劇団四季のミュージカルとしても人気のある『ロボット・イン・ザ・ガーデン』は、2016年のベルリン国際映画祭で「映画化したい1冊」に選ばれたベストセラー小説です。当作を原作にした映画『TANG』が、8月11日から映画館で絶賛公開中。公開当日に鑑賞した『ロボット・イン・ザ・ガーデン』ファンの筆者が、映画ならではの見どころ、ミュージカル版との違いや接点を紹介します。※ネタバレあり
近未来の日本から始まる、ポンコツコンビの2人旅
原作小説の物語はイギリスから始まりますが、『TANG』は近未来の日本が舞台です。主人公の健(二宮和也さん)はニート同然の生活を送り、家でVRゲームに没頭していると、妻の絵美(満島ひかりさん)から「庭にロボットが居るから追い出して!」と言われます。
庭に腰掛けていたのは、どこから来たのかもわからない時代遅れの古いロボット・タング。タングの”処理方法”やこれまでの怠惰な行動をめぐり、健は絵美と喧嘩をして家を追い出されてしまいました。
健はタングの身体に製造会社名のような表記を見つけ、彼を製造会社に持っていき、最新モデルのアンドロイドと取り替えて絵美の機嫌を直そうと試みます。ところが行く先々でさまざまな人と出会い、健はタングに隠された秘密を紐解いていくことになるのです。こうして、ポンコツコンビの不思議な旅が始まります。
健が暮らす日本は、最先端のアンドロイドが人の代わりに家事や仕事をこなし、宅配便がドローンで届く世界。手が届きそうな近未来の描写はどこか漫画のような夢が混ざっていて、SFチックな世界観は大人も子供も楽しめます。
また小説やミュージカルを知っている方はお気づきかもしれませんが、健と絵美の名前は、原作キャラクターの名前のオマージュ。キャラクターの設定や旅の行き先が日本テイストに落とし込まれているので、よく知っている『ロボット・イン・ザ・ガーデン』との違いを探しながら鑑賞するのも楽しいです。
劇団四季ミュージカルとの意外な繋がり
『TANG』の監督は、『陽だまりの彼女』や『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』などを手掛けた三木孝浩監督です。三木監督は、早稲田大学の演劇サークルでは劇団四季ミュージカル『ロボット・インザ・ガーデン』の演出家を務めた小山ゆうなさんと同期だったそう。
映画はミュージカルにインスパイアされた部分も多いようで、健や絵美の衣装や二人が住む家の雰囲気、タングが幼い子供のように感情を表現するリアクションの数々は、舞台版を彷彿とさせました。また、ミュージカルでは秋葉原が日本のサイバー都市として登場しますが、親しみがありつつどこか異国のような雰囲気は、映画に登場する未来の日本に共通しているものがあります。
ミュージカルのタングは、俳優が二人がかりで動かすパペット。これに対して映画のタングは、『STAND BY ME どらえもん』で知られるVFXプロダクション「白組」による最新のVFX(視覚効果)技術によって生み出されました。
その動きと声を吹き込んだのは、なんと健役の二宮さん!どこか気だるそうな健と好奇心旺盛な可愛いタングの演技のギャップは、一人二役には思えません。しかしお互いに関わることのなかったロボットと人間が合わせ鏡のように互いを成長させながら絆を育む様子は、二宮さんの丁寧な演技が光っていました。
映画『TANG』は、全国の映画館で絶賛公開中。そして劇団四季版ミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』も、全国公演を順延中です。劇場で2体のタングに会える貴重なチャンス。ぜひ舞台と合わせて、映画『TANG』も楽しんでみてはいかがでしょうか?
感動的なラストの展開は、ぜひエンドロールまで席を立たずにご鑑賞するのをおすすめします。