「日本発のオリジナルミュージカルを世界へ」をテーマに、ワタナベエンターテインメントと劇作家・末満健一さんがタッグを組んで立ち上げたMOJOプロジェクト(Musicals of Japan Origin project)。第2弾となる『どろんぱ』は、作詞に森雪之丞さん、作曲・編曲・音楽監督に深澤恵梨香さん、ゲストコンポーザーに和田唱さんを迎え、 妖怪と人間の関わり合いを軸に、“親子の愛と絆”を描き出します。本作に出演する小池徹平さん、屋比久知奈さんにお話を伺いました。
「お祭り」のような、数々の妖怪が登場するエンタメ性の高さ

−本作の脚本を読まれた印象をお聞かせください。
小池「オリジナルミュージカルは何本かやらせていただいていますけれど、原作があるものが多かったので、本当に何もない状態からのオリジナル作品というのは珍しいなと思います。しかも和物ということで、今まであるようでなかった作品だなと思いますし、愛や家族といった普遍的なテーマを描きながらも、皆さん聴き馴染みのある妖怪がたくさん出てきて、歌も豊富にあるので、エンタメ性の高い、お祭りに近いような作品になるんじゃないかなと思いました。誰も原作を知らないからこそ、ドカンと大きなものを投げつけられるような、そんな作品になる印象でした」
屋比久「これまでは悲しい終わり方をする作品に出演することが多かったので、温かい気持ちで終われる作品だなというのが印象に残りました。色々な妖怪が出てきてエンタメとしてシンプルに楽しいし、わちゃわちゃして戦って、ドラマもあって、すごくミュージカルらしいミュージカルになるのかなと思いながら読ませていただきました。読み合わせをして音楽も一緒に聴いてみても脚本で読んだ通りの印象で、観にきてくれた皆さんが楽しんで帰っていただけるエンタメミュージカルになるんじゃないかなと思っているし、楽しんで帰っていただけるよう頑張りたいなと思います」
−お二人は初共演となります。
小池「屋比久さんはやっぱり『モアナと伝説の海』でのパワフルな歌唱が印象深いので、本作でも歌で支えてくれるだろうという期待が大きいですし、安心している部分もすごくあります。屋比久さんが作品の柱になってくれるだろうと思います。お会いしてみるとすごく温かさを持っている方で、空気が似ているので、夫婦役としても良い芝居を作っていけるだろうなと、ワクワクが増しました」
屋比久「オリジナル作品ということで不安もあったのですが、お相手役が徹平さんだとお聞きして、“あぁ良かった”と安心しました。今、唯月ふうかさんと別作品で共演しているのですが、ふうかさんにも“徹平さんなら大丈夫”と言われて、勝手に付いていきます!という気持ちでいさせていただいています」
−公式HPではPVやデモ音源が公開されており、本作の音楽の世界観も垣間見えてきています。本作の楽曲の印象はいかがですか。
小池「“日本版ディズニー”みたいな、エンターテインメント性が高いですし、歌での掛け合いもしっかりとあるので、大事な部分が流れないよう、言葉を伝えたいなと思います。ボリュームのある楽曲ばかりなので、聞き応えがあると思いますよ。屋比久さんとのデュエットも結構ありました」
屋比久「和テイストが印象的な楽曲が多いです。でも全部がそういうわけではなく、バラードもあれば、はちゃめちゃな曲も、デュエットでしっかり語るミュージカルっぽい楽曲もあります。聴いていても観ていても飽きないし、各キャラクターのシグニチャーソングもあるので、それぞれの役の色を楽しんでいただけると思います」
「存在意義を見つける姿を大切に」「唯一の人間を楽しみたい」

−それぞれが演じる役柄について教えてください。
小池「僕が演じるのは烟々羅という煙の妖怪で、河童や座敷童子といった妖怪とはジャンルの異なる、創作された架空の妖怪です。妖怪の中でも偏見があるような存在で、今の時代にも繋がるような、アイデンティティに関わるテーマを持っているキャラクターだなと感じています。爽子が自分の存在を認めてくれたことで、自分の生き方や存在意義を見つけていく姿を大切に描きたいです。煙のような儚さというのも交えつつ、素敵なキャラクターを末満さんが描いてくださったなという印象です」
屋比久「私は爽子という作品の中で唯一の人間を演じます。妖怪たちと一緒にはしゃげないので寂しくもあるんですけれど(笑)、だからこそ楽しい瞬間があるでしょうし、作品の中で担っている役割というのも大きいと思います。爽子は娘をさがしに妖怪の世界に足を踏み入れるのですが、爽子が来たからこそ生まれるドラマがあるので、自分の中で芯を見つけて、存在感のある女性でいられたらと思います。爽子として、妖怪たちに身を任せる瞬間、その場に身を置く瞬間も含めて、唯一の人間を楽しみたいです」
−既に末満さんと読み合わせをされたそうですが、いかがでしたか。
小池「夫婦でのシーンが多いなと改めて思いました。そのやり取りが後半に向けて物語の本質に迫っていくわけですが、前半はコメディ要素が強めなので、そのバランスが難しいなと思いました。コメディに振りすぎると本筋を見失わないかなと。僕は物語のストーリーテラー的な役割を担うことも多いので、自分の中でそういったことを意識することが多いんです。末満さんにもストーリーがブレないか質問させていただいたのですが、“大丈夫だと思います”ということだったので、まずは臨機応変にやってみることがこの世界に入り込むポイントなのかなと感じました。末満さんも初めてのキャストの方々ばかりということだったので、それぞれがどんな表現力を持っているのか、稽古前半はワークショップのような擦り合わせを多く持ちたいなと思っています。
末満さんは読み合わせの時、僕ら以外のキャラクター全役を演じ分けて読まれたんです。こういう時はサラサラ読む場合が多いのですが、しっかり読み分けていらっしゃったのでそれが面白くもありつつ(笑)、ご自身の中で各キャラクターのイメージがおありなんだなと思いました」
屋比久「徹平さんは役にピッタリだなという印象が増しました。自分自身はまだどういう形で行こうか決まっていなかったので、ナチュラルに臨みました。末満さんからは物語の前半は楽しんでもらって良いというお話があったので、立ち稽古では色々な方向性を試してみたいと思います。徹平さんとのシーンではもちろん引き出しは持っておく必要がありますけれど、そこまで決めすぎずに、徹平さんとのやり取りで生まれるものも多いだろうし、わちゃわちゃなシーンを楽しみたいなと思います」

−メインビジュアルにも末満さんの絵作りの美しさが感じられます。ビジュアル撮影での思い出や感想を教えてください。
小池「原作があってそのキャラクターの衣裳を着るということはありましたけれど、オリジナルキャラクターとしてここまでの衣裳というのはなかなかないです。でもスタッフチームも百戦錬磨の方々なので、ヘアメイクもすごくかっこいい煙のイメージを作り上げてくれましたし、衣裳もこの時点から舞台本番での軽量化を見据えていらっしゃって、“ここをこうしたら殺陣で動きやすいですか?”“ここはマジックテープにして着替えやすくします”と先回りして言ってくださったので、すごく信頼できるなと感じました」
屋比久「ポージングにしても衣裳にしても、末満さんの“こういうキャラクターだからこうしたい”というビジョンが濃く見えていらっしゃるというのを感じられました。巫女の衣裳を着ることはなかなかないので新しかったし楽しかったです」
人間の繋がりから生まれる、目に見えないもの
−本作は「日本発のオリジナルミュージカルを世界へ」をテーマに掲げたMOJOプロジェクトの第2弾作品となっています。オリジナル作品を魅力的に作り上げていくために、意識していることはありますか。
小池「原作が何もないところからここまでのミュージカル作品を創り出すというのはすごく珍しいと思います。和物のミュージカルなので、日本版キャストで海外に持っていっても面白いでしょうし、海外版キャストで海外の言葉でやるというのも面白いと思います。そういった未来を見据える上でも、オリジナルキャストとしてできる限りを尽くし、面白い作品を妥協せずに作りたいです。オリジナルだからこそ自由に創れますし、自分の役としてどうなんだろうと思ったことはどんどん意見を言って、創り上げていけたらと思います」
屋比久「私もこれまでは出来上がっている作品で、あまり手を加える余白が多くはない作品に携わることが多く、もちろんそれがクオリティを保っていく上で大事なことだと思うのですが、やる身としては窮屈に感じることもあったので、今回は創作に携わることができるのかなという気持ちがあります。意見を言うことを怖がらずに、みんなで創っていく意識を持つとオリジナルとしての意味があるかなと思います」
−様々な要素があるとは思うのですが、“多くの人から愛されるミュージカル”には何が必要だと思いますか?
小池「難しい質問ですね(笑)」
屋比久「難しいです(笑)。もちろんシンプルに楽しいのも大事だと思うのですが、どこかで共感ができると、また観たくなるミュージカルになるんじゃないかなと思います」
小池「お客様が楽しい、面白いと言ってくれることは一番でしょうけれど、意外と役者からも“この作品良いな、やりたい”と思われることも大事な気がします。僕はありがたいことに再演があると“この役をやりたい”と言っていただくことが多いのですが、そういった役者の思いもお客様にやる気として伝わると思うんです。演劇として役者にとっても魅力的な部分が必要なのかなと思います」
−本作は明るい作品ながら、“見えないものを信じられない”現代人に向けたメッセージも込められているように思います。
屋比久「今は人との繋がりが薄れているような気がしていて、それが怖いなと思うし、私はそうなりたくないなと感じます。本作は妖怪たちのお話ですが、妖怪が存在していたのは、人間たちが交流して、繋がって、伝承として伝わってきたから。愛も思いやりも優しさも見えないものに宿っているし、大事なものは見えないのかなと思います。妖怪が出てくる、自分たちとは遠い世界と思うかもしれませんが、意外に身近なテーマなんじゃないかなと思います」
小池「屋比久さんが言ってくれたテーマもありつつ、日本文化の趣というのをすごく感じられる作品だと思います。昔から言い伝えられている妖怪のような存在は世界各国あるでしょうけれど、こんなに種類があるのは日本だけなんじゃないかと思います。不思議な現象を妖怪に喩えたり、音のないものを音で喩えたり、日本人にしかない感性というのが素晴らしいなと僕は感じるので、今の令和の時代に妖怪をエンターテインメントとして魅せるというのが本作の注目ポイントですし、皆さんにぜひ観ていただきたいです」

MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project- 第2弾 ミュージカル『どろんぱ』supported by にしたんクリニックは2026年3月16日(月)から3月29日(日)まで日本青年館ホール、4月3日(金)から4月7日(火)までSkyシアターMBSにて上演。公式HPはこちら
妖怪の賑やかな世界に飛び込み、夫婦の関係性がどう変わっていくのでしょうか。日本らしい要素が詰まっているので、まさに世界に羽ばたいていく作品になると良いなと願っています!


















