サン=テグジュペリの名作「星の王子さま」を原作に、音楽座ミュージカルが製作した『リトルプリンス』。読売演劇大賞優秀女優賞・優秀スタッフ賞など数々の賞を受賞、ファンから愛され続けてきた作品です。今回は「飛行士」「キツネ」の2役に井上芳雄さん、王子が愛する「花」役に花總まりさんなど豪華キャストを迎え、東宝製作・シアタークリエでの上演が実現しました。(2022年1月・シアタークリエ)※ネタバレにご注意ください

透明度の高い加藤梨里香×演技力で魅せる井上芳雄

砂漠に不時着した飛行士が出会ったのは、小惑星から来た小さな王子。花と喧嘩し星を飛び出してきた王子は、様々な星を巡り、地球にたどり着いたのです。王子を演じるのは、2021年ミュージカル『レ・ミゼラブル』にコゼット役で初出演を果たした加藤梨里香さん(王子役は土居裕子さんとのWキャスト)。無垢で想像力豊か、真っ直ぐな少年らしさを瑞々しく演じます。美しい高音の歌声が観客の心を浄化するよう。

王子と出会う飛行士を演じたのは、ミュージカル界を牽引し続ける井上芳雄さん。大人になるにつれて諦めを学んだり、目の前のことばかりに気を取られてしまったり。“子どもだったこと”を忘れてしまった飛行士が、王子との出会いで徐々に変わっていく姿は、同じく大人になった自分の胸に深く突き刺さりました。一方、王子に「大切なものは、目には見えないんだよ」と教えるキツネ役では、陽気な姿で観客の笑いを誘います。2役のギャップや、涙を誘う繊細な表現力で魅せるのは、さすがミュージカル界のプリンスです。

美しいセットで世界観を表現。自分にとっての「花」とは何か?

切なくも美しい「星の王子さま」の世界観を、真っ白なセットと映像で表現。舞台上を時に星々が、時に砂漠に沈む夕日が彩ります。美しい衣装やアンサンブルのダンスで花やヘビ、風を表現していたのも印象的。舞台芸術の魅力がぐっと詰まっている演出は必見です。

王子はワガママで強がりな「花」の側を離れますが、旅をすることでその存在の大切さに気づきます。目で見るのではなく、心で「花」の存在を感じたから。他の人から見たら街に咲くたくさんの花と変わらなくても、自分にとっては唯一無二の花。きっと誰もが、「花」のような存在に支えられて生きているのでしょう。私にとって、心の中にある大切なものとは何か?今一度立ち止まって考えさせられる作品でした。公式HPはこちら

Yurika

今の私は、絵を見て帽子ではなくウワバミに飲み込まれた象を想像できるだろうか。目に見えるものだけで、受け入れた気になっていないだろうか。そんな問いを静かに投げかけられた気がしました。『リトルプリンス』は1月31日までシアタークリエにて上演予定です。