名曲「Calling You」でも知られる映画を原作にしたミュージカル『バグダッド・カフェ』。アメリカ西部の砂漠の真ん中にある「バグダッド・カフェ」に偶然現れたドイツ人旅行者ジャスミンとカフェの女主人ブレンダとの出会いと友情、そこから広がる人々の絆を描いた作品で、ジャスミン役に花總まりさん、ブレンダ役に森公美子さん、演出に小山ゆうなさんを迎え、11月2日(日)からシアタークリエにて日本初演を迎えます。本作にカフェ店員のアブドゥラー役として出演する松田凌さんにお話を伺いました。

クラシックからロック・ラップまで、多様性を反映した音楽

−映画『バグダッド・カフェ』をご覧になっていかがでしたか。
「最初の印象は、色彩がとても美しい映画だと感じました。4Kリマスター版を拝見したというのもあるとは思いますが、ビビッドに映っているというよりも、空の色や部屋の暗がりの温かみ・冷たさというものを映画の中で感じ、美しい作品だなと感じました。また、あの時代だからこその人種を超えた繋がりという意味での温かさも感じ、僕個人としても今だからこそ、より深く考えることがありました」

−ミュージカル版はいかがでしょうか、作品への印象の変化はありましたか?
「日本初演ということもあって稽古場でディスカッションを重ねて創っていますが、改めて人との繋がりについて考えています。バグダッド・カフェでは人の心も土地自体も乾いてしまっていて、そこにジャスミンという人が違う世界からやって来る。そこから、人々の心が潤っていく姿を、ミュージカルならではの描き方で伝えられると思っています」

−松田さんが演じるカフェ店員のアブドゥラーは、まさにそのバグダッド・カフェで起こる変化を目の当たりにする人ですよね。
「そうですね。手助けしたり支えたりする役として物語に説得力を持たせる存在になれたら良いなと思います。自分が少し行動を起こすことによって誰かの役にたつという象徴的な役割だと感じているのですが、登場人物へのリアクションを大切にしながら、リアルなお芝居を追求したいですね」

−音楽についてはいかがでしょうか。
「「Calling You」という代表曲に加え、クラシックやラップ、中東的な音楽、ソウルフルな音楽、ロックとジャンルを問わず使われているんです。役やシーンを象徴する楽曲が多いのですが、この作品の中にある多様性が表れていると思います」

ゆうなさんが演出するからこそ描ける世界観がある

−小山ゆうなさんの演出はいかがですか。
「歌稽古の2日目にはゆうなさんと役のバッグボーンについて話し合うことができて、俳優がこだわりを持つ部分も聴いてくださり、いち早く向かうべき方向が見えました。
また、稽古に入った時はもう僕の誕生日は過ぎていたのに、“誕生日だったって聞いたから”とわざわざ誕生日プレゼントをくれたんです。シャンパンを頂いたので、初日に開けようと思っています。改めて、嬉しかったですとお伝えしたいですね」

−ジャスミン役の花總まりさん、ブレンダ役の森公美子さんについてはどのような印象ですか?
「この2人以外はあり得なかったんじゃないかと思うくらい、役にフィットされています。歌われるナンバーも、花さんと公美さんから、役としてどう表現したらお客様に伝わりやすいのか、この方が面白いんじゃないかとかアイデアをたくさん仰るので、これまでの多くのご経験から出て来るものなんだろうと思っています。素晴らしい先輩方とご一緒できて光栄です」

−ジャスミンがバグダッド・カフェによってくることで、そこで生きる人々のグルーヴ感が変化していくのも見どころだと思います。カンパニー全体の雰囲気としてはいかがですか?
「自分が主張する部分と周囲に委ねるところを理解されている方が揃っていると思います。お芝居をより良くするためにお互いを尊重しながら話し合いつつ、皆さんお人柄が優しくて温かいので、笑顔の多い現場です」

匂い立つ空気を届け、一緒に砂漠の土を歩いていただきたい

−シアタークリエの臨場感ある劇場空間も作品にマッチしそうですよね。
「シアタークリエは僕にとって思い入れの強い劇場の1つです。『シークレット・ガーデン』『ビロクシー・ブルース』と、シアタークリエ10周年記念公演『TENTH(テンス)』で立たせていただいたのですが一番後ろの席までお芝居が届く劇場だなと感じました。演劇的で生っぽさを感じていただけると思います。『バグダッド・カフェ』は特に、作品から匂い立つ空気感や雰囲気を感じていただけると思いますし、お客様も砂漠の土を一緒に歩いているような感覚で観ていただけるんじゃないでしょうか」

−砂漠に佇む寂れたバグダッド・カフェは異世界感がありながらも、そこで多様な人々が交流を深めていく姿は、今の時代にも通じるものが多くありますよね。
「あると思います。ファンタジーの要素もありますが、これが浮世離れした話だとは思えないというか。人の心の機微を描いたハートフルな作品なので、観ていて温かな気持ちになれると思います」

撮影:晴知花

ミュージカル『バグダッド・カフェ』は2025年11月2日(日)から23日(日)までシアタークリエにて上演。11月28日(金)から30日(日)に愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール、12月4日(木)から7日(日)に大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、12月13日(土)から14日(日)に富山・富山県民会館で上演が行われます。公式HPはこちら

Yurika

映画を拝見して、「バグダッド・カフェ」の人々が変化していく様をミュージカルでどう描いていくのか楽しみになりました。シアタークリエの臨場感ある空間にぴったりハマる作品になりそうです!