2025年3月7日から、映画『ウィキッド ふたりの魔女』が全国ロードショーされます。
全世界の観客動員数は6500万人を突破し、100以上の演劇賞や音楽賞を受賞したミュージカル『WICKED』。2003年の初演から不朽の人気を誇る本作の映画化に、世界中のミュージカルファンから大きな注目を集めています。
作中の名曲やストーリーはもちろんのこと、特筆すべきは本作のふたりのヒロイン、エルファバとグリンダの存在でしょう。
緑色の肌という特異な外見のため、家族や周囲から疎まれてきたエルファバと、誰よりも特別であることを望む人気者・グリンダ。正反対なふたりの少女が、魔法と幻想の国オズにある<シズ大学>で出会い、反発しながらも心を通わせていくのです。
本記事では、エルファバとグリンダを演じる歴代キャストたちを紹介・解説します。
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エルファバ役:イディナ・メンゼル
イディナ・メンゼルは、1971年生まれ、アメリカ出身の歌手・女優です。
ブロードウェイミュージカル『RENT』のモーリーン役でトニー賞助演女優賞にノミネート。その後『WICKED』のエルファバ役で同主演女優賞を受賞するなど、華々しいキャリアを誇っています。
日本では、ディズニー映画『アナと雪の女王』エルサのボイスキャストとして知っている人も多いのではないでしょうか。
グリンダ役:クリスティン・チェノウス
クリスティン・チェノウスは、1968年生まれ、アメリカ出身の歌手・女優です。
主にブロードウェイのミュージカル女優として多くの作品に出演しています。
特に歌唱力において、独特の高音と豊かな表現力で多くのファンを魅了しています。オペラの声楽のほか、ポップスから讃美歌まで、さまざまなジャンルの音楽を幅広くこなしているのです。
パワフルな歌声とユニークでキュートな存在感で、唯一無二の存在として輝くスターのひとりです。『WICKED』のグリンダ役は彼女の代表作であり、1999年のミュージカル『きみはいい人 チャーリー・ブラウン』への出演ではトニー賞を受賞しています。
イディナ・メンゼルとクリスティン・チェノウェスのエルファバとグリンダは現在でも多くのミュージカルファンに愛されており、アメリカの大人気ドラマ『glee』にゲスト出演、コロナ禍での劇場閉鎖を乗り越えての開催となった2021年の第74回トニー賞では『WICKED』の名曲「For Good」を涙ながらに歌唱し話題を呼びました。
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エルファバ役:シンシア・エリヴォ
シンシア・エリヴォは1987年生まれ、イギリス出身の女優です。
2011年にミュージカルデビューした直後、『Sister Act(邦題:天使にラブソングを…)』のデロリス役に抜擢、主演を務めました。
さらにミュージカル『カラー・パープル』ではセリー役で主演し、ブロードウェイ・デビューを果たしています。
『カラー・パープル』はピューリッツアー賞を受賞したアリス・ウォーカーの同名小説を原作に、黒人女性の過酷な人生と姉妹愛、友情などを描いた不朽の名作です。本作品は2016年のトニー賞主演女優賞、グラミー賞、エミー賞など数々の賞を獲得しました。
シンシアの映画作品での代表作は、2019年にタイトルロールとして主演した『ハリエット』。アフリカ系アメリカ人として史上初めて新・米ドル紙幣に採用された、実在の奴隷解放運動家を演じています。
グリンダ役:アリアナ・グランデ
アリアナ・グランデは、1993年生まれ、アメリカ出身の歌手・女優です。
10代の頃からブロードウェイミュージカルに出演し、その歌唱力は「ネクスト・マライア(マライア・キャリーのこと)」と称されるほど。
3rdアルバム「デンジャラス・ウーマン」(2016年)は日本でも大ヒットし、彼女の知名度をぐっとあげたきっかけになったといえるでしょう。
15歳の時、ブロードウェイミュージカルに出演したこともあるアリアナ。今回の映画出演では、アリアナの実力をさらに輝かせることになりそうです。
内なる強さと華やかさ、映画版の「ふたりの魔女」に期待したい点は?
『ハリエット』や『カラー・パープル』に見られるような「自由を手にするために戦う女性」を多く演じてきたシンシア。
彼女が演じてきた役柄は、人から非難されても自分の信じた道を突き進んだエルファバと繋がります。
エルファバの魅力は、単なる「強い女性」であることにとどまりません。
周囲から受けた心の傷や、それでも立ち上がる内面の美しさなどをどう演じ切ってくれるのか期待が高まります。
映画版のサウンドトラックを聴くと、イディナ・メンゼルの強靭な歌唱力とは少しカラーが異なる印象を受けました。イディナの歌声よりももっとやわらかで、等身大の魅力がある歌声に感じました。
一方、グリンダを演じるアリアナの歌声は、クリスティンの独特な歌唱法に寄せているのかな?と感じる箇所も。
ミュージカルならではのセリフと歌唱が混じる部分や、クリスティンのならではのオペラチックな歌唱法など、普段のアリアナとは違った印象が感じられました。いずれにしても、アリアナの圧倒的な歌声を楽しめそうです。
また、グリンダのメインとなるドレスは、舞台版では水色ですが、映画版ではピンクのドレスに。アリアナのキャラクター性を意識しているのか、1954年に公開された『オズの魔法使い』でのグリンダのビジュアルにインスパイアされたのか、さまざまな想像が膨らみます。
高畑充希がエルファバに。吹き替え版キャストにも期待高まる
日本語吹き替え版の声優には、高畑充希さん(エルファバ役)・清水美依紗(グリンダ役)さんが決定しました。おふたりはオーディションに合格し、それぞれの役を射止めました。
高畑充希さんは、映画やドラマなど幅広く活躍する女優さんですが、ミュージカルでも長いキャリアを誇っています。『ピーター・パン』『ミス・サイゴン』『ウェイトレス』などの名作で主演を務め、高い歌唱力で多くのファンを魅了する存在です。
映画公開に先立ち配信された日本語版の歌唱ムービーでは、高畑さんの芯の通った透明感のある歌声が、エルファバのまっすぐなキャラクターにマッチしているように感じました。
一方の清水美依紗さんは、歌手・ミュージカル俳優として活躍し、今回が吹き替え初挑戦となります。
なんと清水さんは自身が高校生の頃「次世代アリアナ・グランデ発掘オーディション」で審査員特別賞を受賞したという経歴を持っています。そんな清水さんが今回、アリアナ演じるグリンダの吹き替えを担当することになった展開には、熱いドラマが感じられます。
グリンダの代表ナンバーである『Popular』の歌唱シーンでは、かわいらしい歌声と少しがなるような特特の歌唱力が、グリンダのユニークなキャラクター性をうまく体現しているように思えます。
また、2025年2月3日(月)に実施された、日本語吹き替え版キャストの会見イベントでは、高畑充希さん、清水美依紗さんをはじめとするメインキャスト7名が登壇しました。
会見のなかで、高畑さんは「シンシアさんの大ファンで来日した際にもコンサートに行って歌声に魅了されていた」、清水さんは「青春時代といえばアリアナというほどでした」と答えるほど、映画版キャストの大ファンだと語っていました。
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オリジナル、映画版、吹き替え版と、それぞれのキャストには違った味わいや魅力があります。エルファバとグリンダ、それぞれの魔女が持つ本質的な魅力はそのままに、異なる時代、異なる表現者たちによって、新たな輝きが放たれることでしょう。