東京・日比谷にある人気劇場シアタークリエの新春公演は、ミュージカル俳優の海宝直人さんが率いるコンサート『ATTENSION PLEASE!』。「”クリエ発→どこへでも。”」をキャッチコピーに掲げ、海宝さんが機長を務める飛行機でミュージカルソングとともに世界中を回るコンサートとなっています。

観客は”乗客”、出演俳優は”クルー”。開演前も劇場には空港を思わせる劇場アナウンスが流れ、気分はすっかり海外旅行です。

1幕では「旅」をテーマしたストーリー仕立てのショー、2幕では公演日ごとに異なる特別ゲストを交えたコンサートが披露され、夢のような音楽旅行を満喫しました。筆者が”搭乗”したのは、地域を問わずさまざまな国を巡るコンサートの最終航路。

その様子を、楽曲の一部を踏まえながら振り返ります。※英語歌詞で歌われた楽曲名は原題、日本語歌詞で歌われた歌詞は邦題で表記しています。(1月初旬・シアタークリエ)

【1幕】海宝機長が誘うミュージカル飛行へ出発!

空港を思わせるステージで歌われた最初のナンバーは、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』より劇中でも空港で展開されている「Live in Living Color」。パイロット姿が甘いマスクにお似合いな機長の海宝直人さんが、乗務員を引き連れて軽快に歌い踊ります。

乗客たちが搭乗案内を待つなか『アラジン』の「行こうよどこまでも」が披露されると、これから始まるミュージカル飛行に胸が高鳴りました。

コンサートの航路は公演期間ごとに「to The USA」、「to Europe」、「to Other Countries」に分かれ、この日の飛行機は「to Other Countries」へ出発。ニューヨークでは『RENT』メドレー、ペテルブルクでは『アナスタシア』の「俺のペテルブルク」と、各地で海宝さんゆかりのナンバーが披露されます。

途中、子役時代に『ライオンキング』で共演した海宝さんと乗務員のEmaさんがヤングシンバとヤングナラになって「早く王様になりたい」を歌う場面もありました。

機内プログラムとして、この日のゲストである大貫勇輔さんが『雨に唄えば』の「Singin’ in the Rain」を、ダンスを交えて披露。乱気流に揺れる機内で乗客が音楽プレイヤーを流すと、ゲストの屋比久知奈さんが『マンマ・ミーア!』の「Chiquitita」を優しく、そして力強く歌い上げます。

最終目的地は、”A Song To Remember”。

『王家の紋章』より従兄弟メンフィスへの叶わぬ恋を歌うアイシスの「想い儚き」を、海宝さんが歌い、ゲストの大貫さんがダンスで切なさを表現しました。2021年公演では、海宝さんはメンフィス役で大貫さんはイズミル役。舞台で敵同士だった二人が物語とは異なる形で共演する姿は、感慨深いものがあります。

飛行機は無事に着陸し、楽しかった空の旅もお別れの時間。乗客の名残惜しさに寄り添うように、最後はクルー全員が『ディア・エヴァン・ハンセン』の「You Will Be Found」を歌い、幕を閉じました。

【2幕】屋比久知奈さん、大貫勇輔さんを迎えた特別コンサート

2幕は歌ありトークありのコンサート形式で展開され、海宝さんやゲストのプライベートな一面も垣間見られました。最初のゲストは、『ミス・サイゴン』のキム役として海宝さんと共演した屋比久知奈さん。

フリートークでは緊張を解消する方法として、ジャンプして緊張が体の上部に上がらないようにしていると話していました。実際にジャンプをしてから海宝さんとデュエットしたのは、『ウィキッド』の「二人は永遠に」。

トークでは柔らかく会話をしていたお二人でしたが、イントロが流れると恋人同士の熱い視線を交わし合い、情熱的なバラードを響かせます。

続いて登場した大貫勇輔さんは、海宝さんとは互いに年上だと思っていたら実は同い年だったと告白。質問コーナーのMCである堀川絵美さんにポージングのコツを、実践を交えて伝授し、コミカルなやり取りに客席も温まりました。

海宝さんとのデュエットでは『ロミオとジュリエット』の「世界の王」を歌い、お二人のかっこよさに思わずマスクの下から溜息がこぼれます。

最後に披露されたのは、海宝さんが「今の時代にぴったり」と言う『ルドルフ・ザ・ラスト・キス』の「明日への階段」。希望が溢れる歌詞と力強いコーラスに、「閉塞的な気持ちを開放して世界を旅するような気持ちでコンサートを楽しんでほしい」という海宝さんの想いが感じられました。

さきこ

2023年1月3日(火)から13日(金)までシアタークリエで上演された海宝直人さんのコンサート『ATTENSION PLEASE!』より、”旅のお土産話”をさせていただきました。 アンコールでは、同劇場でも上演されていた『ジャージー・ボーイズ』より「1963年12月(あの素晴らしき夜)」を披露。 復活した海宝ボブが「どうぞ立ち上がってください!」呼びかけると客席は総立ちで手拍子をし、ステージと客席が一体となって最後までミュージカルの旅を満喫しました。