1月10日から日生劇場で上演されるミュージカル『ISSA in Paris』。原案・作詞・作曲をモーリー・イェストンさん、演出を藤田俊太郎さんが手がけ、小林一茶の知られざる10年をファンタジックに描く世界初演作品です。開幕を前に、初日前囲み会見と公開ゲネプロが行われました。

格差の中で懸命に生きる民衆の姿を描く

囲み会見には、演出の藤田俊太郎さんと、本作に出演する海宝直人さん、岡宮来夢さん、潤花さん、豊原江理佳さんが登壇しました。

正体を隠して「ISSA」として活動するシンガーソングライターの主人公・海人(かいと)役を演じるのは、海宝直人さん。母の訃報を受けて母が滞在したパリに赴き、小林一茶について書かれた原稿を読み解いていきます。

「ミュージカルでは主たる人物が物語の中で実際に色々な出会いや経験を通して変化していくということが多いと思うんですけれども、基本的に海人は母が遺した原稿の中の小林一茶の旅路を見ていくので、ある意味、俯瞰して、傍観者として見ていくんです。こういうスタイルはなかなか珍しいと思いますし、どう成立させて、お客様に海人というキャラクターに想いを馳せていただき、最後のシーンに繋いでいくかというのが肝になっていくと思います。藤田さんから“ここでこういう風に(物語に)参加してくれ”と、すごくアイデアが散りばめられているので、お客様にとっても新鮮な出会いとして、この作品を楽しんでいただけるんじゃないかと思います」と語ります。

若き日の小林一茶を演じる岡宮来夢さんは「海人のお母さんが書いた原稿の中の小林一茶ということで、お母さんの思いも乗っかった一茶として、海人にとってどんな一茶でありたいかということも意識しながら稽古を進めてきました。舞台稽古の映像を見て、本当に素敵な作品になっているなと実感して、早く皆様にお見せしたいなと楽しみな気持ちでいっぱいです」と心境を明かします。

潤花さんが演じるのは、海人がパリで出会う女性ルイーズ。「オリジナル作品という、自由でありながら、自由の難しさを痛感しました。でもコロナ禍以降、人と人とがぶつかり合ったり向き合ったりすることが段々と減っている世の中で、カンパニーの皆さんと心で会話をして、この作品のため、一つの方向に一緒に向けているなと肌で感じたので、きっと本番期間も忘れられない日々になるんじゃないかと思います」とカンパニーへの想いを語りました。

一茶がパリで出会い、密かに革命運動にも身を投じているテレーズを演じる豊原江理佳さんは「全てのキャラクターに、その俳優さんらしさが凄く詰まっているんじゃないかと思っていて、そこが凄く魅力だなと思います。何回も(公演を)やりたいです」と既に再演を希望。これにはキャストの皆さんも「やろう!」と口を揃え、カンパニーの結束と充実が感じられました。

演出の藤田俊太郎さんは「お客様にはお1人お1人にとっての大事な言葉を思い出していただきながら、思わず口ずさみたくなるような楽しい音楽を劇場から持ち帰っていただけたら」と語り、「海人がお母さんの書いた物語に入っていくという仕掛けになっており、本来では出会わない価値観、出会えない時代にどんどんと出会っていく物語になっています。出会うはずのない人々が出会ったときに生まれる新しい価値観や喜びを表現している作品ですので、衣裳も全然違いますし、スタッフ総力戦で一瞬にして、魔法のように時代を変え、場所を変えます。様々な時代と場所の人たちに共通しているのは、抗ったり戦ったり格差の中で生きようと必死になっている人たちの姿、民衆の姿です。懸命に生きようとする人々の姿を海人、そして一茶が見た時に、どんな価値観に出会えるかというのが大きな主題です」と明かしました。

藤田さんの手腕が存分に発揮された本作ということで、岡宮さんは「稽古中からみんなの色々な意見を聞いてくださって、本当にみんなで創ったという実感があり、“藤田さんでよかった”と思いながら稽古を進めていました。そしてラストシーンを通した時に、あまりにも美しすぎて、“本当に藤田さんでよかったな”と思いながら過ごしていました。藤田さんらしさが光っていると思います」と力説。

さらにモーリー・イェストンさんが手がけた音楽について海宝さんが「オケ合わせの時、先にオーケストラの皆さんが演奏しているところに僕らが入って行ったのですが、素晴らしくて、音楽の力を感じました」と語ると、岡宮さんも「おいおいおい!待て待て!と、立ち上がりました!」と興奮を語ります。

海宝さんは「音楽監督・編曲の森亮平さんによって素晴らしいアレンジがされていて、聞きどころになっていますね。楽しみにしていただけたらと思います」、岡宮さんは「M1(1曲目)で言い過ぎじゃなく、来てよかったと思えると思います!」と魅力を語りました。

最後に“海宝さんに、今の思いを俳句で”というリクエストが来ると、なぜか岡宮さんを始めとするキャストが大喜び!海宝さんは「もう初日 ワクワクドキドキ 楽しみだ!」と勢いよく回答し、キャストから拍手と歓声が上がります。続いて“小林一茶役の岡宮さんも”とリクエストされると、岡宮さんは「一茶役って僕ですよね…?」と焦りしつつも「来たぞこれ 楽しみいっぱい 頑張るぞ」と回答し会見が締め括られました。

「武器で戦うだけが世の中を変える方法ではない」

舞台上に広がるのは、小林一茶の俳句が書かれた短冊の数々。これが時代を超える扉となって、現代の人々と江戸時代の人々が入り混じり、海人のヒットソング「TALK TALK TOKYO」が歌われていきます。リズミカルで現代的なナンバーに、新たなミュージカル作品としての期待が高まります。

俳句を引用して制作した「TALK TALK TOKYO」は話題になったものの、著名な俳句研究家である母・絹子の息子であることで、親の七光りと叩かれ、以降楽曲が書けなくなってしまう海人。母との距離もどんどん開いていく中、母は小林一茶の空白の10年を探し求めて向かったパリで、亡くなってしまいます。

母はなぜパリで研究を行ったのか。彼女の原稿を手にした海人はパリに向かい、原稿の中の小林一茶もまた新たな居場所を求めて、パリに向かうのでした。

現代を生きるシンガーソングライター大町海人を演じる海宝さんは、自然体な佇まいながら、冒頭「TALK TALK TOKYO」から圧巻の歌唱力で惹きつけます。自分らしさとは何か。母の息子としてではなく、自分らしい音楽を創るにはどうしたら良いのか。悩みもがき、苦しみながら小林一茶の旅路を辿っていく等身大な姿に、観客は自然と感情移入していくことでしょう。

一方、江戸時代を生きる若き日の小林一茶を演じる岡宮さんは、貧しいながらも俳句を追求し、生まれてきた意味を探し求めてパリに旅立つエネルギッシュで軽やかな人物像を好演。目を輝かせてパリに向かう一茶を、どこか羨ましく見つめる海人が印象的です。

一茶はパリで舞台女優として活躍しながらも裏で革命家として動くテレーズと出会います。豊原江理佳さん演じるテレーズは高音が印象的な楽曲を中心に、これまでの革命家のイメージとは異なる、柔らかさの中に強さがあるキャラクターに。

一茶とテレーズのロマンティックな楽曲は、モーリーさんらしいクラシカルな音色を楽しめます。

海人が現代のパリで目にするのは、差別撤廃デモを行う人々。ラップで力強く差別反対を訴える姿に、革命期のパリとは音楽的には対照的ながらも、理不尽な世の中を変えるために動く人々はいつの世もいるのだと実感させられます。

海人をガイドとして案内するルイーズも、デモに参加する一人。潤花さんは海人の旅路をサポートしながら、アーティストとして新たな音楽を探す海人のミューズともなっていくルイーズを温かに表現していきます。ダンスを通じて多くの人と繋がっていく明るさは、潤花さんご自身が反映されているようにも感じます。

セットや衣裳でまさに「魔法のよう」に、時代が混じり合っていく美しさ。さらに小林一茶の俳句の数々が、一茶と海人の旅路に重なり、俳句の奥深さにも触れることができます。

身の回りの些細な日常、景色を言葉に乗せ、心を映す俳句の世界。「武器で戦うだけが世の中を変える方法ではない」、貧しさや苦しみを救ってくれる言葉や音楽の力を信じる登場人物たちの姿は、劇場で物語に思いを馳せ、生かされきた私たち観客自身にも重なり、大きな共鳴を生み出していくことでしょう。

撮影:蓮見徹

ミュージカル『ISSA in Paris』は1月10日(土)から30日(金)まで東京・日生劇場、2月7日(土)から15日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホール、2月21日(土)から25日(水)まで愛知・御園座で上演されます。公式HPはこちら

Yurika

藤田さんの演出作品らしい、美しい色づかいや立体的に空間を魅せるセットに胸躍りました。海宝さんの劇場を支配するような圧巻の歌唱もたっぷりと堪能できます!!