7月29日に中野ザ・ポケットで開幕する『ハイゼンベルク』。『夜中に犬に起こった奇妙な事件』でトニー賞演劇作品賞を受賞したサイモン・スティーヴンス脚本の二人芝居です。「他者との関係性の揺らぎ」を2組の演出家とキャストが描きます。
関係性が変わる時、当事者たちは変化に確信を持っているのか。ユーモラスな会話劇で関係性の変化を描く
『夜中に犬に起こった奇妙な事件』でトニー賞演劇作品賞を受賞した劇作家サイモン・スティーヴンス脚本の二人芝居『ハイゼンベルク』。本作はドイツの物理学者であるヴェルナー・カール・ハイゼンベルクの「不確定性原理」を下敷きにした作品です。「不確定性原理」とは、「二つの離れた粒子の運動量や相関関係を正確に測り決定する事は出来ない」という意味。男女の関係性に置き換え、ウィットに富んだ会話劇として魅せます。
舞台は、多くの人が行き交うロンドンのセント・パンクラス駅。ニュージャージー州出身の40代女性・ジョージーは、肉屋を営む70代の男性・アレックスの首の後ろに突然キスをします。ジョージーは自分の突飛な行動を謝りますが、アレックスは「気にしてないから」と会話を終わらせようとします。しかし、ジョージーはまくし立てるように身の上話や恋愛遍歴を語りだし、アレックスは相槌を打ちながら、彼女の話に耳を傾けるのでした。
その出会いから5日後、アレックスの肉屋にジョージーが訪ねてきます。徐々に2人の距離が近づき、数回のデートを重ねたのち、ニ人は一夜を共にします。その翌朝、ジョージーはアレックスに近付いた本当の目的を告白し…。他人であったところから、距離が近づいた二人の間には、確固たる変化や確信があったのでしょうか。「関係性の揺らぎ」を描きます。
見どころは、演出家・キャストが2組に分かれての上演
本作の見どころは、演出家とキャストが2組に分かれて上演すること。演出家の1人目は、読売演劇大賞優秀演出家賞など数々の受賞経験を持つ小山ゆうなさん。世田谷パブリックシアター主催『チック』で、読売演劇大賞優秀演出家賞受賞。劇団四季の『ロボット・イン・ザ・ガーデン』等で演出を務めています。
小山さん演出チームでは、肉屋の店主で70代の男性・アレックスを、歌手活動に映像作品での活躍、更に舞台では名作に出演し続けている上條恒彦さんが演じます。風変わりな40代の女性・ジョージーを、舞台だけでなくモデルなど多彩な才能を持つ、りょうさんが演じます。
演出家2人目は、箱庭円舞曲の代表を務め、劇団外でも演出や脚本提供などで活動している古川貴義さん。日常的な人間関係を、リアルに細かく繊細に描き、コミュニケーションのズレの可笑しさや、観客自身の常識を再確認させられるような感覚で人気です。
古川さん演出チームのアレックスを演じるのは、演劇・映画界で数々の受賞経験を持つ平田満さん。ジョージーを、三人芝居『もしも命が描けたら』に出演、第54回毎日映画コンクール女優助演賞を受賞した経験を持つ小島聖さんが演じます。
本作は会話劇ですが、お互いが本心しか言っていないようにも、本心は隠して一切言っていないようにもとれる不思議な作品。セリフとセリフの間を読み取っていくような作品だからこそ、2チームに分かれての上演で全く違うものが生まれるのではないでしょうか。舞台セットについても、出来る限りシンプルにするようにとの指示はあれど、2チームとも、演出家の二人がこの作品をどのように捉えていくかで変わります。
演出家が二人ついて2チームに分かれての上演や、豪華キャストを小劇場の間近で観られることは珍しいこと。2組がそれぞれどのようなアプローチで「互いの関係性が常に揺れ動き変化するさま」を描くのか注目です。
『ハイゼンベルク』は7月29日(金)~ 8月14日(日)中野 ザ・ポケットにて上演されます。公式サイトはこちら。
テーマを聞いて静かな会話劇かと思っていたらコメディタッチということで、気負わずに観られるのではないかという印象を受けました。両チームの違い、どちらも見届けたくなりますね。