宝塚歌劇団での初演は40年前にさかのぼり、2023年には30年ぶりに宝塚大劇場と東京宝塚劇場にて公演される『うたかたの恋』。筆者の好きな題材、なおかつ推しの花組の舞台とあれば見逃せない…というわけで、観劇してきた感想をリポートします。(2023年1月・宝塚大劇場)※以降、ネタバレにご注意ください
演出に心揺さぶられる『うたかたの恋』
ミュージカル『うたかたの恋』は、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子ルドルフが主人公です。世界史やハプスブルク家に詳しい方なら、史実に基づく物語の結末を予想できるはず。だからこそ、悲劇へと向かうルドルフとマリー、2人の姿をどう描くのかが気になるところでした。
今回、筆者が特に感動したのは、ルドルフとマリーに感情移入してしまう演出です。
冒頭で、ハプスブルクの象徴である双頭の鷲が大階段に映し出され、両翼の位置にルドルフとマリーがそれぞれ登場します。そして『うたかたの恋』の曲を歌いながら2人は徐々に近づき、手を取り合って舞台に立ちます。大いに期待感を盛り上げるこの流れ、筆者個人は「身分というしがらみを超える2人」を象徴しているように感じました。そうして物語が始まることで、ルドルフとマリーの出会いを詳しく知りたくなります。
続いて、華やかな宮廷舞踏会のシーン。2人の交わす会話からすでに死を覚悟している様子が窺えるものの、「あまりピンとこないな…」と思っていたのですが、ここから時系列は過去に戻ります。互いに深く惹かれあい、うたかたの恋に落ちるルドルフとマリーをドキドキしながら見守る筆者。周囲の人間の思惑も絡み、2人が引き裂かれそうになるところで、再び舞踏会のシーンがやってきます。「マイヤーリンクに行こう」というルドルフの誘いに、マリーは嬉しそうに頷きます。最初の場面をこのタイミングで繰り返すことで、2人の会話にどれだけの想いが込められているのか、より一層深く伝わってきました。あまりに切なくなり、筆者は泣きそうになったほどです…。
花組『うたかたの恋』の感動は永遠に!
『うたかたの恋』の感動ポイントは演出だけでなく、キャラクターの演じ方にもありました。
父親とは政治上の考え方でそりが合わず、母親には思うように頼れない。さらに妻との不仲や、自分に近づく人間への不信感。皇太子という立場に縛られ、孤独に苛まれるルドルフを演じる柚香光さんは、まるでルドルフ本人であるかのようでした。触れれば今にも壊れてしまいそうなルドルフの言動は、彼の苦しみを切々と訴えてきます。
そんなルドルフにとって救いとなるのが、マリーの純真さです。ルドルフに憧れながらも、彼の孤独を感じ取り、臆することなく向き合うマリー。その存在が、どれほどルドルフの傷ついた心を癒したことでしょう。明るく清らかなマリーは、まさに宝塚歌劇のヒロイン像にぴったり。星風まどかさんがひたむきにルドルフを愛するマリーを演じてくれて、本当によかったと感じました。また、キャラクターの人物像がしっかり考えられていて、一人ひとり個性を発揮しつつ、物語に調和しているところも見応えがありました。
『うたかたの恋』の感動は、筆者の中で「永遠の愛」として語り続けたいと思います。
宝塚歌劇団の花組による『うたかたの恋』は、2023年1月1日~30日まで宝塚大劇場にて、その後2月18日~3月19日まで東京宝塚劇場にて公演予定です。詳細は公式HPをご参照ください。
また、『うたかたの恋』作品に関しては、こちらの記事で詳しく取り上げています。
『うたかたの恋』の余韻に浸りつつ、同時上演されたレビュー『ENCHANTEMENT(アンシャントマン) -華麗なる香水(パルファン)-』のキラキラ楽しい世界観にも魅了されっぱなし。2つの異なる感動で、お腹いっぱいの観劇でした!