KAAT神奈川芸術劇場から、2026年の気になるプロジェクト情報が解禁されました。今回は、長塚圭史芸術監督が演出を手掛ける『ジャングル』について、一般公募による出演者募集の詳細や、作品の背景、そして劇場が目指すビジョンについてご紹介します。
プロと一緒に作品創作できるチャンス!
KAAT神奈川芸術劇場は、長塚圭史さん(同劇場芸術監督)演出による『ジャングル』を2026年10月に上演すると発表しました。本作の大きな特徴が、劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」と、神奈川県在住・在勤の人々が共同で作品を創り上げる点です。
現在、このクリエーションに参加するメンバーの募集が始まっています。KAATのスタッフ、そしてプロの演劇集団である阿佐ヶ谷スパイダースとともに、「ジャングル」と呼ばれる舞台空間をイチから創り上げるチャンスです。
ちなみに阿佐ヶ谷スパイダースは、1996年に長塚さんを中心に結成され、現在は44名の劇団員を擁します。日常のズレや不安を、緻密な会話劇として描くスタイルは、演劇界で独自の存在感を放ってきました。『さらば黄昏』松本公演(2025年)でも市民公募の出演者と共演するなど、演劇の新たな可能性を模索し続けている劇団です。
プロの現場で、長期間にわたり演劇創作に没頭できるこの機会。表現者を目指す方や演劇に深く関わりたい方にとって、かけがえのない経験となることでしょう。気になる方は募集要項をご確認の上、ぜひ憧れの世界に飛び込んでみてほしいです。
募集要項
応募条件、募集期間、応募方法は以下の通りです。
応募条件
・神奈川県在住・在勤の方
・18歳~35歳までの男性(5名程度)
・稽古期間中、積極的に参加できる方(週5回~6回)
・9月28日~11月1日の期間中は、KAATが設定するお休み以外はすべて参加できる方
※出演料が支払われます。
※応募者多数の場合はオーディションが実施されます。日程は後日公開予定です。
※脚本の都合上、男性のみの募集となります。
募集期間
2025年12月19日(金)〜2026年1月30日(金)
応募方法
KAATホームページより指定の様式に必要事項を記入の上、応募フォームからお申し込みください。バストアップと全身の写真も必要になります。
『ジャングル』はどんな作品?
では、今回上演される『ジャングル』とは、どのような作品なのでしょうか。
原作は、ジョー・マーフィーとジョー・ロバートソンによる戯曲『The Jungle』です。彼らは「Good Chance」という劇場の創設者であり、すべての人の表現の自由、創造性、尊厳を促進するために活動しています。
物語の舞台は、フランス北部の街・カレーに実在した難民キャンプ、通称「ジャングル」です。国籍も宗教も文化も異なる難民たちが集まり、自分たちの手で作り上げた1つの「街」でした。本作は、その「ジャングル」での出来事をもとに、ヨーロッパ諸国で大きな社会問題となっている難民キャンプの実情を描いたフィクションです。
ロンドンのYoung Vicでの初演時には、多国籍なキャスティングと、臨場感あふれる美術セットが大きな話題を呼びました 。その後、世界各地で上演され、観客に強いインパクトを与え続けています 。
島国である日本に住むわたしたちにとって、難民問題や、多様な個が集まるキャンプの現実は、どこか遠い世界の出来事として捉えられがちです。 今回の公演では、年齢や職種など異なるバックボーンを持つ「阿佐ヶ谷スパイダース」のメンバーと、公募で集まった「神奈川県民」がともに演じることで、この多様な集団を表現しようとしています。
「演劇」という仕掛けを通すことで、遠くの問題を身近なものとして感じ、分断や不寛容といった日本社会が抱える喫緊の課題に対しても、鋭い問題を提起できる作品にする。そんなゴールに向かって、KAAT版『ジャングル』は走り始めています。
KAAT神奈川芸術劇場は「ひらかれた劇場」へ進化してゆく
このプロジェクトは、KAAT神奈川芸術劇場が掲げる「ひらかれた劇場」というコンセプトを象徴するものだと感じます。
2021年に3代目芸術監督に就任した長塚さんは、これまでも多様な舞台作品の創作と劇場運営を通じて、劇場を人々に対して開いていく活動を続けてきました。2026年度から芸術監督としての2期目を迎えるにあたり、本作は重要な役割を果たすことでしょう。
『ジャングル』において、国籍も文化も違う人々が生み出した街の物語を、多様な出自を持つ出演者たちが創作するプロセスこそ、劇場からのメッセージです 。制作過程を通じて、他者の考え方や生き方を知り、演劇や劇場をより身近な存在に感じてもらうことを目指しています。
「ひらかれた劇場」の取り組みは、出演者募集だけにとどまりません。障がいがある方も安心して観劇を楽しめるよう、字幕表示、難聴支援、音声ガイドなどのサポートを実施予定です。2026年1月からは、会場設営の補助や当日の運営をお手伝いするスタッフの募集も開始されます。
阿佐ヶ谷スパイダース、オーディションで選ばれる神奈川県のみなさん、KAATのスタッフ、そして劇場に足を運ぶ観客。すべての人々が関わり合い、1つの物語を創り上げる。2026年、KAAT神奈川芸術劇場には、どんな「ジャングル」が出現するのでしょうか? 舞台『ジャングル』は、2026年10月10日(土)から11月1日(日)まで、KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオにて上演予定です。公式HPはこちら
難民問題という重たいテーマですが、プロと市民のコラボレーションによって何が生まれるのか、思わずワクワクしてしまいます。わたしも参加したかった......!観る側としても、2026年の秋が待ち遠しくなるニュースでした。


















