2011年にオフ・ブロードウェイにて世界初演された『4000マイルズ〜旅立ちの時〜』。2020年春にはロンドンのオールド・ヴィック劇場で、ティモシー・シャラメ主演で上演されることが発表され、話題を呼びました。心に傷を負ったレオと孤独な祖母ヴェラのめぐり逢いの物語です。
心に傷を抱えた孫と祖母。ユーモアと思いやりに溢れたセリフで紡ぐヒューマンドラマ
本作は、2011年にオフ・ブロードウェイにて世界初演、2012年にはオビー賞のベスト・ニュー・アメリカンプレイを受賞。2013年にピューリッツァー賞の最終候補となりました。世界各地で上演されており、2020年春にはロンドンのオールド・ヴィック劇場で、ティモシー・シャラメ主演で上演されることが発表され、注目を集めました。(ロンドン公演は、コロナウイルスの影響により上演中止)
エイミー・ハーツォグの綴る、ユーモアと思いやりに溢れた作品。どのように人と向き合っていくか、考えるきっかけを与えてくれます。
物語は、大学生のレオが祖母・ヴェラの住むマンハッタンのアパートに、9月のある深夜、突然現れるところから始まります。レオは、夏の初めに親友とアメリカ西海岸から東海岸までを自転車で横断する旅に出たのですが、途中で不幸な事故に遭い、心に傷を負ったまま、旅の最終地点であるニューヨークにたどりついたのでした。
一方のヴェラも、10年前の夫の死を未だに受け入れきれず、隣人と朝晩電話で安否確認するだけの孤独な毎日を送っていました。祖父の葬式以来、久しぶりの再会を果たした2人。突然始まった共同生活に、レオのガールフレンド・ベックや行きずりの女子学生・アマンダが様々な波紋をもたらしますが、次第に、レオとヴェラは互いへの理解を深め、誰にも言えなかった心のうちを明かすようになります。
お互いの年齢や時代を越えて、共感を抱いていく、孫と祖母のヒューマンドラマです。
「ヴェラの歩んできた91年間の人生の中身を色濃く」
孫のレオは“羽”にケガをして、羽を休めるために遠くからやってきます。何も聞かないで休めさせてあげるのが、高畑淳子さんが演じる祖母のヴェラ。ヴェラはなんと91歳! 台本では、物語冒頭にまずヴェラが入れ歯と補聴器をつけるところから始まるんだそう。役作りで、地毛を白髪にし、歯がないときの顔の作り方を練習していると言います。
ヴェラは物凄くおしゃべりなおばあちゃん。孫と一緒に悩み、怒り、考える、とても人間臭い役所です。たくましく生きて、主義主張もはっきりしている女性。だからこそ、加齢によって言葉に詰まることがあると、苛立ってしまうという一面も。
高畑さんは「91歳を演じるというよりも、ヴェラの歩んできた91年間の人生の中身を色濃くしていきたい」と話します。
観客には、「『お年寄り×若者』で観に来てもらえたら」と呼びかけます。「観た後にレオとヴェラのように語りあってほしい。年齢も考え方も違う2人が思い合う姿を観たら、『人を想うってこんなことなのかな?』と思わずにいられない、心が温まる作品」とコメントしました。
「レオのように高畑さんを支えられる存在になりたい」
本作は、ドラマチックな展開があるというよりも、日常生活の中での心の機微が丁寧に描かれています。
主人公の青年・レオを演じる岡本圭人さんは、留学先の演劇学校で、演技の先生から言われた言葉で印象に残っている言葉があるんだそう。それは、「俳優である以前に『みんなそれぞれストーリーテラーなんだ』『人間は、自分の人生や、そこで起きたことを、人に伝えるべきなんだ』」という言葉。
この言葉を元に、本作を観た方にも「『自分の人生にも伝えるべきものがあるんだ』と思ってもらえたら嬉しい」とコメント。
岡本さんは自身が演じるレオを「尊敬する人物」だと話します。レオは自分の心に素直で、人からの影響を受けやすい人。強さの中に脆さや弱さがあり、自由奔放に見えて人にやさしいところもある、人間らしいキャラクターだと分析。
そして、台本を読んでいて温かい気持ちになったというのが、レオとヴェラの関係性。レオとヴェラは物語の中で10年ぶりの再会を果たしますが、実は、高畑さんと岡本さんも、幼少期の頃に出会っていたんだそう。高畑さんが、岡本さんのお父さん・岡本健一さんと共演した際に、まだ5歳くらいだった岡本圭人さんと楽屋で遊んでくれていたというのです。
岡本さん自身が覚えていない自身の過去を知っている高畑さんに、「安心感を感じ、身を任せられそう」と話します。「他の人には見せられないようなところも、今の自分なら高畑さんに見せられるなと思う」「僕自身もレオと一緒にヴェラを演じる高畑さんを支えられる存在になっていきたいと思う」と、既に信頼関係が築かれていることを明かしました。
『4000マイルズ〜旅立ちの時〜』は、12月12日(月)〜12月28日(水)東京・シアタークリエにて上演です。その後、1月に大阪、愛知、香川での公演が予定されています。公式HPはこちら。
登場人物は4人ですが、日常に潜む心の機微が丁寧に描き出されているということで、注目の本作品です!誰しもが抱えている心の傷と向き合って、癒していく。今の時代にとても即している作品だと感じました。