ディズニー長編アニメーションの60作品目に公開された『ミラベルと魔法だらけの家』は、2017年の『モアナと伝説の海』以来の新作オリジナルミュージカルです。親戚が一堂に会すると「同じ家族でもなんでこんなに違うの？」と比べてしまうこともありますが、今作の主人公であるミラベルはその気持ちを人一倍強く抱いている少女。魔法に満ちた大家族の中で自分の価値を探すミラベルの物語を、カラフルなラテンの音楽が鮮やかに彩ります。

ミュージカルへの熱望が結集させた最強製作チーム

監督を務めたのは、2016年の『ズートピア』を手がけたバイロン・ハワードとジャレド・ブッシュ。ハワードは、『ズートピア』の制作時からミュージカル映画の制作を熱望していたそう。相棒だったジャレドは、映画界とミュージカル界を股に掛けるミュージックメーカーのリン＝マニュエル・ミランダと、『モアナと伝説の海』をちょうど作り終えたところ。監督コンビが楽曲担当にリンを誘い、制作を始めたのが『ミラベルと魔法だらけの家』だったのです。

唯一“ギフト”を貰えなかった主人公・ミラベル

オープニングナンバー「ふしぎなマドリガル家」では、ミラベルが個性的な才能を持つ自身の家族を軽快なテンポで紹介していきます。

マドリガル一族が住む家・カシータは、魔法のろうそくの火に力を与えられた家。マドリガル家の子どもたちは、5歳になると代々ろうそくの火から一人一人異なる魔法のギフト（才能）を授かっていました。

魔法を使う家族に囲まれて暮らすミラベル。しかし彼女は、自分自身のことを歌いたがりません。それもそのはず、ミラベルは一族の中で唯一ギフトを貰えなかったのです。それでも自分は特別な家族の一員だと言い聞かせてきたミラベルでしたが、仲の良い従兄弟・アントニオが5歳になりギフトを授かると、抑えていた劣等感が溢れてしまいました。

アントニオを祝うパーティーの最中、ミラベルはカシータに亀裂が入り、ろうそくの火が消えかかる幻を見ます。異変を食い止める方法を探すため、ミラベルは行方をくらました未来予知ができる叔父・ブルーノに助けを求めることに。果たして魔法を持たないミラベルは、魔法の一家の危機を救えるのでしょうか？

吹替版は、歴代作品の中でもトップレベルの聞きごたえ

『ミラベルと魔法だらけの家』の吹き替え版では、さまざまな芸能人がマジカルなキャラクターたちに息を吹き込んでいます。まるで個性バラバラなマドリガル一族そのもの。歴代作品の中でも、吹替版のクオリティはトップレベルと言っても過言ではありません。

ミラベルの声を吹き替えたのは、新人女優の斎藤瑠希さん。ディズニーのUS本社でオーディションを受け、主役を射止めた期待の星です。堂々とした歌声に多様な表情を盛り込んで歌う姿で、万華鏡のように色を変えるリン=マニュエル・ミランダの複雑な楽曲を見事に歌いこなしています。

ミラベルの二人の姉を演じたのは、お笑い芸人のゆめっちさんと声優の平野綾さん。怪力の魔法を使うルイーサは周りの期待に軽々と答えているように見えて、実はプレッシャーに弱い女性です。3時のヒロインとして歌手デビューもしているゆめっちさんは、ルイーサのナンバー「増していくプレッシャー」でその歌唱力を発揮。ルイーサの強さと弱さが巧みに表現されたパワフルな歌声に、圧倒されます。

声優やミュージカル女優として大活躍中の平野綾さんは、意外にも今回がディズニー映画初吹き替え。彼女が演じるイサベラは、花を咲かせる魔法で人々を幸せな気持ちにする美しい女性です。イサベラが秘めていた思いを爆発させるナンバー「本当のわたし」は、役の心情に引き込むような平野さんのリアルな歌声に思わず感情移入してしまいます。