『ロミオとジュリエット』と聞くとはるか昔のラブストーリーに感じる人も多いかもしれません。しかし、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』では登場人物達が携帯を持ち、ロックな服装に身を包み、激しいダンスやポップな音楽の数々…。シェイクスピアは難解そうで苦手、という方にこそ見ていただきたいミュージカルです。(2021年5月・ TBS赤坂ACTシアター)
キレキレダンスにボイパまで!?現代版演出×シェイクスピアの巧みな言葉たち
大学時代、授業でシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を1年間かけて原文で読み込んだ筆者からすると、思わず「おぉ…」と声が漏れてしまいそうなほど現代版にアレンジされたミュージカル『ロミオ&ジュリエット』。なにしろ彼らはメールで連絡を取り合い、ダンス大会ばりにキレキレに踊り、ボイパまで披露するのです。20名以上のダンサーが繰り広げるダンスは、迫力満点!現代らしい若者の力強さを感じさせます。
一方で、楽曲の歌詞にはシェイクスピアが紡いだ巧みな言葉たちが健在。かの有名な「どうしてあなたはロミオなの」や「恋の翼に乗って全て乗り越えた」「薔薇という名の花は名前を変えても香りは変わらない」などロマンティックで美しい言葉たちが音に乗せ劇場を恋の美しさで染め上げます。 耳に残る美しい旋律の楽曲も本作の魅力の一つ。また、本作には「死」という役が登場し物語冒頭からラストまで、ロミオたちの死への歩みを表現しています。原作には「死」という役は存在しませんが、「愛と死」は『ロミオ&ジュリエット』の大きなテーマ。シェイクスピアの別作品では「時」が登場することもあり、象徴的なテーマを役として現すのはシェイクスピア作品にぴったり。『マクベス』の魔女が唱える「綺麗は汚い」が本作の楽曲として登場するのも興味深いポイントでした。
ミュージカルの新星×実力派が名作に挑む!
今回のミュージカル『ロミオ&ジュリエット』はWキャストとなっており、筆者が観劇したのはロミオ・甲斐翔真さん、ジュリエット・伊原六花さんの回。甲斐さんは以前ミュージカル『マリー・アントワネット』でフェルセン役を演じられた時誠実ながらも少し頼りない青年のイメージでしたが、今回のロミオでは力強い歌声が印象的でした。今後もミュージカル界の新星として進化を続けることでしょう。
登美丘高等学校ダンス部の印象が強い伊原六花さんですが、可憐なジュリエットを見事に表現。歌声も澄んだ美しい歌声で驚きました。歌声やセリフにもう少し表現力が加われば、さらに豊かなジュリエットとなるのではと期待が高まりました。
一方、ミュージカル界のレジェンドでもある岡幸二郎さん演じるヴェローナ大公は圧巻の存在感。出演シーンが少ないながらもどっしりと劇場を包む一声で観客の視線を奪います。また、「死」という重要な役どころを演じるのはKバレエカンパニーのプリンシパルにも就任した堀内將平さん(小㞍健太さんとのWキャスト)。若者たちの恋物語にジリジリと忍び寄る死の恐ろしさを表現するコンテンポラリーダンスは必見です。
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は原作と異なる設定や演出も多いので、ぜひ原作版の舞台も観劇してみてくださいね。レオナルド・ディカプリオが美しい映画版『ロミオ&ジュリエット』もおすすめです! ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は6月13日までTBS赤坂ACTシアターにて行われ、その後大阪公演・名古屋公演が予定されています。また、6月5日と6日にはライブ配信が決定!初代ロミオ役である城田優さん、山崎育三郎さんからのスペシャルメッセージもありますよ。ライブ配信の詳細はこちら