数々の演劇賞受賞、名優の出演で映画化。海外で多大な評価を得ている『ザ・ヒューマンズ−人間たち』。2025年6月、満を持して日本初演を迎えます!
これはホラーかコメディか?「家族」をみて「社会」を知る
皆さんは「家族」とどのように関わって生きてきましたか?
血のつながり、心のつながり、かたちはそれぞれですが、 “社会での最小単位”とも言える「家族」。
新国立劇場では2025年、「家族」に焦点を当てた演劇シリーズ『光景−ここから先へと−』を上演しています。家族が織りなす様々な風景から、今日の社会全体の姿を照らし出すこのシリーズ。全3作となっており、第1弾の『母』は無事終演を迎えました。
そして今回ご紹介するのが第2弾、『ザ・ヒューマンズ−人間たち』です。原作は、劇作家・脚本家として活躍するスティーヴン・キャラムさんのヒット作。
マンハッタンの老朽化したアパートを舞台に、感謝祭を祝うために集まった家族が不可解な出来事に巻き込まれていきます。夕食を囲みながら会話を紡ぐなかで、貧困・老い・病気・愛の喪失への不安・宗教をめぐる対立などが浮かび上がり、全編を通して“不気味さ”を纏った異色の作品です。
人間の抱える人生の大きな不安を描く世界観は、現在のアメリカの縮図であり、それは私たち日本の現在とも重なります。
本作は2014年アメリカン・シアター・カンパニー製作によりシカゴで初演され、翌年にはニューヨーク、オフ・ブロードウェイで上演、さらに2016年にはブロードウェイ・デビュー。ピュリッツァー賞演劇部門最終候補、トニー賞、ニューヨーク演劇批評家協会賞の最優秀プレイ、オビー賞劇作賞を受賞と、数々の好評を得ました。
続いて2021年には映画化。キャラムさん自身が監督も務め、作品は高く評価されています。
今回の日本初演では、演出として桑原裕子さんが参加。新国立劇場では2022年に『ロビー・ヒーロー』のも演出も手がけており、脚本家や俳優としてもマルチに活躍する名演出家です。
最高な作品に信頼の演出で大満足間違いなし。皆さんも劇場で、歪で不気味な空間を味わってみてはいかがでしょうか?
リアルなキャスティングで物語の世界に没入!不安な一夜をあなたに
本作の出演者を決める際、「観客が自分自身を重ねることができる当事者性を重要視した」という桑原さん。
ブレイク家の長女で、ガールフレンドと別れたばかりの弁護士エイミーには山崎静代さんを抜擢。作曲家を目指す次女のブリジットには、オーディションを経て青山美郷さんが選ばれました。
そしてその恋人・リチャードには細川岳さん。認知症により車椅子生活をおくる祖母モモには稲川実代子さん、母ディアドラには増子倭文江さん。さらに悪夢にうなされ不眠が続く父エリックを平田満さん。多彩なキャストが揃いました。
ブリジッドとリチャードが暮らす古いアパートを訪れる登場人物たち。
階上の住人の奇妙な物音や、階下のランドリールームの轟音。消えた部屋の明かり。
家族ドラマというジャンルに、気味悪さ、恐怖という予想外の要素が介入してくる、なんとも想像し難いストーリー展開。
家族間の一筋縄ではいかない関係性、ユーモア、そして深い愛も描かれている本作に、幅広く活躍中の名優たちが挑みます。
また本作の上演に際し、桑原さんからはこんなコメントも。
「失われていく予感こそが、不安の正体なのかもしれません。『ザ・ヒューマンズ―人間たち』は、ひとつの家族の、ほんの僅かな時間を切り取った作品です。あなたも私もよく知るような……けれど、我々が平気な顔をして日々を営みながらひた隠しにしてきた恐ろしい何か、が、不気味な軋みをあげて満ちてゆく恐怖劇でもあります。家族という小さな社会で蠢く人間たちを、私も足をすくませながら見届けます」
この恐怖劇はきっと生で観ることに価値があるはず。
家族のかたちを見直す機会に。社会のあり方を考える機会に。ぜひ、様々な角度でこの作品に触れてみてくださいね。
シリーズ「光景−ここから先へと−」『ザ・ヒューマンズ−人間たち』は、2025年6月12日(木)〜6月29日(日)まで、東京・新国立劇場 小劇場にて上演されます。さらに7月5日(土)・6日(日)には愛知県・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホールにて、7月19日(土)には大阪・茨木市文化・子育て複合施設 おにクル ゴウダホール(大ホール)にて上演予定です。公演ガイドツアーやトークイベントも実施。詳しくはこちらをご確認ください!

小劇場の中にポツンと集まる家族。いつ何が起こるかわからない緊張感。気になります……!託児室を利用できる公演もあるので、ママさんパパさんも安心ですね。