「僕こそミュージック」。クラシックに明るくない人でも、モーツァルトの音楽を一度も耳にしたことのない人はいないのではないでしょうか。奇跡の子と呼ばれたモーツァルトが、一人の人間としての人生と天才の宿命との間で揺れるミュージカル『モーツァルト!』を観劇してきました。(2021年4月・帝国劇場)
芸術家の魂を分身「アマデ」で表現
オペラ「フィガロの結婚」や「魔笛」で知られるヴォルフガング・モーツァルトの一生を描いたミュージカル『モーツァルト!』。本作の興味深いところは、大人になったヴォルフガングに常に幼い頃のままの姿の分身「アマデ」が寄り添い、作曲し続けていること。アマデはヴォルフガングの中にある「少年の心」とも言えるし、「芸術家の魂」とも言えます。
家族の静止を振り切りウィーンに旅立つ時には、迷うヴォルフガングの手をアマデが強く引き、音楽家としての成功を優先するよう誘導します。家族や恋人、友達との夜遊び。一人の人間として時に自由になろうとするヴォルフガングと、芸術家としての宿命を全うさせようとするアマデ。幼い頃の影に付き纏われるモーツァルトの姿は、天才だけでなく過去の自分に自然と囚われる人々の心に突き刺さるものがあるでしょう。
ステージがピアノに?!名曲を大迫力のステージで堪能
ステージには大きなピアノ型のセットが出現。五線譜や彼の「レクイエム」の楽譜など、劇場全体にモーツァルトの世界観が表現されています。更にステージより前に突き出しのステージが用意されており、通常より近くにキャストが来るため臨場感たっぷり。
今回私は古川雄大さんの回を観劇しましたが(山崎育三郎さんとのWキャスト)、伸びやかな歌声が圧巻!精悍な青年でありながら才能ゆえの宿命に悩み苦しむヴォルフガングを等身大で表現されている印象でした。妻のコンスタンツェを演じるのは、実写版『アラジン』の日本語吹き替え版でジャスミンを演じたことでも知られる木下晴香さん。力強い歌声を堪能できる名曲「ダンスはやめられない」は必見です。
ミュージカル『モーツァルト!』は5月6日まで帝国劇場で、5月6月には札幌・大阪でも公演が行われます。当日券が発売されることも!詳細は公式HPをご確認ください。