル・ロスノフスキ役には2024年2月に帝国劇場にて上演された『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』で主演を務めた松下優也さんを迎え、お二人は初共演。
20世紀初頭、同じ日に生まれ、銀行家の父の跡継ぎとして祝福された人生を歩むケインと、ポーランドの山奥で孤児として生まれ、貧困や度重なる苦難に直面しながらも移民船でアメリカに渡るアベル、対極の境遇の2人が出会い、宿命のライバルとして生きていく様を描きます。
製作発表には松下洸平さん、松下優也さん、咲妃みゆさん、知念里奈さん、山口祐一郎さんと、本作のエグゼクティブ・プロデューサーを務める東宝株式会社 常務執行役員演劇本部長の池田篤郎さん、アソシエイト・エグゼクティブ・プロデューサーを務める株式会社キューブ 代表取締役社長の北牧裕幸さんが登壇しました。
まず東宝の池田さんから本作の原作小説を読み、いつかミュージカル化したいという想いを長年持っていたことが明かされ、フランク・ワイルドホーンさんと『四月は君の嘘』製作後、食事の場で次にどんな作品をやりたいかという話題が挙がり本作を推薦したところ、帰国後に小説を読んだワイルドホーンさんから「面白い、これはすごい作品だ。もう今から曲のイメージができている」とメッセージが届いた、という本作上演までの道のりが語られました。
そして「ケインは理知的で洗練されていなければいけないし、内側には秘めた炎のような情熱を持っていなければならない。そういう人物はなかなか見つからないですが、松下洸平さんがこの役を引き受けてくださって、大変に嬉しく思いました。一方でアベルは情熱が表に出て、大変アグレッシブな人物です。これもイメージ通りの松下優也さんというキャストに巡り合い、とても素晴らしい出会いになりました」とお二人が本作にいかに適役であるかが語られました。
松下洸平さんはドラマ『スカーレット』『最愛』『いちばんすきな花』などでの好演が話題となり、現在『放課後カルテ』でドラマ単独初主演。2018年に舞台『母と暮せば』と『スリル・ミー』にて第26回読売演劇大賞 杉村春子賞と優秀男優賞を受賞し、2017年にはワイルドホーンが音楽を手がけたミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』にも出演しています。
ミュージカルには7年ぶりの出演となり、「もちろん不安やプレッシャーありますけれども、ブロードウェイの素晴らしいスタッフの皆さん、そして山口祐一郎さん始め、松下優也さんと共に、誰も観たことのない新しいミュージカルを作ればいいなと思っております」と意気込みます。
本作の魅力について「決して2人の友情だけを描いた作品ではないというところですね。また時代に翻弄される人たちをすごくリアルに描いていて、大きく時代が動き、色々なものが変わったけれども、最後に残るのは“小さな何か” であるということ。この“小さな何か”をお客様に持って帰っていただきたいです。ミュージカルは極上のエンターテイメントであるべきだと思いますので、楽しんでいただきながらも、しっかりと問いを投げかけて終われるような作品にしていきたいです」と語りました。
松下優也さんはミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』で主人公ジョナサン・ジョースター役、『イン・ザ・ハイツ』でベニー役を務め、来年4月には『キンキーブーツ』にてローラ役を演じます。
アベル役について「ケインと違って生まれが凄く貧しいが故に、人一倍野心家で、また生まれ持ったクレバーさでどんどん成り上がっていく人物です。自分自身も個人的には野心が強い方だと思っていますし、洸平さんは内なる炎は感じながらも穏やかで柔らかい印象がありますので、自然と2人の関係性を演じていていけるんじゃないかなと思います。アメリカのケインとポーランドのアベルを、“東の松下、西の松下”で作っていけたら(笑)」とお茶目にご挨拶を。
またワイルドホーンさんが手がけた音楽について、「今デモを聴かせて頂いている段階ですが、大きな新作にふさわしい壮大でグランド・ミュージカルの楽曲だなと思いつつも、その中にモダンさやポップさがあります。それを世界で初めて歌えて、これがオリジナルになるというワクワク感と責任感を感じます」と語りました。
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咲妃みゆさんは「演出家のダニエルさんとは2度目のご縁をいただけることになりました。大変尊敬する演出家さんですので、今回ダニエルさん率いるカンパニーの一員として、またお芝居させていただけることも嬉しいです。また、私は宝塚歌劇団で初舞台を踏んだ作品が、ワイルドホーンさんが音楽を手がけた『スカーレット・ピンパーネル』で、私の芸能人生がスタートした作品です。それから時を経てこうしてご縁をいただけたことをとても幸せに思います」と感慨深げに語ります。
知念里奈さん演じるザフィアは、移民船でアベルと出会い、のちにアベルと結婚、彼を支える役どころ(原作とは少し異なる役柄)。ワイルドホーンさんがとても重要だと考える役柄であるため、素晴らしい歌唱力であることを知っている知念さんに、と出演が決まったそうです。知念さんはオファー時に楽曲を聴き、「ぜひ歌いたい」と引き受けられたそう。
「私のミュージカルデビューが『ジキル&ハイド』という作品で、『ルドルフ~ザ・ラスト・キス~』にも出させていただいて、久しぶりにワイルドホーンさんの作品に出られて嬉しいです。作品の中で聞くだけではなくて、1曲1曲が曲として聴いてもメロディアスでロマンティックで魅力的だと思っています」と音楽の魅力を語りました。
山口祐一郎さんは「そろそろ古希が近づいてきたのですけれども、非日常で夢のあるミュージカルの世界で生きているので、現実を忘れていて、池田さんからお話を聞いた時に“自分は(ケインとアベルの)どっちなんだろう”と思ってしまったんです。そしたら池田さんの目が点になっているのがよく見えたのですが(笑)」とチャーミングに語ります。
山口さんが演じるデイヴィス・リロイはホテル経営者で、銀行を営むケイン一族の言葉を信じて融資を受けるものの、ニューヨークは大恐慌に突入。リスクをいち早く察知したアベルに融資を断られてしまうため、「晴れているときには傘をくださるんですけれど、雨が降り出すと傘を返せって言うんです。そういう方なんです」と熱弁し、松下さんから思わず「大変失礼いたしました」と謝罪が入り会場を沸かせる一幕が。本作の物語に既に強く魅了されているご様子が伝わりました。
また製作発表ではフランク・ワイルドホーンさんとダニエル・ゴールドスタインさんからビデオメッセージが。ワイルドホーンさんは「もうすぐリハーサルなのでワクワクしています。いくつもの冒険を分かち合ってきました。最高に素晴らしい作品になるでしょう」、ゴールドスタインさんは「普遍的なテーマを扱う物語なので観客の皆様に喜びや幸せをきっと感じていただけるでしょう。私たちは喜びや苦難を共にして、この作品を創っています。新作を生み出すことほど大変なことはありません」とメッセージを贈りました。
さらに原作のジェフリー・アーチャーさんから「原作は豊かで複雑な物語ですが、音楽には、ケインとアベルを突き動かす深い情熱を独特の説得力で表現する力があると思っています。このミュージカルが日本で大きな成功を収めるだけでなく、ウエストエンドやブロードウェイ、そしてそれ以外の地域でも上演され、世界中の観客が洸平と優也の激しい闘いを目撃できることを心から願っています」とコメントが寄せられ、山口さんが代読。松下洸平さんは「もしかして観に来て頂けるのかな…お時間あればぜひ足を運んでいただきたいです」と笑顔で呼びかけられました。
松下洸平さんと松下優也さんは今回初共演となりますが、松下優也さんは共演が楽しみで、会見前日も松下洸平さんについて色々と検索されていたそう。すると俳優とアーティストの双方で活躍していることはもちろん、アーティストとしてのデビューが2人とも2008年11月であるという共通点が発覚し、まさに同じ日に生まれたケインとアベルのような関係性であることに驚かれたと言います。
「恐らく好きな音楽もすごく似ていると思いますし、洸平さんの歌い方が凄く好きで。自分もずっとミュージカルをやってきたタイプではなく音楽から始まって役者をやらせて頂いているので、洸平さんとどう表現していけるのか楽しみにしていますし、単純に稽古場から歌を聞けるのもめちゃくちゃ楽しみ」と語る松下優也さん。
一方で松下洸平さんも、「多分共通の友達とかいっぱいいるんですよ。“今度、松下優也くんと共演するんだね。情熱的でまっすぐでぶれない人だから、共演を楽しみにしている”という声を聴くので。今日こういう場で喋っている優也くんの姿を見ると本当にアベルそのものというか、野心や強さを十分に感じられるので、そこと対峙するケインをこれからどうやって作っていこうかなって凄く楽しみになりました」と語り、ますます本作での共演に期待が高まりました。
ミュージカル『ケイン&アベル』は2025年1月22日(水)から2月16日(日)まで東京・東急シアターオーブにて上演。その後、2月23日(日)から3月2日(日)まで大阪・新歌舞伎座にて上演されます。公式HPはこちら
山口さんが「オープンで、お互いにリスペクトしていて、役者としてこういう形でやっていければ理想的だなというお手本のような2人」と称した通り、初共演とは思えないほど相性の良さが感じられた松下洸平さんと松下優也さん。今後の稽古でどのように関係性を深め、宿命のライバルを演じていくのか楽しみです。