2015年に初演を迎えて以来、数々の賞を総なめにしてきたブロードウェイミュージカル『ディア・エヴァン・ハンセン』。こちらの記事でもご紹介した通り、エヴァンという一人の少年が孤独と焦燥感から嘘を重ねてしまう物語です。ミュージカルファンの間では圧倒的な人気を誇ってきた作品ですが、ついに今年ハリウッドデビューを果たしました。
新曲が追加された映画版『ディア・エヴァン・ハンセン』
11月26日に日本公開された映画『ディア・エヴァン・ハンセン』では、舞台版の初代主役を務めたベン・プラットが再び主人公エヴァンを演じています。サウンドトラックも舞台版を踏襲しているものの、新たに“The Anonymous Ones”と”A Little Closer”の2曲が追加されたほか、舞台版の数曲が削除されています。この変更により、本作はエヴァンとその同級生たちが抱えるメンタルヘルスの問題に焦点を絞っています。
痛みをひた隠しにしながら笑顔で暮らす「名もない皆」のことを歌う”The Anonymous Ones”。暗い時期の中でも、ふとした瞬間に見える希望の光を称えるような”A Little Closer”。
エヴァンの孤独感や、自死してしまった同級生コナーの憂鬱、そして彼らを取り巻く同級生たちの、私たちからも窺い知れない密かな心の病。繊細かつ複雑な題材を、美しいメロディと優しい歌詞がまるっと包み込みます。
また、本作では、撮影しながら実際に俳優陣が歌うライブ収録を行っています。映画版『レ・ミゼラブル』でも採用された手法ですが、エヴァンの心の揺れ動きが一層伝わり、実際に私たちも同じ部屋にいるように思える仕掛けとなっています。
舞台版と映画版で同じ俳優が主役を演じるミュージカルは珍しいと言えるでしょう。エヴァン役のベン・プラットがどのように演じ分け、歌い分けているのか照らし合わせるのも楽しみ方のひとつ。ぜひ両方のサウンドトラックを聞き比べてみてください。