2022 年のトニー賞で8部門にノミネート、ミュージカル衣裳デザイン賞、オリジナル楽曲賞を受賞したミュージカル『SIX』。1月8日から来日版、1月31日から日本キャスト版の上演が行われます。来日版公演初日に、日本版キャストも集結した囲み取材が行われました。

日本キャストも集結した特別カーテンコール

英国史上最もスキャンダラスな暴君として知られるヘンリー8世の元王妃たち6名が現代に蘇り、ガールズバンドを結成、「誰がいちばん悲惨な目にあったのか」を競い歌うミュージカル『SIX』。2017年にケンブリッジ大学の学生により制作され、世界最大の芸術祭エジンバラ・フェスティバル・フリンジで発表されるとたちまち話題となり、すぐにUK ツアーが決定。2019 年にはウエストエンドで公演、UKツアーと北米ツアーを経て、2020年にはブロードウェイでも上演。その人気は止まることを知らず、ヨーロッパ各地やオーストラリア、韓国等世界各国で上演されることになりました。

2019 年にはオリヴィエ賞で作品・助演・音楽・振付・衣裳デザインの5部門でノミネート、2022年トニー賞では8部門にノミネートされ、ミュージカル衣裳デザイン賞、オリジナル楽曲賞受賞の快挙を遂げました。

世界中を虜にし、客席を熱狂の渦に巻き込んでいる話題の大ヒットミュージカルが、いよいよ日本初上陸を迎えます。来日版公演初日は幕開けと共に大歓声!日本の“Queendom(クイーンダム)”(『SIX』のファン)がいかに上演を待ち望んでいたかが伝わります。

長年連れ添ったにも関わらず王が愛人と結婚する為に離婚したキャサリン・オブ・アラゴン、略奪婚に成功し王妃の座を得るも斬首に処せられたアン・ブーリン、王待望の息子を産むが産褥死したジェーン・シーモア、結婚前に見た肖像画と似ていないという理由で即離婚したアナ・オブ・クレーヴス、前恋人との密会が疑われ斬首されたキャサリン・ハワード、王に先立たれ生き残ったキャサリン・パー。

「Divorced(離婚)、Beheaded(打首)、Died(死亡)、Divorced(離婚)、Beheaded(打首)、Survived(死別)」をキーワードにしながらも、ポップな音楽でのライブパフォーマンスが繰り広げられます。各キャラクターに焦点を当てた楽曲たちは、力強い楽曲からキュートな楽曲、バラードナンバーまで様々。彼女たちの人間性を表す楽曲で多彩にステージを彩ります。

さらにキャスティングには6名の王妃それぞれに、現代のポップスターのイメージが当てはめられています。1人目の妃アラゴン役はビヨンセ、ジェニファー・ロペスなど、2人目のブーリン役はリリー・アレン、アヴリル・ラヴィーンなど、3人目のシーモア役はアデルやシーア、4人目のクレーヴス役はニッキー・ミナージュやリアーナ、5人目のハワード役はアリアナ・グランデやブリトニー・スピアーズ、6人目のパー役はアリシア・キーズやエミリー・サンデー。現代的な楽曲とダンス、衣装によって、歴史上の人物たちが生き生きと躍動していきます。

マッチングアプリを連想させる演出など、現代的でコミカルなシーンも印象的です。ハッピーな空気に溢れ、ライブに訪れたようなワクワク感たっぷりのステージ。彼女たちとガールズトークをしているような感覚にもなります。しかしその奥には、一見悲劇に見える彼女たちの人生、「男性によって語られてきた歴史」を、自ら書き換えていくエネルギーに溢れています。

初日のカーテンコールには日本キャストも集結し、大きな盛り上がりを見せました。

“自分らしくあれ”というメッセージを受け取ってほしい

囲み取材には、SIXスタッフチーム、来日版キャスト11名と、日本版キャストである鈴木瑛美子さん、ソニンさん、田村芽実さん、皆本麻帆さん、原田真絢さん、遥海さん、エリアンナさん、菅谷真理恵さん、鈴木愛理さん、豊原江理佳さん、和希そらさん、斎藤瑠希さんが登壇しました。

来日版を観劇し、鈴木瑛美子さんは「刺激的だったのは、キャストの個性を無くさずに役になっていたこと。自分を探していかないといけないと感じた」、ソニンさんは「初めて観て刺激的だったのもあるし、私たちは数日前に全部付け終わったので完成形を見て、涙が止まらなくなって。お客さんが同じふうに感じてくれればいいなと思ったし、この興奮のまま日本上演に持っていきたい」と意気込みます。

日本キャスト版の初日は1月31日。稽古について田村芽実さんは「正直もう今日稽古に行きたくないって思う日があるくらい。それぞれが己を限界まで追い込んでいて、でもそうならないとこの『SIX』という作品はお届けできない。一生懸命、命がけで頑張っているところです」と語ります。

皆本麻帆さんも「本当にアスリート。今日も6人の王妃様がアスリートで、それぞれに魅力的で。でもここにいる12人もとっても魅力的だから、きっと私達もお客さんに楽しんでもらえるだろうなと思って明日からの稽古も励みたいと思います」とコメント。

日本キャストも舞台上に登場した特別カーテンコールについて原田真絢さんは、「1秒ぐらいに感じるぐらいあっという間だったんですが、バトンをしっかり受け取って、日本版の公演も盛り上げていきたいなと、背筋がピンとするような時間でした」と振り返り、遥海さんも「バトンと言うのが本当にその通りだなと。受け取った気持ちだし、頑張りたいという気持ちが強くなりました」と頷きます。

同じ役柄を観たことで得たヒントを問われるとエリアンナさんは「ヒントどころではなく、答え合わせができたと思う。演出で、観にきてくれる方、キャストのみんなの1人1人の目を見るように言われるのですが、客席でキャストと目が合った時に、繋がるこの瞬間が大事だなと改めて思えた。会場が一つになる瞬間を体感できた」と語ります。

菅谷真理恵さんは「彼女たちも、今の私たちと同じような時間を過ごしてきたからこそ初日を迎えているんだなと思うと凄く胸がいっぱいになった。同じ台本をもらって、同じ演出を受けて、同じ振付の意図がありながら作っていったんだなと、今の段階だからこそ感じられた」と語ります。

鈴木愛理さんは稽古について「体力作りからスタートして、歴史が男性によって書かれた部分が多い中で、女性の1人の歴史があるというのをしっかりと伝えてくれた」と語り、豊原江理佳さんは「稽古が始まる時、演出家、スタッフ、キャストみんなで1つの輪になって、感謝を言葉にしてから始まるので、みんなに支えられていること、みんなを支えることを毎日感じる」と語りました。

そして上演を楽しみに待つ観客に向けて和希そらさんは「共に盛り上がる準備をしておいてほしいですし、“ヒューヒュー!”とか、声やレスポンスをいただけると嬉しい。朝から発声練習をしてきてください」と笑顔で語り、斎藤瑠希さんは「ポップな音楽に溢れた作品で、そこに込められた歴史は緻密に作り上げられています。作品を観てから歴史を調べても良いし、調べてから観にきても良いし、そこは皆さんにお任せするので、楽しめそうな方を選んでいただけたら」とメッセージを贈りました。

演出補のアレクサンドラ・スペンサー・ジョーンズさんは「日本で上演できたことが大変光栄」と語り、振付補のニコール・ボンジーさんは「日本のキャストの皆さんは勤勉で真面目。プロフェッショナル精神に溢れていて、実験するような冒険心もある」と日本キャストを評価。

音楽スーパーバイザー補のケイティ・リチャードソンさんは「歴史の勉強していただきたいですし、ポップな音楽に酔いしれて楽しんでいただきたいと思います。また作品に込められたメッセージを少しでも受け取ってもらえたら嬉しいです。そのメッセージとは“自分らしくあれ”ということです」と想いを語りました。

囲み取材撮影:鈴木文彦

来日キャスト版でアラゴンを演じたビリー・カーさんは「いきたい場所No.1が東京だった。素晴らしいショーを上演できて夢のよう」と語り、ブーリン役のイナ・トレスヴァレスさんは「日本のキャストともショーを共有できて嬉しかった」とコメント。シーモア役のリバティ・ストッターさんは「皆さんの笑い声や歓声から愛を感じられた」、クレーヴス役のハンナさんは「幕が開いた瞬間から歓声が聞こえて、支えられた」、ハワード役のリジー・エメリーさんは「世界の反対側にいる日本キャストと集結することができて感動的だった」、パー役のエロイーズ・ロードさんは「同じ演出や振付を受けている日本キャストとのカーテンコールは、大きな1つのファミリーが集結しているような感覚だった」とコメントしました。

またオルタネイト(代役)やスイングを務めるキャストも登壇。ミリー・ウィローズさんは「キャストの個性を楽しんでほしい」、エリン・サマーヘイズさんは「何回観ても違うように観られるので何十回でも観て」、ローレン・サント=クインさんは「オープンマインドで観てほしい。ドレスアップ回なども楽しんで」、イジー・フォームバイ・ジャクソンさんは「自分たちが『SIX』を盛り上げて、日本版も観たいと思っていただきたい」、エズメ・ローテーロさんは「普段ミュージカルを観ない方でも、誰もが気軽に楽しめる」とアピールしました。

ミュージカル『SIX』来日版は1月26日までEX THEATER ROPPONGIにて上演。1月31日から2月21日までは日本キャスト版の東京公演が行われ、日本キャスト版は愛知・御園座にて2月28日~3月2日、大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて3月7日~16日まで上演されます。公式HPはこちら

Yurika

たくさんのキャッチーで楽しいナンバーが立て続けに歌われ、あっという間でした。「Tokyo」と呼びかけてくれるので、本当に王妃たちのライブに来た気持ちになれます。