4月9日(水)に日生劇場で開幕したミュージカル『ウェイトレス』。日本では2021年に本作の大ファンである高畑充希さんが主人公ジェナ役を務め、第46回菊田一夫演劇賞を受賞。大きな反響を呼んだ本作が待望の再演を迎えました。ゲネプロの様子を、オフィシャル舞台写真とコメントと共にお送りします。

「どんなパイにしよう?言葉にならないものも入ってるわ」

アメリカ映画「ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた」(2007年)をベースに、2016年にブロードウェイで上演されたミュージカル『ウェイトレス』。脚本:ジェシー・ネルソン、音楽・歌詞:サラ・バレリス、オリジナルブロードウェイ振付:ロリン・ラッターロ、オリジナルブロードウェイ演出:ダイアン・パウルスと、女性クリエイターによって製作されています。

高畑充希さんが演じる主人公のジェナは、支配欲の強いダメ男の夫・アール(水田航生さん)から現実逃避するように、アメリカ南部の田舎町のダイナーで働きながらパイを作り続けています。

ジェナが作るパイは、彼女の心情が込められた独創的なネーミングと、食べた人を虜にするほどの美味しさが評判。舞台上ではリアルに小麦粉や卵を使って調理しながら歌唱し、フッと小麦粉を吹きかける振り付けは本作を象徴するシーンです。舞台袖にもずらりとパイが並べられており、帰りにパイを食べたくなること間違いなし。

ダイナーでは日々ジェナと、姉御肌のベッキー(LiLiCoさん)、歴史オタクで恋に臆病なドーン(ソニンさん)のガールズトークが繰り広げられます。料理人のカル(田中要次さん)に嫌味を言われてもお構いなし。3人のチームワークが楽しく、それぞれの個性も魅力的です。

ジェナはある日、アールとの子どもを妊娠していることに気が付きます。暴力的な面もあるアールとの子を喜べないジェナ。「おろす気はないの。でもそれを非難するつもりもなくて。ただ、他の人みたいに喜べない」と妊娠に対するリアルな感情を吐露します。本作では様々な立場の女性に寄り添う台詞が多く、他人には言えない心の奥にある心情も肯定してくれているよう。

高畑充希さんはその伸びやかながらも繊細で、ジェナの心の揺れ動きが伝わる歌声で魅了。物語が進むにつれてどんどんとジェナに感情移入していってしまいます。現実とすぐには向き合えず、逃げてしまうジェナの姿もリアルです。

森崎ウィンさんはジェナが訪れる産婦人科で、不倫相手となってしまうポマター医師を爽やかに、時にコミカルに熱演。ジェナのパイを食べ、あまりの美味しさに身悶えするポマターはとってもキュート。ジェナを理解し、優しく包み込む姿が印象的です。

ドーンが恋愛アプリで出会ったオギーを演じるのは、おばたのお兄さんと西村ヒロチョさんのWキャスト。公開ゲネプロではおばたのお兄さんがオギーを演じ、舞台上をコミカルに駆け回りました。彼が本作のコメディシーンの多くを担い、作品の軽やかさを生み出してくれます。

女性のリアルな心情や望まない妊娠などの問題に切り込みながらも、全体的にコメディで軽やかなタッチで描かれるミュージカル『ウェイトレス』。色鮮やかなパイの数々を始めとするキュートな世界観や心を掴むエモーショナルな音楽、リアルながら明日への活力を与えてくれる物語と、唯一無二の魅力を放っている作品です。

開幕コメントが到着

高畑充希
「WAITRESS 」2025、
初日の幕がやっと上がりました!
やっとお客さんと出会えて、劇場中の熱気で、日生劇場が浮き上がりそうでした。
初演時はコロナ真っ只中だったので、稽古も海外のクリエイティブチームがリモートで行ってくれたり、稽古場もマスクが必須だったりと、通常の初演作品立ち上げより困難が多かったように感じます。
今回は普通に演出が受けられること、普通に共演者の顔を見ながらお芝居できること、普通にお客様の笑い声が聞けること。
全ての普通が本当に輝いて見えて、感謝の日々です。
この作品に改めて浸かってみて、メッセージ性の強さ、楽曲の素晴らしさ、キャラクターたちの愛らしさに再び感動しています。
最後までカンパニー一同、元気に走り切りたいです。
応援よろしくお願いします!

森崎ウィン
ようやく、4年前に観ていた世界の中でポマター医師として生きられる時が来ました。
毎回毎回新しい発見と、刺激や課題をくれる海外演出チームとこうしてご一緒できた事は大きな財産になる事間違いありません。
上演中にもっと自分のものに出来るよう日々精進していきたいと思います。
どうかウェイトレスの世界を堪能しに来てください!劇場でお待ちしております!
改めて、全世界の母たち、ありがとう。

ソニン
9年前にブロードウェイで観劇して以降、必ず日本で上演すべきだと強く思っていた作品に、今回一員になる事ができて感無量です。
再演で演出家が変わり、ドーンというキャラマスコットではなく、実際に生きる女性として、自身と重なる部分を引き出して、稽古していただきました。何度か観劇した印象で脳裏にある私のイメージと戦い苦戦しましたが、現代の人々に共感してもらえるポイントを大切に丁寧に造形作業をしました。
「不安症で、潔癖症で、形ないものへの恐怖心や恋愛においても確実な理想ばかりを求める。溜めてたものが自由に解放された時の人の生き生きとする所や、好きな事には拘りを持って熱を注ぐ所。」普遍的なシーン達の中で、全ての台詞の言い方や仕草や動きに、ドーンの性格や個性や変化に共感し楽しんでいただけたら、幸いです。
ぜひ、現代を生きる女性の機微を、可愛いらしいパイの世界と、おしゃれな音楽と、リアリティある生々しい肌感で描く「ウェイトレス」を感じにいらしてください。

LiLiCo
初演のとき50歳でのミュージカルデビューでした。最初にベッキーに出会ったのは最高にラッキーな運命!私はベッキーが大好きで、4年ぶりに再会して、今回作品を作り上げるなかでのお稽古中により深く彼女を理解し、劇中では描かれていないけど彼女が背負う苦悩も感じ取っていただければ嬉しい。ベッキーは全然完璧な人間ではないけど友人としてはとても素敵な存在だと思います。みんなも彼女に寄り添うことが出来る様に頑張ります。正直、ベッキーがLiLiCoにどんどん入り込んで最近では充希ちゃんとソニンちゃんが近くにいて、目が合うだけで心の中に暖かいものが芽生えます。ふたりともミュージカル界の大先輩だけど、守ってあげないといけないという母性本能が毎日メラメラと燃えている。スタッフ・キャストみんなで力を合わせて作品をよりわかりやすく、ディープに、そして登場人物や素晴らしい楽曲もみんなの応援歌になるはず。
さぁ、このどろどろだけど清々しいパイを召し上がれ!

ミュージカル『ウェイトレス』は2025年4月9日(水)から30日(水)まで日生劇場で上演。5月には愛知・大阪・福岡公演が行われます。公式HPはこちら

Yurika

ジェナが選ぶ結末に、思わず涙が溢れます。ブロードウェイではパイの甘い香りに劇場全体が包まれると話題の本作。日本でも再演となる今年は、パイが販売されているそうです!