三谷幸喜さんが久しぶりの舞台脚本・演出を手がけたシス・カンパニー公演 『ショウ・マスト・ゴー・オン』。“思い切り明るくて楽しくて笑いに満ち溢れたもの(でも胸に迫る)にしよう”という想いで作られた作品です。鈴木京香さん・尾上松也さん・ウエンツ瑛士さん・浅野和之さんら豪華キャスト陣が上質な笑いを届けてくれます。(2022年11月・世田谷パブリックシアター)
上げた幕は絶対におろさない。何があっても!
『ショウ・マスト・ゴー・オン』の舞台は、シェイクスピアの名作『マクベス』を上演する劇場の舞台袖。開演に向けて慌ただしく準備している舞台監督・進藤(鈴木京香さん)の元に、様々なトラブルが舞い込んできます。主演俳優の宇沢(尾上松也さん)は開演が迫っているにも関わらず、未だにお酒が抜けない様子。外国人の演出家は迷子になって劇場に辿り着けず、昨日叱った若いスタッフの姿は見えず、上演を見に来た脚本家は質問ばかり…。
なんとか幕は上がったものの、1人1人の何気ない行動がとんでもないアクシデントに繋がっていってしまいます。しかし、一度幕を上げたら、最後まで上演をやり遂げるのが舞台監督の仕事。実際に起こったら笑ってしまいそうなトラブルにも真剣に取り組む進藤の奮闘が、おかしくも愛おしい作品です。
豪華キャストが全方向で暴走!
進藤をかき回す座長の宇沢や俳優のあずさ、脚本家、演出部スタッフの父、医者などを、尾上松也さん、シルビア・グラブさん、今井朋彦さん、小林隆さん、浅野和之さんら実力派俳優たちが豪華熱演。それぞれの方向で暴走する姿に、観客の笑いが止まりません。
人々に翻弄される進藤を支えるのが、舞台監督助手・木戸のウエンツ瑛士さんと演出部スタッフ・のえの秋元才加さん。特にウエンツさんは全体のツッコミ役的存在で、ナチュラルに作品をまとめていきます。進藤や木戸が必死に舞台を進めたり対策を考えたりしているうちに、だるま式にトラブルが起こっていくため、トラブルに先に気づくのは観客。“気づいてー!”と進藤に声をかけたくなる気持ちをグッと堪えつつも、時に客席から“あぁー!”という声が漏れ出てしまいます。
進藤や木戸らと共になんとか舞台を成功させよう!という一体感すら湧いてくるのは、悪気なくトラブルを起こしてしまう愛すべきキャラクターたちに魅了されている証拠でしょう。
2022年の年末、忙しい日常と2時間半離れ、思いきり笑う。それだけで、心がすっと軽くなった気がしました。 『ショウ・マスト・ゴー・オン』は12月27日まで世田谷パブリックシアターで上演予定。あっという間にチケットが売り切れた本作ですが、筆者は当日券の立ち見席で観劇しました。作品の詳細や当日券販売については公式HPをご確認ください。
福岡公演では小林隆さんの休演に伴い、代役として三谷幸喜さんが出演。更に、東京公演の初日はシルビア・グラブさんが急遽休演となり、代役に再び三谷幸喜さんが出演するというハプニングがあった本作。まさに“ショウ・マスト・ゴー・オン”を体現する結果となり、カンパニーの力強さとユーモアを感じました。