2026年9月21日(月・祝)から10月4日(日)、東京・池袋の東京芸術劇場 プレイハウスにて舞台『リア王』が上演されます。57歳という年齢で老齢の大役・リアに挑戦するのは、映像から舞台など、幅広いジャンルで活躍する名優・内野聖陽さんです。

シェイクスピア悲劇の最高峰と言われ、近年特に上演されることの多い本作について、今回の舞台の見どころと、2026年に上演される『リア王』たちについてご紹介します。

内野聖陽主演『リア王』の見どころ

『ハムレット』から約10年、内野聖陽が挑む”老い”の悲劇

ブリテンの王・リアは、老いのために3人の娘たちに領地を譲ることを決め、彼女たちに自分への愛を語らせます。上の二人の娘たちは甘い言葉でリアから領地を譲り受けますが、誠実な末娘・コーディリアだけは饒舌な愛の言葉を生み出せず、リアの怒りに触れて国を追放されてしまいました。

このリアの判断が、のち悲劇の始まりとなるのです。

2017年、48歳の時に『ハムレット』に出演した内野さん。悩める若きハムレットを演じたその約10年後、今度は58歳という若さで老齢のリア王を演じます。

ハムレットとリアという極端な、しかしそれぞれにシェイクスピアを代表する主人公を、わずか10年の間に演じ分けるという内野さんの挑戦は、演劇ファンなら思わず興味を引かれるのではないでしょうか。

舞台『リア王』公式ホームページにて、内野さんは「この企画を立ち上げた時はこんなにも『リア王』ラッシュが続くとは思いもよりませんでした。『リア王』には現代に生きる我々が直面している問題が多いからなのではと思ってます。国のトップの覇権争い、親子・血縁・側近のディスコミュニケーション、そして、老いや健康寿命の問題などなど…またリアかよと思われるかもしれませんが、森新太郎演出のリアは、絶対に面白くなる予感がします」とメッセージを残されています。

超高齢社会である、現代の日本。誰もが避けては通れない“老い”というテーマに、内野さんはどう向き合っていくのでしょうか。


実力派俳優陣が演じる、愛に翻弄される登場人物たち

内野さん演じるリアを取り囲む個性的な登場人物たちを、名実ともに知られる名優たちがしっかり固めます。

リアの重臣で、やがて悲惨な結末へ巻き込まれていく伯爵・グロスターには、大河ドラマからアニメ、舞台まで幅広く活躍する山路和弘さん。

グロスターの嫡男で弟に陥れられるエドガーを演じるのは井之脇海さん、エドガーの弟で私生児のエドマンドを演じるのは前田公輝さんです。正反対の兄弟を、フレッシュな魅力を持つおふたりがどう演じるのか楽しみです。

そして『リア王』を語る上で外せないのが、ゴネリル、リーガン、コーディリアの3人姉妹。長女ゴネリル、次女リーガンは、劇中で1人の男性の愛を巡って争います。それぞれに違った悪女としての個性が光り、とても魅力的な役だと言えるでしょう。

ゴネリル役を演じるのは、劇団はえぎわ所属の川上有里さん。そしてリーガンを演じるのは、てがみ座、こまつ座、木ノ下歌舞伎などさまざまな劇団の好演に出演する内田慈さんです。

そして父・リアを救うために、ふたりの姉に戦いを挑む三女・コーディリア役には、清水くるみさんがキャスティングされました。清水さんはリアに寄り添う道化の役も演じることが決まっており、異なるふたつの役をどう演じるのか注目が高まります。

そのほか、和田正人さん、大山真志さん、永島敬三さんのほか、リアの忠臣ケント役を杉本哲太さんが務めます。多くの登場人物が、それぞれに異なる形で愛に飢え、渇望し、そして転落していくのです。

ある意味でとても人間らしい登場人物たちを、実力派のキャスト陣がどう演じるのか。期待が高まります。

森新太郎演出×松岡和子翻訳で紡ぐ『リア王』

本作で演出を務めるのは、森新太郎さんです。シェイクスピアなどの古典劇はもちろんのこと、ミュージカルなど幅広い作品の演出を手掛けている森さん。

2026年5月には、吉田羊さん主演の『リチャード三世』(パルコ・プロデュース2026)の演出も控えています。2025年10月には、正門良規さん(Aぇ! group)主演の『十二夜』、2024年12月には草彅剛さん主演の『ヴェニスの商人』など、シェイクスピアの名作を数々上演し、高い評価を受けました。

主演の内野さんとは、『東海道四谷怪談』『THE BIG FERRAH』に続く3作目のタッグです。内野さんとシェイクスピア作品に挑むのは今回が初めてですが、今までおふたりが築き上げてきた信頼関係は、今回の作品作りにどのように作用するのでしょうか。

そして、本公演は松岡和子さんによる翻訳で上演されます。松岡さんは、1993年に『間違いの喜劇』の翻訳から、シェイクスピア作品の全作品翻訳を始めました。2021年には全戯曲を完訳し、坪内逍遥や小田島雄志氏に次ぐ国内で3人目の快挙を達成されています。

シェイクスピア作品の中でも特に名言の多い『リア王』。本公演では、松岡さんの紡ぎ出す美しい言葉を楽しめるでしょう。

2026年は『リア王』ラッシュ!他にはどんな公演がある?

2026年は、内野さん主演の『リア王』のほかにも、異なるカンパニーによる『リア王』が上演されます。

ここからは、2026年に上演される『リア王』についてご紹介します。

彩の国シェイクスピア・シリーズ 2nd Vol.3『リア王』

2024年5月、俳優・演出家の吉田鋼太郎さんが新たに立ち上げた「彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd」。シェイクスピア全作品の上演を達成した蜷川幸雄氏の意志を受け継ぎ、シェイクスピア作品の上演を続けています。

その第3弾となるのが、2026年5月5日(火・祝)から彩の国さいたま芸術劇場大ホールで上演される『リア王』です。

なんと、本公演では吉田さん自らがリアを演じます。そのほか、第2弾の『マクベス』でタイトルロールを演じた藤原竜也さんがエドガーを演じることが決定しています。

さらに、蜷川氏の演出による『終わりよければすべてよし』でヒロインを務めた石原さとみさんが、3姉妹の長女・ゴネリルを演じることが決定しており、主演の吉田さんだけではなく共演者にも豪華俳優陣がそろい踏みです。

今回演出を務めるのは、長塚圭史さん。本シリーズでははじめて演出を担当するということで、前回の『マクベス』、前々回の『ハムレット』とはまた違った名作が生まれる予感がします。

彩の国シェイクスピア・シリーズ 2nd Vol.3『リア王』は、2026年5月5日(火・祝)から5月24日(日)まで彩の国さいたま芸術劇場大ホールで上演。そのほか、宮城、愛知、大阪、福岡など4都市を巡回します。詳しくは公式ホームページをご覧ください。

シェイクスピア×中村芝翫『リア王』

2026年に開場101年目を迎える新橋演舞場。この歴史ある劇場で、歌舞伎役者の中村芝翫さんが『リア王』に挑みます。

中村芝翫さんがシェイクスピア作品に出演するのは、今回が3度目。過去には2018年の『オセロー』、2022年の『夏の夜の夢』といった、それぞれにまったく違う味わいの作品に出演されてきました。

そのすべての公演で演出を務め、芝翫さんとタッグを組み続けてきたのは、井上尊晶さん。井上さんは、蜷川氏の演出助手を務めてきた経歴をお持ちです。蜷川氏の没後10年にあたる2026年に、氏の作り上げるシェイクスピア作品を長年見つめ続けてきた井上さんが『リア王』という大作に挑みます。

また、本公演の上演台本は石井美樹子さんによる新訳です。2021年に四大悲劇の翻訳が完成したばかりということで、みずみずしい言葉の数々を堪能できるのではないでしょうか。

他の『リア王』に負けず劣らず、共演者も非常に豪華です。長女ゴネリルには、TVドラマ『ナースのお仕事』シリーズをはじめ、数々の舞台で活躍中の松下由樹さん。

エドガー役は映画『るろうに剣心』シリーズで知られる三浦涼介さん。

次女リーガンには元宝塚歌劇団雪組トップ娘役の朝月希和さん。

そして三女コーディリアには乃木坂46出身で、さまざまなミュージカルに出演されている井上小百合さんがキャスティングされています。

さらに、エドマンド役にはテレビや舞台で幅広く活躍されている大野拓朗さんなど、数々のジャンルで活躍する俳優陣が集結しました。中村芝翫さん主演の『リア王』は、2026年9月6日(日)から22日(火・祝)まで、東京・新橋演舞場で上演されます。公式HPはこちら

糸崎 舞

2026年はまさに『リア王』イヤー! 1年間にこれほど豪華なキャスト・制作陣で『リア王』が次々と制作されることは、かなり珍しいのではないでしょうか。 できれば全公演観に行きたい!と、『リア王』ファンとしてはつい思ってしまいます。