1月10日(土)から東京芸術劇場プレイハウスにて上演される舞台『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』。村上春樹さんが1985年に発表した長編小説をもとに、フランスの世界的アーティスト、フィリップ・ドゥクフレさん演出・振付の元、主演に藤原竜也さんを迎えて舞台化されます。開幕を前に囲み取材とゲネプロが行われました。
「多くの方に受け入れられるような、良い作品に」

囲み取材には“ハードボイルド・ワンダーランド”の私役の藤原竜也さんと、“ハードボイルド・ワンダーランド”の司書と“世界の終り”の彼女の2役を演じる森田望智さんが登壇しました。
「フィリップさんがダンサー兼演出家ということで、村上戯曲ワールドにダンスが加わり、より幻想的な作品に仕上げられたんじゃないのかなと思っています」と意気込んだ藤原さん。本作が初めての村上作品出演ということで「三島由紀夫さんやシェイクスピア、井上ひさし先生ともまた違う、新しい発見、魅力のある作品だなと思います」と語ります。村上春樹さんも稽古場に訪れたとのことで、「最後には笑顔で帰って行かれました。1人でも多くの方に受け入れられるような、良い作品に仕上がっていると思いますので、皆さん期待してください」とアピールしました。

森田さんは本作が初舞台。「先輩方に凄くお世話になりまして、お芝居の細かい部分まで、“もっとこういうことを試してみたら”とアドバイスいただきました。お稽古場で皆さんが役を追求している姿を間近で見られて凄く刺激になりましたし、まだまだ頑張らなくてはいけないと思い知らされる毎日だったなと思います。個人的にはダンスもしていたので、ダンサーの皆さんのダンスが凄く好きです。フィリップさんならではの、そして村上春樹さん原作の、抽象的な、少しファンタジー要素のある世界観にうまく自分が溶け込めたらいいなと思っております」とコメント。

2役演じることについては「違いもありつつ、衣装が同じだったりするので、観てくださる方には同じなのかな?違うのかな?と思っていただける、微妙なニュアンスを出せるよう稽古しました。もしかしたら混ざり合う瞬間もあるかもしれないので、楽しみにしていただけたら。私以外にも2つの世界で2役を演じる人が多く重なっているので、そこも注目していただければ嬉しいです」と語ります。
「藤原さん演じる私もそうですが、司書と彼女、どちらの役も、過去に失ったものがあり、それを抱えたままどう生きていくかということに、稽古期間すごく向き合ってきました。どう生きていくかはキャラクターによって違いますが、そういったところにも注目していただけたら嬉しいです」と語った森田さん。
藤原さんは「とにかく精一杯頑張って、いいものを届けられるように。我々も楽しみながら頑張っていけたらいいなと思いますので、ぜひ皆さん劇場に来てください」とメッセージがおくられ、会見が締め括られました。
「進化とはそういうものです。つらく、さびしい」
開演前からピアノの生演奏が行われ、劇場内に静かに本作の世界観が満ちていきます。そして現れたのは、“世界の終り”で生きる門番と一角獣。幻想的な世界へと一気に誘われます。

周囲を高い壁に囲まれ、決して外には出られない街。そこで“僕”(駒木根葵汰さん。島村龍乃介さんとのWキャスト)は門番(松田慎也さん)によって“影”(宮尾俊太郎さん)と切り離され、古い図書館で美しい少女(森田望智さん)の助けを受けながら一角獣の頭骨に収められた夢を読む仕事を与えられます。


いずれ“影”は死に、心を失うことを知った“僕”は、“影”を救うため、街から脱出する方法を探っていきます。
一方、“ハードボイルド・ワンダーランド”の世界では計算士として働く“私”(藤原竜也さん)が謎の博士(池田成志さん)に呼び出され、博士の孫娘(富田望生さん)の案内の元、博士の研究室へ。


長い長いエレベーターを経て、ビルの下の滝を潜り抜けるという不思議な体験をしたのち、情報を暗号化する「シャフリング」を依頼された“私”。博士の奇妙な研究に巻き込まれ、“私”の人生は大きく変化していきます。

「人は影から逃れて生きることはできない」。しかし影から逃れ、心を失った人々は、“世界の終り”で平穏に、静かに暮らしています。影とは何なのか。宮尾俊太郎さんがダンスと共に、その存在を印象的に描いていきます。

“世界の終り”ではバレエを中心としたダンスが多く取り入れられ、柔らかでファンタジックな世界観に。ダンサーたちの織りなす美しい世界観が、本作の大きな見どころの1つでしょう。

“ハードボイルド・ワンダーランド”では映像を活用しながらよりリアリスティックな世界が描かれつつも、博士役の池田成志さん、博士の孫娘・ピンクの女役の富田望生さんを中心に癖のある、謎めいたキャラクターが“私”を翻弄します。

森田望智さんは司書と彼女の2役を、声色を変えて演じ分けながらも、世界が混じり合っていくにつれて、役の境目が曖昧になっていく瞬間も。

藤原竜也さんは突如として“世界の終り”が迫るという緊迫した中で、憤りつつも「やれやれ」とどこか落ち着きのある“私”を、魅力的に演じていきます。至って普通の人間に見える“私”ですが、その深層心理には大きな喪失が。それはどこか、コロナ禍や急速に進むデジタルの世界によって、何かを失いつつある現代社会の私たちにも重なります。

ネット上では有象無象の言葉や感情が飛び交うのに、現実世界では目を合わせず、すれ違っていく人々。今、私たちは心を失いつつあるのかもしれません。1985年に出版された物語ですが、2026年に上演されることに大きな意義を感じます。本作を通して、“私”や“僕”と共に、心と向き合い、生きることに向き合うひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

Sky presents 舞台『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は2026年1月10日(土)から2月1日(日)まで東京芸術劇場プレイハウスにて上演。その後、宮城・愛知・兵庫・福岡公演が行われたのち、シンガポール・中国・イギリス・フランスにてワールドツアーが行われます。公式HPはこちら
バレエの優雅で柔らかな空気感と、“世界の終り”のファンタジックな世界観がとてもマッチしていて感激しました。物語の展開は分かりやすく描かれているので、難しい作品ではないかと不安になられている方にも、楽しんでいただけるのではないかと思います!小説を読んでいた時とはまた別の解釈も生まれるような、新たな発見もあり、何度も観たくなりました。


















