演劇やミュージカルを観に行った時、場面から場面の移り変わりに注目したことはありますか。舞台転換にはいくつかの種類があり、それぞれが作品や観客の感情に及ぼす効果も異なります。舞台転換の基本用語である「暗転」「明転」「トランジション」について解説し、作品が作られる舞台裏を覗いてみましょう。
舞台転換とは?
舞台転換とは、演劇やミュージカルなどの舞台芸術において、場面の変化によって、舞台セットや照明・音楽などを変えることです。セットが変わらず場面のみが変わる場合は「場面転換」という言葉を用います。
舞台転換のほとんどは上演中に行われるため、観客の集中力や作品の世界観を損ねないよう、さまざまな工夫が凝らされています。
転換のスピードが問われるのはもちろんのこと、出演者やスタッフがケガをしないよう安全性への配慮も欠かせません。
そのため、本番前には、お芝居の稽古と同じように「転換稽古」と呼ばれるリハーサルが行われます。
転換稽古では、時間内に舞台転換ができるか、スタッフや俳優の動線に危険などの問題がないかを念入りにチェックし、カンパニー全体が本番に臨みます。
舞台転換にはどんな種類がある?
舞台転換には、単に場面や舞台が変化するだけではなく、さまざまな手法が存在しています。ここからは、一般的に使用されることの多い3つの手法について紹介します。
舞台転換用語①暗転
暗転とは、その名の通り、照明を落とした状態で舞台転換が行われることです。
たとえば死んだ役の俳優が舞台からはける(退場する)際や、時間の経過を表す際などに使用されやすい手法です。
その際に俳優は、舞台上に貼ってある「蓄光テープ」などの明かりや、舞台袖に待機しているスタッフを頼りに移動します。本番前のリハーサルでは、暗転時の移動の際に危険がないか、どのくらいの時間を要するかなどを念入りにチェックしています。
また、緞帳(どんちょう)がある大劇場での演目では大がかりな舞台転換も多く、完全に照明を落としてしまうと事故が起きる可能性も。そのため、緞帳のすぐ後ろ側に吊られている「暗転幕」を降ろし、舞台上に作業用の照明を点けて場面転換する方法が取られる場合があります。
そのほか、舞台と客席の照明を消して、暗い状態のままで緞帳を上げて開幕すること、または緞帳を下げることを「暗転緞帳」と言います。
ここで注意したいのが、「暗転」とは、ただ「暗くなる」という意味ではないことです。あくまでも、舞台上が暗い状態で場面が転換するということを覚えておきたいものです。
※緞帳(どんちょう)……舞台と客席を仕切る幕のことで、上下に昇降するもの。左右に開閉する幕のことは引幕(ひきまく)と言う。
舞台転換用語②明転
暗転とは反対に、照明を付けたままの明るい状態で行う場面転換を「明転(めいてん)」と言います。
これは舞台転換そのものにストーリー性を持たせる演出や、役者が舞台とともに動くことで
時間の経過を表現する効果などが期待できます。また、舞台転換の様子を観客に見せることで、舞台の世界に観客を引き込んだまま次の場面へ物語を進めることも可能です。
暗転と比べると、より舞台転換に演出やストーリー性を持たせる手法だと言えるでしょう。
舞台転換用語③トランジション
場面転換・舞台転換をはじめ、状況の変化を包括的に表現する言葉として「トランジション(Transition)」があります。
これは、英語で「移行」や「変化」などの意味を持つ単語です。
映像作品の編集作業などでは「場面と場面の間を繋ぐための効果(エフェクトなど)」の意味があり、ビジネスにおいては仕事上で期待される役割や行動の変化を指します。
演劇やミュージカルでは、単に舞台を転換させるだけではなく、場面の変化によって観客の感情に影響を及ぼすための演劇的手法を指す言葉として使われています。
たとえば、転換が行われやすいセットの設計、舞台転換に適した照明や音楽の選定、衣裳の着替えがあれば着替えのしやすい工夫などが挙げられます。
また、作品によっては大道具スタッフではなく、俳優が舞台転換を行うこともあります。その際の身体表現なども工夫される要素のひとつです。
優れたトランジションを生み出すために、演出家、俳優、照明や音響、美術や衣裳スタッフなど、あらゆるポジションのスタッフやパフォーマーが尽力しているのです。
元舞台俳優として、転換稽古の緊張感や舞台裏の工夫を数多く経験してきました。観客の皆さんには、舞台転換にも注目していただくことで、舞台芸術の奥深さをより感じていただけるのでは?と考えています。


















