『うたかたの恋』というミュージカル作品をご存知でしょうか?オーストリアのハプスブルク帝国を舞台とした悲しい恋の物語は、宝塚歌劇団で繰り返し上演されています。初演から変わらず愛されている『うたかたの恋』とは、いったいどんな作品なのか。その魅力について迫ります。

『うたかたの恋』とは

『うたかたの恋』は、フランスの作家クロード・アネによって書かれた小説です。史実をベースに、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子ルドルフが男爵令嬢マリー・ヴェッツェラと心中するまでの悲劇を描いています。

ミュージカル好きの方なら「あの『エリザベート』のルドルフ?」と、ピンとくるかもしれません。その通り、ルドルフは『エリザベート』でおなじみの人物であり、『うたかたの恋』では主人公として登場します。

ルドルフは父・フランツ・ヨーゼフとの対立や母・エリザベートとのすれ違い、妻との不仲に苦しんでいました。そんな中、ルドルフはマリーという女性に出会い、惹かれ合うようになります。身分違いの2人の恋が迎える結末とは…最後まで目が離せない物語です。

『うたかたの恋』と宝塚歌劇団の歴史

『うたかたの恋』は、1983年に雪組が宝塚大劇場での初演を果たして以来、各組で再演されています。1983年の初演から2023年の最新公演に至るまで、主要登場人物であるルドルフとマリーのキャストを一覧化しました。

ルドルフマリー
雪組(1983年/宝塚・東京)麻実れい遥くらら
雪組(1984年/中日劇場)麻実れい遥くらら
星組(1993年/宝塚・東京)麻路さき(宝塚)
紫苑ゆう(東京)
白城あやか
星組(1994年/全国ツアー)紫苑ゆう白城あやか
月組(1999年/全国ツアー)真琴つばさ檀れい
宙組(2000年/全国ツアー)和央ようか花總まり
花組(2006年/全国ツアー)春野寿美礼桜乃彩音
宙組(2013年/全国ツアー)凰稀かなめ実咲凜音
星組(2018年/中日劇場)紅ゆずる綺咲愛里
花組(2023年/宝塚・東京)柚香光星風まどか
※宝塚=宝塚大劇場、東京=東京宝塚劇場

こうして見ると、初演から40年にわたって何度も演じられている人気の高さがよくわかりますね。また、1993年の星組公演以降、『うたかたの恋』は全国ツアーか中日劇場で上演されています。つまり、2023年の花組公演では、30年ぶりに宝塚劇場と東京宝塚劇場に帰ってくるというわけなんです。

花組ファンはもちろん、かつて『うたかたの恋』を観劇したファンにとっても、記念すべき公演といえるのではないでしょうか。

『うたかたの恋』は宝塚歌劇団の名作!

『うたかたの恋』は、どうして宝塚歌劇団で再演され続けているのでしょうか?筆者としては、ルドルフとマリーの悲恋が宝塚歌劇団の世界観とマッチするからだと思います。ハプスブルク家の栄光の陰に、一人ひとりの苦悩や愛憎が深く描かれ、観客をぐっと引き込んでいくストーリー。そしてトップスター演じるルドルフとマリーの美しいビジュアルが、悲恋をさらにドラマチックに盛り上げていきます。

華やかながら哀しみを感じさせる雰囲気は、宝塚歌劇団だからこそ演出できるもの。2023年の花組公演を経て、これから先も名作のひとつとして上演していってほしいですね。

もこ

『エリザベート』大好きの筆者ですが、『うたかたの恋』は観たことがなく…。1度じっくり観劇し、2つの作品を見比べてみたいな、と思います。