日々、多くの作品が上演されている小劇場演劇。どれを観たらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は、演劇を愛するAudience編集部が独断と偏見で、1月に上演している作品の中からおすすめ作品を3本セレクトしてみました!
若手注目劇団サルメカンパニーによる第9回公演、現役時代と引退後のシャーロック・ホームズを描く『逆さまの日記』『ベイカーストリートの犬』
サルメカンパニーは、2017年に結成、2019年日本演出者協会主催の若手演出家コンクールでは第5位を受賞。佐藤佐吉演劇賞2021では最優秀演出家賞を含む6部門受賞しました。
サルメカンパニーの特徴は、全作品生演奏での上演。キャスト全員が楽器を演奏したり、プロアーティストとコラボレーションをしたりと演劇・音楽が共存した作品作りに挑んでいます。また、メンバー全員でシェアハウスをし、その様子やバンド演奏の動画をYouTubeチャンネルで100本以上投稿しています。
昨年は、不滅の金字塔マンガ・手塚治虫さんの『火の鳥』連載70周年を記念して、特別公演『猿女版 火の鳥~鳳凰篇~』を上演。全編生演奏にのせ、新たな登場人物やストーリーを加えた新解釈が反響を呼びました。
今注目の若手劇団が新作公演として挑むのは、アーサー・コナンドイルの名シリーズ「シャーロック・ホームズ」から『ボスコム渓谷の惨劇』(加えて、江戸川乱歩『探偵小説の謎』)を原案とした『逆さまの日記』と、『バスカヴィル家の犬』を原案とした『ベイカーストリートの犬』の2作品です。
<あらすじ>
『逆さまの日記』の舞台は、 イギリス、ブレッドワーディン村。探偵業を引退したシャーロック・ホームズは、養蜂をしながら隠遁生活を送っていた。
突如村で起こった農園主チャールズ・ターナー殺害事件、チャールズの旧友マッカーシーの不審死。
ホームズはミステリー作家を志すジョン・ウィルソンを助手に任命し、事件を華麗に解決。村には再び平和な日々が訪れたかに見えた。
そんな折、ジョンの双子の姉ハリエットは弟が書いた日記を持ち、ホームズの元を訪れる。
弟が書いた日記は、事件解決の日から遡って逆さまに書かれているのだと。ホームズとハリエットは“逆さまの日記”を広げ、もう一度事件を捜査し始める——
“逆さまの日記”に記された事件の真相とは。引退後のシャーロック・ホームズに突然舞い込んできた捜査依頼。
あなたは真相に辿り着くことができるだろうか。
『ベイカーストリートの犬』の舞台は、イギリス南西部の広大な湿原地帯、ダートムーア。その地の歴史ある名家、バスカヴィルー族の当主であるチャールズ・バスカヴィル卿が遺体となって発見された。
遺体には暴行の痕跡は見当たらず、表向きに心臓発作による病死と発表されたが、その顔には恐怖と苦痛が刻まれていた。
さらに遺体の近くには異様に大きな獣の足跡が。実は、呪われた魔犬伝説によりー族ではこれまで不可解な最期を遂げた者が多いのだった…。
ピエール・バイヤールの考察本 『シャーロック・ホームズの誤謬「バスカヴィル家の犬」(再考)』により、新たな真実が明らかに。
呪われたバスカヴィル一族の謎と恐怖に迫る、シリーズ史上最も不可解な難事件に、名探偵シャーロック・ホームズが挑む。
サルメカンパニー第9回公演『逆さまの日記』『ベイカーストリートの犬』は、1月10日 (金) ~ 1月19日 (日) に、東京・駅前劇場にて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。
2人芝居×2作品同時上演×2作品新訳! ポウジュvol.1『リタの教育』『オレアナ』
ポウジュ(PAUJU) は、演出家の稲葉賀恵さんと翻訳家の一川華さんによるユニットで、「翻訳」という営みをじっけんしたり、はっくつしたり、はたまたかいたいしたりする遊び場として立ち上げられました。
第1弾公演となる今回は、ウィリー・ラッセル『リタの教育』とデヴィッド・マメット『オレアナ』の2作品の新訳同時上演に挑みます。2作品に共通しているのは、男性教授とその教え子を描いた二人芝居であること。ジェンダーや権力を超えて、人はどのように(対)話をするのでしょうか。
出演者には、映画『誰が為に花は咲く』で主演を務めるなど映像で活躍する一方、舞台にもコンスタントに出演し若手俳優の中で頭角を現す湯川ひなさんと、劇壇ガルバ『ミネムラさん』に出演、また2025年には舞台『オイディプス王』への出演を控える大石継太さんを迎えます。
<あらすじ>
『リタの教育』 の舞台は、1970年代後半のイギリス。26歳の美容師リタは、大学の社会人講座に足を踏み入れる。彼女の指導を任されたのは、かつて詩人を志しながらも、今では酒に溺れる大学教授フランク。自由奔放で、学ぶことに意欲的なリタに、フランクは興味を覚える。しかし、「教育」を通じてリタの持ち前の無邪気さや自由さが失われてしまうのではないかという不安が、フランクの心を掻き立てていく。
『オレアナ』の舞台は、1990年代のアメリカ。終身在職権の授与を目前に控え、将来の安定に胸を膨らませる大学教授ジョンの研究室に、女子学生キャロルが訪れる。講義についていけず、不安を抱えるキャロルに、ジョンは親身に対応する。しかし、キャロルがジョンを大学当局に訴えたことをきっかけに、順調だったはずのジョンの未来は大きく揺らぎ始める。
ポウジュvol.1『リタの教育』『オレアナ』は、1月11日(土) 〜 1月19日 (日)に、東京・シアター風姿花伝にて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。
愛らしい「加寿美」の姿が、ジェンダーを超え人間の本質や差別意識に問いかける ONEOR8『誕生の日』
ONEOR8は、1998年に旗揚げした劇団。作・演出を田村孝裕さんが、座長を恩田隆一さんが務めています。日常に起こりうる可笑しみや痛み、少しの毒気を持ち合わせた物語で、切なくも笑える、しばらくあと味の残る作品を目指して創作を行っています。昨年上演した『かれこれ、これから』は、読売演劇大賞の上半期ベスト5にノミネートされました。
『誕生の日』は、2020年に一度上演され、好評を博し、ファンから再演を待望されていた作品です。
自己肯定感が低く、女性としての生き方を諦めた女性・木村加寿美役を、劇団員の山口森広さん(男優)が性別を超えて演じます。
山口さん演じる主人公の葛藤する姿やいじらしい表情に、観客は人間の本質や差別などの意識に問いかけられ、老若男女問わず興味深くそして可笑しみも味わえる作品となっています。
<あらすじ>
木村加寿美、39歳、独身、恋愛経験なし。幼い頃から男の子に見間違われ、母が着せるかわいい服を拒むようになった。思春期に女性としての自我が芽生えるものの、いつしか自分を押し殺し、友人たちに合わせる性格に。クラスメイトである秋山に恋をしたが、もちろんその気持ちは押し殺した。人生で恋をしたのはこの一度きりである。
社会に出ると、性別を超えた存在として男女問わず友達が増え、その容姿は完全なおっさんになった。女性としての生き方を諦めたこと以外は順風満帆と言える人生で、30歳のとき、加寿美は念願であった自分の店(バー)を開店。友人たちの計らいで店の10周年と加寿美の40歳を記念してパーティが開かれることとなると、そこへ秋山もやってくる。久々の再会に、昔の想いが沸々と湧き上がる加寿美。物語は高校時代の淡い恋とパーティが同時進行し、加寿美が今まで押し殺してきた“本当の自分”が顔を出す。新たな木村加寿美の、誕生の瞬間。
作・演出を務める田村孝裕さんは上演にあたり「人間関係の中に潜む無意識や無自覚、その残酷性をどうにか言葉に、台詞に、物語に、と挑んだ作品です。評判も上々で、私も再演を待ち望んでいました。
初演は2020年1月、コロナの直前。あれから世の中は大きく変貌しています。
この物語が今も通用するのか、もはや時代遅れなのか……
普遍性があるのか、アップデートが必要なのか……
試行錯誤しながら2020年当時よりもお客さまに“刺さる”物語にしたいと思います。
劇団員、山口森広の代表作です。おそらく彼が二度と演じることのない「加寿美」をぜひ劇場でご覧いただきたいです」とコメントしました。
本公演にはスウィング出演回があり、1月25日19時の回は座長の恩田隆一さんの役を水野創平さんが、1月27日13時・1月30日19時の回では、冨田直美さんの役を服部容子さんが演じます。ワークショップ公演から選ばれたスウィング2人の活躍にも注目です!
ONEOR8『誕生の日』は、1月23日 (木) ~ 2月2日(日)に東京・ザ・スズナリにて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。
観劇始めの作品には何を選びましたか?皆さんの注目作品も是非教えてください!