世田谷パブリックシアターでは、次世代を担うアーティストの発掘と育成を目的として、2008年から「シアタートラム・ネクストジェネレーション」を実施しています。2024年12月19日(木)からシアタートラムで上演されるのは、くによし組の代表作『ケレン・ヘラー』です。

面白いと不謹慎の境目を歩く女性芸人を描く

2015年に設立された「くによし組」は、「異常で、日常で、シュール」をテーマに、様々な事象をコメディタッチで描き出す作風が注目されている演劇団体です。これまでに佐藤佐吉賞(最優秀作品賞、優秀脚本賞ほか)、関西演劇祭 2020(脚本賞・演出賞)などを受賞し、せんだい短編戯曲賞、劇作家協会新人戯曲賞、北海道戯曲賞などで最終候補に選ばれるなど、とても高い評価を得ています。

『ケレン・ヘラー』は、くによし組主宰である國吉咲貴さんの作・演出により、2018年に初演されました。SNSが浸透し、刺激的なコンテンツが増えた社会で、面白いと不謹慎の境目は一体どこなのか、面白さを追求するあまり、主人公が禁断の領域に踏み込み、転がり落ちていく様を描く作品です。

解散の危機に陥った女性芸人が、お喋りロボットを相方に起死回生を図るという奇想天外な設定ながら、巧みなストーリー展開と俳優陣の演技が評価され、初演時には佐藤佐吉賞最優秀作品賞を受賞しました。

作品のあらすじは次の通りです。

女性お笑いコンビ、“ポジティ boo”のアフロ子とケイトは、ヘレン・ケラーを題材にした不謹慎なコントが原因で活動休止に追い込まれ、価値観の違いから解散に!
ひとりぼっちになったアフロ子の前に、突如、神様さんという謎の人物が現れる。
神様さんの助言により、アフロ子はお喋りロボットのサリバンちゃんを購入して相方にすると、新生“ポジティ boo”として一発逆転を試みる!
神様さんの助言に従うほど注目されていくアフロ子だったが、あるとき、自分の目と耳に不調が起きていることに気づき……

SNS上での過激な表現をテーマにしながらも、懸命に生きる登場人物を、時に滑稽に、時に痛々しさも交えながら、ポップに鮮明に映し出す作品。初演から6年を経て新たに立ち上がります!

新テーマは「盲目なのは誰か」

世田谷パブリックシアターでは、次世代を担うアーティストの発掘と育成を目的として、2008年から「シアタートラム・ネクストジェネレーション」を実施しています。白井晃芸術監督が就任した2022年以降、節目となるvol.15でリニューアルし、「演劇」と「フィジカル」の 2ジャンルに分け、隔年での交互募集を行っています。そのリニューアル後、初の演劇部門のアーティストとして選出されたのが「くによし組」です。

そんな今回、國吉さんは『ケレン・ヘラー』に改訂を施したそうです。「当時は、周りが見えなくなっていく主人公のアフロ子目線で描いていて、「面白いはどこまで許されるのか」をテーマに、芸人として売れたい欲のせいで堕ちていく女性の物語でした。改めて今読み直したときに、彼女をこうさせたのは誰だろうかと思い、「盲目なのは誰か」を新しいテーマとして書き直しました」とコメントされています。

主人公のアフロ子を演じるのは中井千聖さん。宮藤官九郎さん作・演出の舞台『もうがまんできない』の出演者オーディションを経て2020年に俳優デビュー。近年では大人計画の作品をはじめ、数々の舞台やドラマ『不適切にもほどがある!』『新宿野戦病院』などの映像作品で活躍されています。

そのほかにも、名村辰さん、大場みなみさん、花戸祐介さん、佐藤有里子さん、てっぺい右利きさん、柿原寛子さん、谷川清夏さん、永井一信さんと、立ち上げメンバーから初参加メンバーまで、実力と個性を兼ね備えたキャストが揃っています。いったいどんな化学反応が起こるのでしょうか?

シアタートラム・ネクストジェネレーションvol.16-演劇-くによし組『ケレン・ヘラー』は、2024年12月19日(木)から22日(日)まで、東京都世田谷区のシアタートラムで上演されます。詳しい情報は公式サイトをご確認ください。

さよ

小劇団演劇の世界で未来を切り拓いていく「くによし組」。生活と切っても切り離せなくなっているSNSの光と陰を、劇場空間で考えてみませんか?