2026年7月10日(金)から23日(木)まで、こまつ座第159回公演『マンザナ、わが町』が上演されます。1942年のカリフォルニア州マンザナ強制収容所を舞台に、5人の日系人女性たちのある決断を描いた井上ひさしさんの名作です。何度も上演を重ねてきたこの作品が、新たなキャストと演出家の鵜山仁さんによって生まれ変わります。

戦時中の日系人を描いた『マンザナ、わが町』が新キャストで

本公演を彩るのは、5人の実力派キャストです。アマチュア劇団の演出家兼ジャーナリストのソフィア岡崎を演じるのはsaraさん。文学座所属で、『梨泰院クラス』『Once』(ともに2025年上演)や『コーカサスの白墨の輪』(2026年上演)など幅広いジャンルの話題作に出演しています。

浪曲師・オトメ天津を演じるのは、増岡裕子さんです。2024年に文学座で上演された『オセロー』では、イアーゴの妻エミリアという重要な役を演じました。増岡さんはこの公演でデズデモーナを演じたsaraさんとも共演歴があります。

ステージマジシャン・サチコ斎藤を演じるのは、第45回紀伊國屋演劇賞・個人賞を受賞した栗田桃子さん。そして歌手・リリアン竹内を演じるのは、現役大学生の福井由峰さんです。

映画女優・ジョイス立花を演じるのは、元宝塚歌劇団花組トップスターの真飛聖さん。2026年4月に新国立劇場で上演された『ガールズ&ボーイズ』では、オトメ天津役の増岡さんとWキャストで一人芝居に出演しました。

本作は1993年の初演以降、豪華出演者によって何度も再演されています。特筆すべきは、戦後70年にあたる2015年の上演時です。土居裕子さん(ソフィア岡崎役)、熊谷真実さん(オトメ天津役)、伊勢佳世さん(サチコ斎藤役)、笹本玲奈さん(リリアン竹内役)、吉沢梨絵さん(ジョイス立花役)といった、全員が主役級のキャストが集結しました。

今回の『マンザナ、わが町』では、一新されたキャストの皆さんがどんな公演を作り上げるのか非常に楽しみです。

プロパガンダ劇を演じさせられた5人の女性たち

作品の舞台は、1942年のアメリカ。

1941年の真珠湾攻撃により太平洋戦争が始まり、アメリカと日本は敵国同士になりました。
その影響で、当時アメリカに住んでいた多くの日系人が強制収容所へと送られることになりました。強制収容所で生活を余儀なくされた日系人は11万人に及んだといいます。

カリフォルニア州の砂漠地帯マンザナにも、バラックの強制収容所がありました。

ここに集められたのが、日系女性5人です。彼女たちはそれぞれ、演出家、浪曲師、マジシャン、歌手、映画女優など、あらゆるエンターテイメントに関わる仕事をしていました。

そんな彼女たちに課せられたのは、マンザナが強制収容所ではなく、住民の自治によって運営される素晴らしい町であるとアピールすることでした。マンザナの素晴らしさをプロパガンダ劇として上演するよう命じられたのです。5人の女性たちは、最終的にどんな決断をするのでしょうか。

実在したマンザナ強制収容所

作中に書かれている通り、太平洋戦争下に行われた日系人の強制収容所は、実際に当時のアメリカに存在していた場所です。

1942年2月、大統領令によって、アメリカ軍に西海岸に住む人々を強制的に立ち退かせる権限が与えられました。マンザナ(マンザナーとも)強制収容所には有刺鉄線と監視塔に囲まれたバラックが立ち並び、最大で1万人以上もの日系人が収容されていました。

そして、戦後長い時間が経った1988年。アメリカ政府はこの収容政策について公式に謝罪し、生存者への補償を行いました。さらに2020年2月には、カリフォルニア州が太平洋戦争時の強制収容について公式に謝罪しています。

『マンザナ、わが町』では、日本とアメリカ、敵対する2つの国のあいだで、どちらの国にもルーツを持った女性たちの声が描かれています。これは単なる歴史劇ではなく、観客の私たちにとっても「自分は何者か」と問い直すための作品なのかもしれません。 

こまつ座第159回公演『マンザナ、わが町』は、2026年7月10日(金)から23日(木)まで、東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて上演されます。公式HPはこちら

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糸崎 舞

記事を執筆するにあたってマンザナ強制収容所の歴史を調べていたところ、2020年にカリフォルニア州から謝罪があったことに驚きました。戦争が生んだ傷は、長い時間をかけてもなかなか消えないのだとあらためて感じています。