3月21日(土)からのプレビュー公演を終え、3月28日(土)に本初日を迎えたミュージカル『メリー・ポピンズ』。本初日を前に公開舞台稽古が行われ、笹本玲奈さん、朝夏まなとさん、大貫勇輔さん、小野田龍之介さん、上川一哉さんらによって劇中から一部シーンが披露されました。

「メリーが自然に存在する場所」で本公演開幕

P.L.トラバースの名作小説をもとに、ディズニーとキャメロン・マッキントッシュ率いるクリエイティブチームによって2004年にミュージカル化された『メリー・ポピンズ』。日本では2018年の初演後、2022年に再演、2026年3月より待望の再々演を迎えました。

日本公演演出を手がけたジャン・ピエール・ヴァン・ダー・スプイさんは渋谷ヒカリエ11階に位置する東急シアターオーブでの上演にあたり、「この雲の上、高い場所こそ、メリーが自然に存在する場所といえるのではないでしょうか。この高い場所から喜びや魔法が降り注ぎ、皮肉に富んだウィットを用いて、彼女は我々に何が大切かということを教えてくれるのではないかと思います。人間性であったり、家族であったり、お互いを思い合う気持ちであったり。そういった気持ちというのも、少し上から見てみると、また違った視点で見えてくる。そんなことを教えてくれるのではないかと思います」とコメント。

1曲目に披露されたのは、本作の幕開けとなる「オープニング~チェリー・ツリー・レーンパート1」(CherryTree Lane,Part1)。バート(上川一哉さん)がひょっこりと顔を出すと、劇場は1910年ロンドンの世界へ。

チェリー・ツリー・レーンに住むバンクス家は、“結ぶ糸は綻びがち”な状態。父ジョージ(福士誠治さん)は、家庭のことを妻に任せることこそが美徳だと信じ、子どもたちに向き合おうとしません。

ナニー(子守)は、イタズラばかりするジェーン(室岡星愛さん)、マイケル(張 浩一さん)にうんざり。妻のウィニフレッド(木村花代さん)は慣れない暮らしに戸惑っている様子。

そんなバンクス家の元に突如現れたのが、メリー・ポピンズ。ジョージが破って捨てたはずの、子どもたちが書いた求人広告を持ち、子どもたち(と大人たち)の新たなナニーとしてやってきたのです。

本作における特徴の1つが、バンクス家が魔法の国に行くのではなく、メリーがバンクス家の元にやってくるということ。子どもたちはメリーとバートと共に、いつもの“何もないつまらない公園”から、不思議な魔法が起こるのを目にします。想像力を持っていれば、いつもの日常の中で、“どんなことでもできる”。だから観客の私たちもメリーに自然と惹きつけられ、様々なことを教わっている感覚になれるのではないでしょうか。

笹本玲奈さんは、本作に初出演した2022年より更に気品と皮肉めいたウィットに富むメリー像がくっきり明確に。美しく背筋をピンと張った姿には浮世離れした存在感がありながらも、その奥に人々に対する愛情深い一面が見えてきます。

今回初出演となる上川一哉さんは、メリーへの愛情がたっぷり溢れたキュートなバートに。純粋無垢な子ども心と優しさに溢れたバートが、さまざまな困難にぶつかるバンクス家を優しく包み込みます。

2曲目に披露されたのは本作の大ナンバーの1つ「ステップ・イン・タイム」(Step inTime)。煙突掃除夫のバートと仲間たちが屋根の上でタップダンスを繰り広げます。公開舞台稽古ではメリー役を朝夏まなとさん、バート役を大貫勇輔さん、ジェーン役を久住星空さん、マイケル役を中込佑玖さんが務めました。

本作に初出演となる朝夏まなとさんは、激しいダンスナンバーでも上半身を優雅に、余裕ある佇まいがメリーそのもの。一方でバートや子どもたちに向ける表情は温かく、朗らかさが感じられます。

初演からバート役を務める大貫勇輔さんのエネルギッシュなダンスを堪能できるのが、まさに「ステップ・イン・タイム」。バートは時には絵描き、時には煙突掃除夫、時には大道芸人と様々な職業に就き、いわゆるロンドンの労働者階級の象徴的な存在。しかし彼は常に人生を楽しむ姿勢を持ち続けています。きっとメリーの魔法が心に生き続けたまま、大人になったのでしょう。大人の観客からすると、その姿が眩しくも感じられます。

3曲目に披露されたのは、「チム・チム・チェリー(リプリーズ)」(Chim Chim Cher-ee(Reprise)。変わる気がない子どもたちの元を一度離れる決意をしたメリーと、それに気づいたバートがバンクス家の屋根の上で言葉を交わします。

メリー役を朝夏まなとさん、バート役を小野田龍之介さんが務め、ミュージカルを観たことがない人でも一度は耳にしたことがあるであろう名曲「チム・チム・チェリー」を歌唱。

小野田龍之介さんが演じるバートは陽気さと茶目っ気に溢れ、ジェーンやマイケルと同じようにイタズラを繰り返した子ども時代だったのかも…と想像させられます。メリーにとっても、子どもの頃と同じように世界を楽しむ心を持ち続けているバートの存在はある種の救いになっているのかもしれません。

本作では公開舞台稽古で披露された他にも様々な名曲が存在します。こちらも多くの人が知っているであろう「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」、通称スパカリは、一見不可思議な言葉ですが、本作を見ればきっと人生のお守りのような言葉になるはず。キャッチーで楽しい高速ダンスと共に魔法の言葉が私たちに染み込んでいきます。

灰色の日々が色鮮やかに変わっていく様を体感できる「最高のホリディ」(Jolly Holiday)、ウォルト・ディズニーも深く愛した、思いやりの本質を描いた「鳥に餌を」(Feed the Birds)など、大ナンバーの宝庫であるミュージカル『メリー・ポピンズ』。

そして時を超える名作の多くがそうであるように、本作も現代と重なるようなタイムリーさを持ち合わせています。AIが急速に発達し、SNSには言葉が溢れ、何が真実か見えなくなり、人間の想像力が失われていくように感じる今。“想像力で羽ばたけ”と力強く歌ってくれる本作を通して、得られるものが多くあるのではないかと思います。

撮影:蓮見徹

キャストからの開幕コメントが到着

濱田めぐみ <メリー・ポピンズ役(トリプルキャスト)>
いよいよ『メリー・ポピンズ』開幕です。
これから素敵なワクワクする旅が始まります。新しく参加するメンバーと共にまた皆様と劇場で夢の様な時間を過ごせる事を楽しみにしています。この舞台を通して、新しい自分自身と出会う事ができます様に!

笹本玲奈 <メリー・ポピンズ役(トリプルキャスト)>
4年ぶりに『メリー・ポピンズ』として再びこの地に降り立てることを、心から幸せに思います。どんな困難も「お砂糖ひとさじ」で輝きに変えるメリーの魔法を、シアターオーブにいらした全てのお客様にお届けします。会場で皆様とお会いできるのを楽しみにしています!

朝夏まなと <メリー・ポピンズ役(トリプルキャスト)>
今日まで丁寧にお稽古してきて感じたことや得たことを、舞台で繊細かつ大胆にメリーとして存在したいです!毎日幸せな気持ちでいっぱいです。この気持ちを1人でも多くの方に受け取っていただけますように!どんなことでもできる!その気になれば!!千秋楽までよろしくお願いします!

大貫勇輔 <バート役(トリプルキャスト)>
プレビュー公演の幕が開き、お客様のたくさんの拍手に胸が熱くなりました。
スパカリでは会場が一体となっているのを感じましたし、ステップ・イン・タイムの逆さタップでは、逆さまの景色が懐かしく、これこれ!と心の中でバートの醍醐味に逆さまで感動していました。
大好きなシーンがいっぱいのこの作品。
皆さんにも楽しんでもらえるように精一杯バートを演じたいと思います。
最後まで応援よろしくお願いします!

小野田龍之介 <バート役(トリプルキャスト)>
ミュージカル『メリー・ポピンズ』2026年版が遂に開幕!
心がフッと高揚するような魔法と、観終わったあとにそっと背中を押してくれて明日への活力になる温かさが、この作品の魅力です。
僕自身も日々新たな発見をしながら、この世界と向き合っています。
劇場に足を運んでくださる皆様にとっても明日が少し楽しみになるような時間をお届けできたら嬉しいです。最高のドラマ・音楽・ダンスナンバーと是非ご期待ください。

上川一哉 <バート役(トリプルキャスト)>
初参加の稽古は新しい発見の連続で、日々多くの刺激を受けながら向き合ってきました。稽古を重ねる中で、この作品が持つメッセージの深さを強く実感しています。世界中で愛されるこの作品を一人でも多くの方に届けたいです。劇場という空間でお客様と共にメリーの魔法にかかり、その言葉のひとつひとつをギフトとして持ち帰っていただけたら嬉しいです。

ミュージカル『メリー・ポピンズ』は5月9日(土)まで東急シアターオーブにて上演。5月21日(木)から6月6日(土)まで梅田芸術劇場メインホールにて上演されます。

Yurika

2022年、コロナ禍で生きる希望を見失っていた時、本作に出会いました。メリーが教えてくれたのは、日常を輝かせるのに必要なのは大きな変革ではなく、想像力や「お砂糖ひとさじ」だけで良いということ。その教えを胸に今まで生きてこられました。そして再びメリーがやって来てくれることをずっと願っていました。奇しくも再び世界は先行きの見えない、日本においては物価高に生活が圧迫される中での上演。また私たちの元にメリーが現れたことに、意味を感じています。