ミュージカル、演劇、ドラマ、映画、どの作品にもかかせないのが、魅力的な主人公。多くの人々から愛される、愛すべき有名なヒロインはたくさんいます。そんな中、一風変わったユニークで刺激的なキャラクターで人気を集めたのが、ドラマのタイトルであり主人公の『FLEABAG(フリーバッグ)』です。今回は、彼女と作品の魅力に迫ります。

強烈だけど、人間味を感じるフリーバッグ

性欲が強く皮肉屋の主人公フリーバッグ。亡き親友と営んでいたお客の来ない小さなカフェで働きながら、虚勢を張る日々。怒りと悲観に支配され、周囲の人とぶつかりながらも生きていきます。そんなフリーバッグの素顔が少しずつ明かされ……。

主人公のフリーバッグは、お世辞にも好印象とは言えないキャラクター。下品な言葉は使うし、皮肉ばかり。それでも、見ているといつのまにか彼女の人間らしさに愛着が湧いてきてしまいます。

このドラマの面白いポイントはキャラクターだけではないのです。個性的なキャラクターもさることながら、設定もかなりユニーク。例えば主人公のフリーバッグですが、フリーバッグはニックネームで、最後まで名前が明かされることはありません。しかも、「フリーバッグ」というのは、「薄汚い人」や「みすぼらしい」などの意味。

また、ストーリーの途中で、観ているこちら側に話しかけてくる演出もたびたび入ります。名前のない主人公や話しかけてくる演出で、感情移入しにくいはずのぶっ飛んだキャラクターに次第に親近感がわいてくるのは、そのエキセントリックな手法に隠されているのでしょう。

主人公は、なんと脚本兼プロデューサーの天才クリエイター

主演・脚本・プロデューサーを見事に務めたのは、フィービー・ウォーラー=ブリッジさん。凄すぎる彼女の正体、気になる人も多いのではないでしょうか。お下品な役どころを描き演じたフィービー・ウォーラー=ブリッジさんですが、なんと良家のお嬢様で、名門校の出身。

2019年のエミー賞で、『FLEABAG(フリーバッグ)』から最優秀主演女優賞、最優秀脚本賞、最優秀コメディシリーズ作品賞の3冠を受賞。フィービー・ウォーラー=ブリッジさんの才能が世界に知れ渡る事になりました。本作だけでなく、人気ドラマ『キリング・イヴ』や映画『007』シリーズの製作にも携わるなど、活躍の場を広げています。

はじまりは小さなひとり芝居の舞台

本場イギリスでは、『FLEABAG(フリーバッグ)』が放映された当時、劇中で着ていた洋服が完売したり、出てきた商品の売れ行きがアップしたりフリーバッグ旋風を巻き起こすほどの影響を与えました。

そこからイギリスに留まらず世界でも人気を集めることになった本作ですが、はじまりは2013年に開催された世界最大と言われる芸術祭「エジンバラ・フェスティバル・フリンジ」でのひとり芝居の舞台でした。この舞台の成功により、ドラマ化される事になったのです。ドラマ版、舞台版の両方を観た方の感想を見るとどちらもそれぞれにしか出来ない良さがあるとのこと。舞台版もすごく気になってしまいます。

まだ観たことがないという方、『FLEABAG(フリーバッグ)』の不思議な魅力をぜひ体験してみてください。

菜梨 みどり

最初はコメディタッチの強い下品さが目立ちますが、終盤にかけて徐々にシリアスな側面も見えてくるヒューマンドラマになっていきます。そこに見えてくるのは、フリーバッグの弱さ。皮肉や怒りや悲観の根源には、深い喪失感や自己嫌悪がありました。 その絶妙な人間の心理を上手く描いた作品。そんなところも演出のテクニックやキャラクター設定と合わせて、観る人の心をグッと掴むポイント。 フリーバッグのキャラクターについて書きましたが、実は周りにいるキャラクターたちもとっても濃いので、周りとの関係性も見どころです!