福岡で生まれ育ち、実力・人気ともに九州を代表する劇団があります。その名は「万能グローブガラパゴスダイナモス(通称ガラパ)」。旗揚げ20周年を迎える2025年、とびっきりの布陣で新作を上演することになりました。この記事では、高校2年生でガラパに出合い、演劇を愛するようになった筆者が、ガラパと新作公演の魅力をファン目線で語り尽くします!

初心者もマニアもドンとこい!ガラパ流「とことん楽しませる精神」

2005年、万能グローブガラパゴスダイナモス(通称ガラパ)は、福岡大学附属大濠高等学校 演劇部の卒業生を中心に旗揚げされました。

長くて独特な劇団名、最初は覚えにくいかもしれません。でもわたしは、作品やメンバーの方々に親しむうち、広い間口を持って面白いことをたくさんキャッチしていく姿勢が、名前にぴったりだと思うようになりました。

大濠高校の演劇部には、劇団☆新感線のいのうえひでのりさんや、ギンギラ太陽’sの大塚ムネトさんも在籍。観客をとことん楽しませるエンターテインメントの考え方が根づいていたそうです。そこで青春時代を過ごした川口大樹さん(脚本・演出)や椎木樹人さん(主宰)を含め、ガラパのメンバーは「演劇に馴染みのない人でも楽しめる作品づくり」を意識しています。

ガラパといえば「ワンシチュエーションコメディ」。1つの場所や状況で物語が完結する方式です。『劇団そとばこまち』『ヨーロッパ企画』『MONO』から影響を受けて、今のスタイルを確立してきました。

「舞台装置で遊ぶ」をコンセプトに生み出される、大がかりなのに緻密な舞台セットも魅力。筆者は『星降る夜になったら(2017年版)』から公演に通っているのですが、「リアルで粋なセットを作られるなあ」と感動してしまいます。特に記憶に残っているのは、部屋が立体的に飛び出す仕掛け。「え、演劇ってこんなことできるの!?」ととても驚きました。

かつて川口さんは「『おもしろいものは東京にしかない』なんて思われたくない。福岡にもおもしろいものがあるんだと知ってほしい」と、インタビューで語りました。彼らは、福岡の街の中で生き、「とことん楽しませる精神」で面白い作品を観客に届け、街や人とともに育っていきます。

一度観たらきっと心を掴まれてしまうはずだから、ガラパのことをもっと知ってほしい。そこでここからは、新作公演『見上げんな!』のあらすじや豪華なスタッフ・キャストをご紹介します。

「何かをずっと見上げてた人たち」の群像コメディ

60年以上、地元の人々に愛されてきた福岡市民会館を継承する施設として、2025年3月28日に開館した福岡市民ホール。約2000席の大ホール、約800席の中ホール、幅広い用途に対応できる小ホールを備える、福岡の新たな文化振興の拠点です。福岡市民ホール開館記念 中ホールの初回公演として『見上げんな!』が上演されます。

そして今回のスタッフ陣はガラパ史上最強かもしれません。

ガラパの結成メンバーであり、2009年から2012年まで4年連続で、脚本を手掛けた作品が九州戯曲賞最終候補にノミネートされた、川口大樹さん。東京を拠点に活動する劇団ゴジゲンの主宰であり、映画監督としても活動する松居大悟さんが演出を務めます。また、舞台の核となる音楽を、福岡市在住のミュージシャン・小山田壮平さんが担当しています。

20年間、福岡で成長してきたガラパ。一方、福岡を飛び出して活躍してきた松居さんと小山田さん。彼らは福岡で生まれ育ち、まだ何者でもないときから夢を語り合ってきた、仲間でありライバルでもあります。経験を積み重ねてきた今だからこそつくれる特別な作品に、期待がグングン高まりますね!

駆け出し映像作家・三月(みづき)に「バンドのMVを撮ってほしい」と故郷、福岡からDMが届く。数年ぶりの帰郷を果たした彼女を待っていたのは、ボーカルの失踪ですっかり活動停止中、ほぼほぼ解散状態のおじさんバンド。撮影など叶うはずもなく、空中分解真っ只中のメンバーを説得するため福岡の街を奔走するはめに。すっかり音楽から離れ、時代からも取り残された曲者のおじさん達。彼らを追いかけるうち、気づけば三月自身もこの街に置きっぱなしだった自分の過去に追いかけられていて。才能ある誰かや、自分より優れた何かとか、地方とか都会とか、ずっと見上げてた人たちの群像コメディ。

キャストについて椎木さんは「福岡で演劇を続けてきた20年の中で、さまざまな場所、さまざまなタイミングで出会った魅力的な俳優達です」とコメント。

ガラパからは、椎木さんをはじめ、古賀駿作さん、千代田佑李さん、青野大輔さん、 富永真由さんが出演します。また、東迎昂史郎さん、善雄善雄さん(ともにゴジゲン)、神田朝香さん、田島芽瑠さん、多田香織さん(ひなた旅行舎)、向野章太郎さん、酒井善史さん(ヨーロッパ企画)がキャスティングされました。

筆者のイチオシ俳優は古賀さん。西南学院大学演劇部の引退公演で椎木さんにスカウトされ、2019年9月に入団して以降、ほぼ全ての劇団公演に出演しつつ、外部公演にも次々と参加してきました。2020年4月にはお笑いコンビ「石田から古賀まで」を結成し、キングオブコントやM-1グランプリに出場したり、単独ライブを実施したりと、活動の勢いが止まりません!

特に2023年の第31回公演『ひとんちで騒ぐな』では、彼自身のコミカルな人柄が最大出力された演技に、目も耳も釘付けになってしまいました…!今回はどんな古賀節を見せてくれるのか、今からワクワクしています。

舞台『見上げんな!』は、2025年4月4日(金)から6日(日)まで、福岡市民ホール中ホールで上演されます。また、4月17日(木)から20日(日)までは大阪府の近鉄アート館、4月24日(木)から27日(日)までは新国立劇場小劇場で公演が実施される予定です。ガラパ名物「生コメンタリー」や小山田さんのミニライブが楽しめる回もありますので、詳しい情報は公式サイトをご覧ください!

さよ

わたしが演劇を好きになるきっかけをくれたガラパ。本当はもっと愛を語りたいのですが、今回はここまで(笑)。YouTubeチャンネル「ガラパ劇場【劇団の遊び部屋】」で、作品の制作背景や劇団員の個性が知れますので、公演には行けない方もぜひチェックしていただけたらうれしいです!