市村正親さんと鹿賀丈史さんのW主演で再演を重ねてきたミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち』。観ればきっと元気が湧いてくる、大人気の作品が今年3月に帰ってきます!

長年連れ添うカップルに最大の危機到来?!

南仏サントロペにあるクラブ「ラ・カージュ・オ・フォール」。ここでは夜ごと魅惑的な「カジェル」たちが舞い踊り、看板スター・ザザ(市村正親さん)の名物パフォーマンスに観客の拍手が響きます。ザザは本名をアルバンといい、クラブのオーナーであるジョルジュ(鹿賀丈史さん)とは20年ものあいだ事実婚の関係。ジョルジュには実子ジャン・ミッシェル(内海啓貴さん)がおり、2人の息子として大切に育ててきました。

ある日、ジャン・ミッシェルが突然結婚を宣言し、両家の顔合わせを行いたいと切り出します。その相手はなんとも運の悪いことに、ゲイ嫌いで有名な政治家の娘アンヌ(小南満佑子さん)だというのです。ジャン・ミッシェルはアンヌの両親、ダンドン議員夫妻(今井清隆さん、森公美子さん)の前では素性を隠し、実の母親を呼び寄せて「普通の家族」を取り繕ってほしいと両親に頼みます。母親のように息子を育ててきたアルバンは存在を否定されて傷つきますが、息子の幸せのため、願いを聞き入れ、自分は叔父として同席することを受け入れるのでした。はたして、顔合わせは上手くいくのでしょうか・・・

時代を越えて、そして今だからこそ響く、自分らしく今を生きるということ

本作で目を惹くのは、カジェル=女装した男性たちのショータイム。優雅さの手本になりそうな立ち振る舞いで歌ったかと思えば、体力の限り乱れ踊ります。ハンナ役の真島茂樹さんがあるものをブンブン振り回すキケンな香りのシーンもお約束。煌びやかな衣装は次々に替わり、観客を飽きさせないパフォーマンスは最後まで期待を裏切りません。

こうしたシーンで華やかさが強調される、キャッチーなキャラクターを通して、家族や個人のアイデンティティについて問いかける本作。何度も登場する「ありのまま」という歌詞には、女装したかりそめの姿は舞台の上だから許されるもの、そんな背景が透けて見えるようです。このミュージカルが誕生した1983年は今よりも個人のジェンダーやセクシュアリティを開示しづらい時代でした。カジェルたちのようなドラァグクイーンに笑いの目が向けられた時代に、『ラ・カージュ・オ・フォール』は親子の価値観の衝突、という普遍のトピックを織りまぜて、誇り高く生きる人間の姿を描いたのです。

40年近く経った現在でも、普通の家族って何だろうかと悩むことは誰にでもあるはず。愛する息子に自分らしさを否定されたアルバンが苦しみを乗り越えるさま、ジョルジュや周りの人のあたたかさに、生きる力を分けてもらえます。

その極みとも言えるのが、2幕でアルバンが披露する「今この時」という曲。「今この時をしっかり生きて愛して」というサビの歌詞は、こんな時代だからこそ心に留めたいメッセージかもしれません。英語の歌詞に含まれるニュアンスを補足すると、この歌詞には「全力で生きて、愛して、なぜなら今がいちばんなのだから」という意味が込められています。今をしっかり生きて、大切な人を、自分を、愛して。不思議と心が軽くなるこの言葉が劇場に降り注ぐシーンもまた、『ラ・カージュ・オ・フォール』の醍醐味です。ミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち』は2022年3月8日(火)、東京・日生劇場で開幕したのち、愛知、富山、福岡、大阪、埼玉を巡ります。

Sasha

『ラ・カージュ』史上最高のコンビと称される市村正親さん×鹿賀丈史さんのベテランタッグは今回で5回目。安定感のあるキャスト陣が巻き起こす、『ラ・カージュ』旋風にぜひ巻き込まれてみてください。