時代を超えて読み継がれている名作小説『赤毛のアン』。これを原作としたミュージカルは、劇団四季によってこれまで何度も上演されてきました。2024年12月より東京公演が始まり、その後全国を巡演します。約10年ぶりにアンと会えるチャンスをお見逃しなく。

小説でもミュージカルでも愛される名作『赤毛のアン』

『赤毛のアン』は、カナダの女性作家ルーシー・M・モンゴメリーが1908年に発表した小説です。原題は『アン・オブ・グリーンゲイブルズ(Anne of Green Gables)』。モンゴメリーの生まれ故郷であるプリンス・エドワード島を舞台に、主人公のアン・シャーリーが心身ともに成長していく姿を生き生きと鮮やかに描いています。自分自身に正直なアンの生き方は多くの読者を魅了し、ベストセラーに。続編を含めた『赤毛のアン』シリーズは、第1作の出版から110年以上経てなお、世界中で愛されています。

そして1965年には、ノーマン・キャンベルが音楽を、ドナルド・ハーロンが台本と歌詞を担当してミュージカル化。以来、プリンス・エドワード島で開催されるシャーロットタウン・フェスティバルのメインイベントとして、半世紀以上にわたって上演されてきました。

日本では、1980年に劇団四季が東京・日生劇場にて初演。浅利慶太氏が演出を手掛け、歌やダンスでストーリーを盛り上げるとともに、会話や仕草を通じて登場人物の心情を繊細に表現しました。そんな劇団四季版のミュージカル『赤毛のアン』は、本場カナダのスタッフからも「世界で最高のアン!」と賞賛されたそうです。

2024年はルーシー・M・モンゴメリーの生誕150周年にあたります。その記念すべき年に、劇団四季ミュージカル『赤毛のアン』が約10年ぶりに上演されることとなりました。12月の東京公演を皮切りに全国ツアーが行われ、2025年10月からの京都公演でゴールを迎えます。

少女の成長を温かく見つめた物語

アンの物語は、19世紀と20世紀のさかい目、カナダのプリンス・エドワード島で始まります。

島の小さな村アヴォンリーに、マシューとマリラという兄妹が住んでいました。年老いて心臓の弱いマシューは、孤児院から男の子を引き取り、畑仕事を手伝ってもらおうと考えます。しかし、実際にやって来たのは女の子。赤毛でそばかすのあるアン・シャーリーは、自分が手違いで引き取られたと知り、ショックを受けます。それでもめげずにピンチを乗り越え、孤児院に戻るのではなく、マシューたちと一緒に暮らすことに。

空想とおしゃべりが大好きなアンは、時に突拍子もない行動を取り、家や学校でさまざまな事件を引き起こします。そんなアンに対して、マリラをはじめとした村の人たちは戸惑うやら呆れるやら。しかし、持ち前の明るく前向きな性格で人々の心を捉え、次第にアンにとって大切な存在が増えていきます。

実の娘のように愛情深くアンを育てるマシューとマリラ。親友よりも固い友情で結ばれた“腹心の友”となるダイアナに、本当はアンと仲良くしたいのについ意地悪をしてしまう男の子のギルバート。また、アンが通う学校のステイシー先生は、野外授業を通じて自然の中で生きていく素晴らしさを教えてくれます。

美しく移り変わるカナダの大自然と周囲の愛に包まれて、アンの心はますます豊かになり、唯一無二の個性として開花します。やがておこる悲しい出来事と大きな試練に、アンがどう向き合うのか。ぜひ劇場で、彼女の成長を見守りましょう。

劇団四季ミュージカル『赤毛のアン』の見どころ

ミュージカル『赤毛のアン』は、タイトル曲「グリーン・ゲイブルズのアン」をはじめとして耳と心に残る名曲ぞろいです。作曲にはノーマン・キャンベル、作詞にはノーマンと夫人のイレインなどが携わり、観客を物語の世界に引き込むミュージカルナンバーを生み出しました。

例えば、アンが持ち前の想像力で大げさに身の上を語る「事実」や、隣のリンド夫人を怒らせてしまったときに歌う「アンのお詫び」。アンたちが軽やかに踊って歌う「アイスクリーム」のシーンでは、思わず一緒に口ずさみたくなりそう。また、「言葉」や「雑貨店」といった曲からは、マシューの優しさが伝わってきます。

さらに劇団四季版では、日本語の歌詞や台詞にも注目してみてください。シンプルで易しい言葉遣いだからこそ、登場人物にぐっと感情移入しやすくなっています。また、ロマンティックで明るい歌詞の数々は、聞いているだけで晴れやかな気分になるのではないでしょうか。一方で、人生について考えさせられるような台詞があちこちに盛り込まれ、深い余韻を残します。

美しい音楽と言葉を通じて“生きる喜び”を教えてくれるところが、この作品の大きな魅力であり、いつまでも愛される理由なのでしょう。

劇団四季ミュージカル『赤毛のアン』は、東京・自由劇場にて2024年12月3日(火)から2025年2月16日(日)まで上演。その後、2025年3月29日(土)から9月23日(火・祝)にかけて、全国を巡演します。そして、2025年10月4日(土)から11月24日(月・休)まで京都劇場での公演が予定されています。

なお、東京公演に関しては1月・2月に4回の追加公演が決定しており、12月1日(日)10時より一般発売を開始するとのこと。このほか詳細については、劇団四季オフィシャルウェブサイトをご確認ください。

もこ

『赤毛のアン』といえば、小説やアニメで馴染みのある方も多いのでは。まっすぐなアンが心豊かに成長していく物語を劇団四季がどう描き出すのか、筆者も観てみたいです!