2026年6月7日(現地時間)、ニューヨークで開催された第79回トニー賞で、アーサー・ミラー(1915-2005)の戯曲『セールスマンの死』が演劇リバイバル作品賞を含む6部門を受賞しました。1949年の発表から77年が経った今も世界中の観客を惹きつけ続けるこの名作が、2026年6月26日から東京を皮切りに日本全国6都市を巡演します。主演を務めるイッセー尾形さん、演出家の小川絵梨子さんのタッグによって、また新たな『セールスマンの死』が誕生します!
『セールスマンの死』とは?上演史とあらすじ
『セールスマンの死』の上演の歴史は長く、初演は1949年のブロードウェイでした。この公演はなんと742回にもわたるロングランを記録し、同年のトニー賞、ピューリッツァー賞、ニューヨーク劇評家賞を受賞しました。1983年には、作者のアーサー・ミラー自身が演出を務めた中国公演が話題となりました。
1951年と1985年には映画化もされ、2012年にはトニー賞のリバイバル賞を受賞。先述の第79回トニー賞でも6部門を制覇していることからも、本作が観客に求め続けられていることがわかります。
本作は日本でも、長きにわたり上演され続けてきました。
1954年の劇団民藝による日本初演から、文学座、無名塾など数々の劇団によって上演され、滝沢修さんを皮切りに、たかお鷹さん、仲代達矢さん、風間杜夫さんなど名優たちがウィリーを演じました。
『セールスマンの死』の主人公は、かつて敏腕セールスマンとして活躍したウィリー・ローマンです。しかし60歳を過ぎたウィリーは業績がふるわず、悩んでいました。妻のリンダは献身的に彼を支えますが、車の修理費や保険、さらに住宅ローンなど、多くの支払いがウィリーに容赦なく迫ってきます。
さらに気がかりなのが、息子たちのことです。かつて前途洋々だった息子たちは、30歳を過ぎても定職につかず自立できないまま。苦悶の果てに、ウィリーが選んだのは……。
イッセー尾形、中島裕翔が親子役に
主人公ウィリー・ローマンを演じるのは、「妄ソー劇場」をはじめ一人芝居の第一人者としても知られるイッセー尾形さんです。1971年から55年にわたって演劇活動を続けているイッセーさんは、『セールスマンの死』という作品についてこんなコメントを寄せています。
「まさにアメリカンドリームに敗れ果てた一家の悲惨な物語と言ってもいいでしょう。現代人がこれをどう観るか興味があります。『今だからこそ意味がある』と思われる作品にしたいものです」(『セールスマンの死』公式ホームページより引用)
主人公が最後に下す決断までの過程をどのように掘り下げていってくれるか、期待が高まります。
ウィリーの長男・ビフを演じる中島裕翔さんにも注目です。中島さんは2019年に舞台『WILD』でストレートプレイに初挑戦し、当時タッグを組んだのが小川絵梨子さんでした。
『WILD』の舞台は2013年のアメリカ。アメリカ国家安全保障局(NSA)の元局員エドワード・スノーデンが実際に起こした、大規模な内部告発事件に着想を得て書かれた社会派戯曲です。舞台となる時代も作品のテーマも異なるものの、ともにアメリカの社会を描く重厚な作品に挑戦し続けている中島さん。イッセーさんとの掛け合いも楽しみです。
そのほか『ピーター&ザ・スターキャッチャー』などの舞台に出演し、声優としても活躍する入野自由さんがビフの友人バーナードを演じます。
ウィリーの妻リンダを演じるのは、第10回読売演劇大賞の優秀女優賞、第3回朝日舞台芸術賞の秋元松代賞を受賞した高橋惠子さんです。ウィリーの次男ハッピー役には竪山隼太さん、そのほか内藤栄一さん、佐藤誓さん、長谷川初範さん、松田佳央理さんといった実力派が揃っています。
「しない」時代に問いかける『セールスマンの死』
ここで少し、イッセー尾形さんのコメントにもあった「アメリカンドリーム」という言葉について補足します。
アメリカンドリームとは、アメリカ合衆国の建国精神に根ざした概念で、出身や階級に関係なく、自らの努力で成功を掴むことができるという考えを指します。
しかし本作で描かれるのは、競争社会・消費社会が生み出すさまざまな問題です。本作の舞台は1950年代前後のアメリカですが、親子の断絶、家庭崩壊、若者の挫折感といった問題は、現代の私たちにとっても遠いものではありません。
この時代に生きたウィリーは「アメリカンドリーム」に敗れたのでしょうか。ウィリーは家族のため、そして自分のためにどう生きたのでしょうか。
イッセーさんは、本作のスポット映像で「今は昔に比べると、しない時代になったと思うんです。(『セールスマンの死』は)する時代の話ですから。しない時代の皆さんに真正面からぶつかる。これでいいのだろうか?と」とコメントされています。
本作は過去に書かれた名作という枠を超えて、今を生きる私たちの胸に鋭く問いかけてくるかもしれません。
『セールスマンの死』は、以下のスケジュールで全国6都市を巡演します。
【東京公演】
2026年6月26日(金)から28日(日)まで
東京芸術劇場プレイハウス
【埼玉公演】
2026年7月3日(金)から7月12日(日)まで
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
【大阪公演】
2026年7月18日(土)から7月20日(月・祝)まで
COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
【愛知公演】
2026年7月24日(金)から7月26日(日)まで
東海市芸術劇場 大ホール
【富山公演】
2026年8月1日(土)・8月2日(日)
富山県民会館
【長野公演】
2026年8月14日(金)・8月15日(土)
ホクト文化ホール(長野県県民文化会館)中ホール
チケット情報や上演スケジュールなどの詳細は公式HPをご確認ください。公式HPはこちら
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『セールスマンの死』は、今の社会を生きる大人にとって強く刺さる物語だと感じています。決して明るい話ではありませんが、この先の未来もずっと上演され続けたらいいな、と心から思える作品です。



















