日本では劇団四季による35年以上のロングラン上演を誇る名作『キャッツ』。ブロードウェイでも何度も上演され、実写映画化もされました。満月の夜にゴミ捨て場に集まった猫たちが、得意の歌とダンスで舞踏会を繰り広げるミュージカルです。

ファンが多い作品ですが、中には「ストーリーがよくわからなくてつまらない」と言う人もいます。たしかに『キャッツ』は独特で、鑑賞するたびに理解が深まるような作品ではありません。しかし何度でも観たくなるような病みつきになる楽しみ方があるのです。

ブックレスミュージカルならではの、自由で曖昧な感覚を楽しむ

『キャッツ』がわかりにくい理由として、この作品が一貫したストーリーのないブックレスミュージカルであることが挙げられます。芝居よりも音楽に比重が置かれ、舞台から注がれるダンスや歌といった感覚的な情報を楽しむ作品です。

観るタイミングやその時の自分の状況によって感動する対象が変化するのが、ブックレスミュージカルの魅力。『キャッツ』は一貫性にとらわれない猫たち独特な世界を、自由に曖昧な感覚で楽しむ作品なのです。

名曲『メモリー』の2つの違いを楽しむ

孤独な娼婦猫のグリザベラが歌う『メモリー』は、作品の中では2回登場します。1回目は1幕の終わりに、過ぎていった美しい過去を想って1匹で寂しく歌う回想の曲。しかし2回目では歌詞を変えて明日への祈りを込めて歌い、さらに孤立していた彼女に手を差し伸べる猫まで現れる希望の曲に変わるのです。

同じ『メモリー』でも、1幕と2幕では曲に込められた意味に違いがあります。その違いに注目すると、名曲『メモリー』の良さが一層楽しめますよ。

さきこ

熱心なファンでも、『キャッツ』の明確なストーリーを理解できる人はあまりいません。 しかし観た後の心に残る消化不良のような感覚が、また『キャッツ』を観たいと思うきっかけになるのです。曖昧だからこそ楽しい『キャッツ』の世界。みなさんも体験してみてはいかがでしょうか?