8月23日(土)から昭和女子大学人見記念講堂で上演されるミュージカル『四月は君の噓』。新川直司さん作のコミックを原作に、アニメ化、映画化も大ヒット。ミュージカルは2022年に日生劇場で初演の幕を開け、ロンドン・ウエストエンド、韓国・ソウルでも高評価を受けました。そして待望の日本再演。宮園かをり役を演じる加藤梨里香さんにお話を伺いました。
若さゆえの危うさや感情の機微も繊細に表現したい

−日本初演の『四月は君の噓』は観劇されていましたか?
「はい、拝見していました。生田絵梨花さん演じる宮園かをりの儚さと、内に秘める強さがとても印象に残っていました。周囲を振り回しながらも可愛らしさがあって人を惹きつける、その塩梅が素晴らしかったです」
−ご自身が演じることになってみてどう感じられましたか。
「まさか自分が演じるとは思ってもみなかったので、最初は不安でいっぱいでした。でも周囲の方に“ぴったりだね”と言っていただけて、そう思ってくださる方もいるんだと思い、頑張ろうと思いました」
−出演が決まって改めて作品を見直して気づいた魅力はありますか。
「やはりフランク・ワイルドホーンさんの手がける音楽が美しいなと感じます。また高校生の役柄なので、喜怒哀楽、感情の波が凄くあるんだなと気づきました。若さゆえの危うさもあって、そういった機微も繊細に表現したいなと感じました」
−『四月は君の噓』は原作漫画やアニメも人気の作品ですよね。
「原作のある作品をこれまでも何度かやらせていただいているのですが、原作ファンの方が好きな部分はしっかりと外さないようにしつつ、舞台上で、生身の人間のやり取りだからこそ生まれる空気や感情を大切にできたらと思います」
−ミュージカル『四月は君の噓』はロンドン・ウエストエンドや韓国・ソウルでも高い評価を受けました。本作はなぜ世界中で愛されるのだと思われますか。
「眩しいくらいの青春が魅力的な作品ですし、挫折する痛み、大切な人との別れというのは世界共通なのだと思います。またクラシック音楽が題材であることも、世界中の方が共通で惹かれる部分なのかなと思います」
かをりは「言葉では表現できない人を惹きつける魅力を持っている」

−かをりはどのような魅力がある人物だと思われますか。
「明るさや天真爛漫さという言葉だけでは表現できないような、人を惹きつける魅力を持っている子だと思います。一方で、内側では人に見せない葛藤や熱い想い、抱えているものがあるので、そこをしっかりとお稽古で積み重ねて表現していきたいです」
−ご自身とかをりの共通点はありそうでしょうか。
「私も“いつも笑っているね”と言われるので、明るい部分は似ていると思います。また私も周囲の方を振り回してしまうタイプなので(笑)、そこも共通点かなと思います」
−ヴァイオリニストであるかをりを演じ上で準備しようと思われていることはありますか。
「ヴァイオリンを実際に弾くシーンはありませんが、当て振りをするシーンはあるので、しっかりとヴァイオリニストに見える所作を身につけたいです。また彼女が好きなクラシック音楽の楽曲は日々聴いていきたいなと思っています」
−ご自身は普段、クラシック音楽は聴かれますか?
「実はあまり聴かないんです。幼少期にバレエを習っていたので親しみはあるのですが、演歌好きの祖父と、ロック好きの父の影響を受けて育ってきました。なので今回かをりを通して、クラシック音楽の魅力に触れたいと思います」
「一緒に」「ふたりで」かをりの言葉に込められた想い

−5月には「Hibiya Festival 2025」で楽曲を披露されましたよね。フランク・ワイルドホーンさんが手がける本作の楽曲を歌ってみていかがでしたか。
「聞いている以上にエネルギーが必要な楽曲だなと感じたので、そこが今後課題になりそうだなと思いました。ただものすごく楽しくて軽やかで、キャッチーな楽曲ばかりなので、これを素敵に歌えたら、きっとワイルドホーンさんの音楽の素晴らしさを伝えられると思います。楽曲を歌うことにいっぱいいっぱいにならず、そこに込められた言葉をお届けできるよう稽古していきたいと思います」
−かをりはとても印象的な台詞がたくさんありますよね。加藤さんが今、印象に残っているかをりの台詞はありますか。
「かをりは公生に対して、“旅に出よう、一緒に!”など、“一緒に”“ふたりで”という言葉をたくさん使います。それはトラウマのある公生に対して“ふたりならできるよ”と励ましたり勇気づけたりする部分もありながら、自分自身に対して“公生とふたりならできる”と言い聞かせている部分があるんだと思います。かをりの繊細な内面が垣間見える台詞なので、大切に演じたいです」
−有馬公生を演じる岡宮来夢さん、東島 京さんの印象はいかがですか。
「おふたりとも今回初めてご一緒します。来夢くんは共通の知り合いが多いので、いつかご一緒できたら良いなと思っていました。取材で何回かお会いして、凄く素直に思っていることを言葉にする方だなと感じたので、お芝居を一緒に作っていくのも楽しみです。京くんはまだ20歳で、「Hibiya Festival 2025」でご一緒した時も若さゆえの怖いもの知らずさを感じました。私も以前、“梨里香は怖いもの知らずだよね”と言われて、どういうことなのか当時は分からなかったのですが、京くんを見ていると自分の20歳の頃を思い出します。若いからこそ持っている魅力を、一緒にお芝居をしていく中でたくさんいただけると思うので、凄く楽しみです」
−演出の上田一豪さんについてはいかがでしょうか。
「上田さんの演出作品に出演するのは今回が初めてです。今までたくさん作品を観に行かせていただいていて、友人もたくさんお世話になっているので、どんな作品作りをされるのかとても楽しみにしています」
−東京公演は昭和女子大学人見記念講堂で上演されますね。
「大学の講堂ということで作品の世界観とも近しいですし、クラシック音楽と縁の深い会場だと伺ったので、劇場からいただけるものがたくさんあるのだろうなと思います。しっかりと稽古で積み上げた上で、劇場からもいっぱい吸収して、化学変化を楽しみたいです」
役に合う声の出し方・喋り方を大切に

−加藤さんは『レ・ミゼラブル』コゼット役を始め、『リトルプリンス』『シンデレラストーリー』『ダブリンの鐘つきカビ人間』など数々の作品で役柄と真正面から向き合っていらっしゃるような印象を受けます。役を演じる上で大切にされていることはありますか。
「相手の方との心のやり取りというのは凄く大事にしています。また、自分の中で決まった歌い方を持つのではなく、役と丁寧に向き合った上で、役に合う声の出し方や喋り方を模索していくようにしています。裏声と地声の使い方なども、役によって合う出し方を考えます。自分の中で“この役だとこう歌えたら良いな”という理想があるので、そこに近づくにはどうしたら良いかを常に考えている気がします。あとは自分と似ている感覚を探して、役とリンクする部分を意識して演じるようにしています」
−歌声もいつも瑞々しくて素敵ですよね。
「でも元々歌が得意という意識はなかったんです。好きではあるのですが、幼少期は声がハスキーで高い音が出ず、それに対してコンプレックスがありました。だからこそ、自由にお芝居として歌えるようになるまで、とにかく歌をたくさん練習するというのは心がけています」
−「演劇は時代を映す鏡」と言われるように、本作も今上演されることで見えてくるメッセージがあると思います。2025年版の『四月は君の噓』ではどんなことが映し出されそうでしょうか。
「この作品は、たとえ相手に迷惑だと思われようと、どんどんと人に関わっていくことで心が動かされていく物語ですよね。それによって景色が変わっていく様を美しく描いていると思います。今はコミュニケーションのツールはたくさんある一方で、直接話したり、関わったりしにくい時代なので、人と関わることで景色が色づいていくかをりたちの姿を見ていただきたいですし、そこに感じていただけるものが多いと思います」
−ご自身はかをりのようにどんどん人に関わっていけるタイプですか?
「あまり得意ではなくて、どちらかと言うと色々気にし過ぎてしまうタイプなのですが、数年前から“悩んでいる時間がもったいないな”と感じるようになり、勇気を出して話しかけたり誘ったりできるようになりました」
−かをりもきっかけがあって積極的に人と関わるようになったので、似ているかもしれないですね。かをりにとっての公生のように、“この人と仲良くなりたい”と思って踏み出した経験はありますか。
「ミュージカル『ザ・ビューティフル・ゲーム』で木下晴香さん、豊原江理佳さんとご一緒した時、以前から気になっていたお二人だったので、絶対に仲良くなりたいと思っていました。お二人もそう思ってくださったみたいで、公演期間中も凄く仲良くしてくださって。お二人も気を遣う方なので、みんながそれぞれ“ご飯に誘いたいけれど、行きたくないと思うかもしれない”と遠慮してしまうのですが、3人で“そんなことは絶対に思わないから誘いあおうね”と約束して、定期的にご飯に行くようになりました」

−最後にミュージカル『四月は君の噓』を楽しみにしているお客様へメッセージをお願いします。
「ワイルドホーンさんの壮大かつ軽やかでポップな音楽に溢れた魅力的な作品です。音楽でも楽しんでいただけると思いますし、繊細な心のやり取りも大切に作っていきたいと思いますので、ぜひ観にきていただきたいです。お待ちしております」
ミュージカル『四月は君の噓』は2025年8月23日(土)から9月5日(金)まで昭和女子大学人見記念講堂で上演。その後、9月に愛知・大阪、10月に富山・神奈川にて公演が行われます。公式HPはこちら

撮影の衣装にも、かをりを意識したアクセサリーが…!かをりは加藤さんの瑞々しい演技や歌声が活かされる役柄だと思うので、とっても楽しみです!