37年目となる公演がまもなく開演する名作ミュージカル『アニー』。2020年から公演中止や、一部中止が続いていましたが、今年は無事に開催できそうです。暗いニュースが続く近年、『アニー』から前向きに生きる力を感じてみましょう。今回は、激動の時代にこそ観てほしい『アニー』の紹介と、ポジティブに明日を迎えるためのヒントを作品から紐解いていきます。

どんな苦境でも、忘れない「希望」の光

舞台は1993年、真冬のニューヨーク。世界大恐慌直後、街には仕事や住む家さえも無くした人で溢れていました。誰もが希望を失う状況の中、「夢」と「希望」を持ち続ける11歳の少女アニー。孤児院の前に捨てられていたアニーは、過去を悲観せず、いつか必ず両親が迎えに来ると信じて毎日を生きていました。

そんなある日、大富豪の大人に出会ったことで物語は大きく変わっていくのです。アニーは、本当の両親に出会えるのか…。数々の名曲とともに、逆境を乗り越えて前を進むアニーの姿は、私たちに「希望」もたらしてくれます。

生誕100年を迎える『アニー』の誕生

原作は、ハロルド・グレイの新聞連載漫画『小さな孤児アニー(Little Orphan Annie)』です。当初、違う作風を考えていたハロルド・グレイでしたが、道端で見かけた厳しい環境の中でも明るく生きる少女に出会い、直前で作風を変えることにしました。そうして、少女をモデルにした主人公のアニーが誕生します。ポジティブで明るいアニーのキャラクターは、当時の不況で失意に暮れる人々から愛され、50年以上も連載されました。

初ミュージカル化の作詞・演出をしたマーティン・チャーニンは、ギフト用に手に取った原作コミック『アニー』を読み、魅了されたそうです。そして、すぐにミュージカルの制作に取りかかりました。開幕するやいなや注目を集め、名曲「Tomorrow」は大ヒット、『アニー』はたちまち大人気に。さらに、トニー賞では作品賞を含む7部門を受賞し、ミュージカルの歴史にその名を刻みました。そうして何年もの間、繰り返し上演され愛され続けています。誕生のきっかけは、人々が不況に喘ぐ時代に原作者が前向きなパワーを放つ少女に出会ったことですが、そのパワーは今もなお人々に感動と希望を贈りつづけているのです。

明日を信じる「Tomorrow」の魅力

世界中に広く知られている名曲「Tomorrow」。ミュージカルも映画も観たことがないという人でも、この曲を知っているという人は多いのではないでしょうか。失望や絶望、生きているとそんな壁にぶち当たる時もあるのが人生。そんな時、アニーが力いっぱいに歌うこの曲は、人々の心を癒やし続けてきました。1982年、1999年、2014年と3回映画化されてきた『アニー』。ミュージカル同様、同じストーリーでも、キャスティングやちょっとした構成の違いで何度も楽しめる作品です。

菜梨 みどり

世界大恐慌というつらい時代が舞台となっているストーリー。世界を襲った未曾有の出来事や、心が痛む争いが続く今、ぜひ観てほしい作品です。