脚本:ハン・ジョンソクさん、作曲:イ・ソニョンさんによる大ヒットミュージカル『レッドブック 〜私は私を語るひと〜』。19世紀ロンドンを舞台に、小説を書くことで社会の偏見と闘う女性アンナを描いた本作は2018年韓国初演から大きな共感を呼び、数多くの賞を受賞しました。本作の日本版初演に向け、咲妃みゆさん、小関裕太さんらが製作発表会見に臨みました。

「愛は天気のように」「私は私を語るひと」「あらま!そんな!すごい!」3曲を披露

製作発表会見には、本作に出演する咲妃みゆさん、小関裕太さん、花乃まりあさん、エハラマサヒロさん、中桐聖弥さん、加藤大悟さん、田代万里生さんと、演出を手掛ける小林香さんが登壇しました。

まず歌唱披露が行われ、アンナ役の咲妃みゆさん、ブラウン役の小関裕太さんによる「愛は天気のように リプライズ」を披露。愛が変化していく様を軽やかに歌います。

続いて咲妃みゆさんがタイトルロールにもなっている楽曲「私は私を語るひと」を披露。“何も理解されなくても 誰にも愛されなくても 私には私がいる”。咲妃さんの想い溢れる歌声に乗せて、アンナが何よりも自分自身を信じ、立ち上がる姿が浮かび上がってきます。

最後にローレライ役の田代万里生さん、ドロシー役の花乃まりあさん、アンサンブルキャストによる「あらま!そんな!すごい!」が披露されました。女性たちが執筆した雑誌「レッドブック」が出版され、女性たち、そして男性も、人々を熱狂の渦に巻き込んでいく様が描かれた楽曲です。

禁欲と節制、礼儀と道徳が重んじられたヴィクトリア朝時代に、徐々に変革が訪れる予感を感じさせ、歌唱披露が終了しました。

自分が自分の背中を押してくれる−他者への理解やリスペクトを得られる作品に

“官能的な小説を書くことで社会と闘う”主人公アンナを演じる咲妃みゆさんは、「自分自身、色々な感情に直面する役」と語り、「コメディ要素もふんだんに盛り込まれた、楽しんでいただける作品にはなっているんですけれども、根底に流れているのは、他者への尊厳を尊重すること、そして他者への理解を深めた先に、見えてくるものというところが強いかなと思います。アンナ役を演じさせていただくにあたってこの作品と向き合った時、アンナもそうですけれども、登場人物それぞれが人生の中で葛藤し、乗り越えるべき壁に向き合っているのがこの『レッドブック』という物語だと感じました。この作品に込められている他者への理解の心を大切に演じたい」と意気込みます。

真面目一筋で「紳士」であることしか知らない新米弁護士ブラウンを演じるのは、小関裕太さん。昨年本作を韓国で観劇したことを明かし、「たくさんのお客様が待ち遠しく幕が開くのを待っている瞬間を見ました。隣にいた男女6人組くらいの学生さんたちが感動したり笑ったり涙したりしているのを横目に見ていて、こういう渦が韓国にあったんだ、これが日本にやってくるんだなと、とても楽しみになりました。日本初演にあたっては様々な壁が待っているかと思いますが、それを超えて、素敵にお届けできるように頑張りたい」とコメント。

ブラウンという役柄については「本当に真面目に、紳士でいなければいけないと自分に課している部分があるんですけれど、自由奔放で自分を持っているアンナに出会ったところから自分のペースを崩されて、紳士として接しても空回りして…というのを繰り返すので、すごくチャーミング」と魅力を語ります。

花乃まりあさんが演じるのは、女性文学会「ローレライの丘」の会長で息子を夫に奪われてしまったドロシー。アンナ役の咲妃みゆさんとは宝塚歌劇団であり、本作が退団後初共演となります。「10代の頃からのご縁なんですけれども、彼女は音楽学校時代にはよく“天才演劇少女”と呼ばれていまして。でもあれから時が経って思うのは、本当に努力の天才だなと。いつも活躍を楽しみに見ていたので、まさかこういう形で共演させていただけるとは思っておらず、機会をいただけて凄く嬉しいですし、音楽学校時代にもここまでお芝居する機会はなかったので、それもすごく楽しみです。楽しい場面も、ちょっとほろっととくる場面もありますので、関係性を良い形で反映させられたら」と語りました。

エハラマサヒロさんが演じるのは“ロンドンで最も影響力のある文学評論家、偽善者ぶって卑劣な人物”ジョンソン。エハラさんは「最初にお話をいただいた時、お客さんから嫌われてしまうかもしれないけれども、違う表現がエハラさんはできると思いますと言っていただきまして。ただ悪い奴ではなく、チャーミングな一面、人間的な一面も楽しめるように作っていければ」と意気込みます。

見栄とはったりを効かせるカッコつけの双子兄弟・兄ジャック役を務めるのは中桐聖弥さん。加藤大悟さん演じる弟アンディとブラウン、3人で「紳士三銃士」を名乗る役柄です。中桐さんは「お二人ともテレビ・舞台と幅広く活躍されている方なので、三銃士の輪の中に入れていただけて光栄です。まだまだ知らない世界を知っているお二人なので、『レッドブック』を通して何か吸収できたら」とコメント。

アンディ役の加藤大悟さんは、「優しく温かい気持ちになって帰っていただける作品だと思います。コメディでもあり、ミュージカルだけれど、色々な表現を楽しんでいただけると思います。これから積極的にカンパニーとの仲を深めて、良いカンパニーだなと思ってもらえるようにしていきたい」と意気込みを。

“変に優雅で気品のある女装男性”ローレライ役を演じるのは田代万里生さん。「ローレライ役をキャスティングする際、若き日の美輪明宏さんみたいな人を探そうということで、なぜかたどり着いたのが田代万里生だったと聞きました(笑)。僕にとっては意外なのですが…。他にも坂東玉三郎さんや市川染五郎さんなど色々なお名前を伺って、日本版のローレライ像を僕の中で今作っているところです。お三方とも芸を極めたり、何かに対して他から見たら常人ではないようなのめり込み方だったりがあると思います。そしてローレライが女装するまでに至った理由、思いの深さというのを感じていると、僕も音楽というものを通じてのめり込んだり突き詰めて行ったりしているところがあるので、そこが共通点なのでは」と語ります。

また「私は私を語るひと」という楽曲の中で歌われる“私には私がいる”という歌詞に触れ、「ちょっとでも迷いがあったり、悩んでいる人は、この作品を見てそっと自分が背中を押してくれる、そして他者への理解やリスペクトをたくさん得られる作品だと思います」と語りました。

演出を手掛ける小林香さんは本作について「言葉を大切にしているミュージカルなんですけれども、今生活している中では、匿名性の高い言葉が強い勢いで氾濫していると感じます。匿名性の高い言葉の濁流の中では、結果として強い言葉が生き残っていて、弱い人の小さい声はかき消されてしまいますし、賢くて奥ゆかしい方々は誰かを傷つけたくないと思って口を閉ざすと思います。
この作品でアンナ・ノックという女性は、自分の言葉で語ることから人生を自分のものにしていきます。ノックというのは珍しいファミリーネームだなと思ったのですが、戯曲を最後まで読んでみて、壁を叩いて崩していく、扉を開けていくノックだろうなと感じました。韓国で原作のジョンソンさんとお話したら、そうだとおっしゃっていました。自分の言葉で人生を取り戻していく、想像する力を生きる力に変えていける人は本当に勇気があると思います。その力はきっと私たちも持っていて、男性・女性関係なく、全ての皆様がその力を持っていると思いますので、自分にとってのレッドブックとは何か、自分のレッドブックに何を書きたいかと思いを馳せていただけるよう、創れたら良いなと思います」と思いが語られました。

キャストが一堂に会した製作発表会見を経て、咲妃さんは「皆さんと一緒に創作に励めることがより一層、楽しみになりました。早く日本のお客様、そしてもしかしたら海外からも足を運んでくださる方がいらっしゃるかもしれません。皆様に喜んでいただける作品をお届けできるよう、誠心誠意努めてまいりたいと思います」、小関さんは「既にたくさんのファンの方がいて、たくさんの渦を作ってきた作品がようやく日本にやってきます。皆様に心から楽しんでもらえるよう、そして心に残るように努めていきたいと思います」と意気込み、会見が締め括られました。

撮影:山本春花

ミュージカル『レッドブック 〜私は私を語るひと〜』は2026年5月16日(土)から5月31日(日)まで東京建物 Brillia HALL (豊島区立芸術文化劇場)、6月27日(土)から 6月30日(火)まで森ノ宮ピロティホール、7月4日(土)から7月5日(日)まで御園座にて上演されます。公式HPはこちら

Yurika

突発的で強い言葉が残ってしまう現代に、自分の「言葉」が失われていくような感覚があります。アンナが言葉を通して人生を掴んでいく姿は、多くの人に勇気を与えてくれるのではないかと思います。