来月から日生劇場で上演されるミュージカル『太平洋序曲』。この作品は、『イントゥ・ザ・ウッズ』などで知られるミュージカル界の巨匠ソンドハイムが作曲したもので、1976年にブロードウェイで初演されました。江戸時代の日本が舞台になっているという点でも興味深い本作。一体どんな作品なのでしょうか。

ニッポンが眠りから覚めた、激動の時代。

まず、あらすじを紹介します。江戸末期、まだ鎖国していた日本は、黒船に乗ったペリーの来航に動揺。日本幕府は、下級武士・香山弥左衛門と、鎖国破りの罪で捕らえられたジョン万次郎を派遣しました。二人の交渉によってペリーらアメリカの上陸を阻止しようと試み、一度は危機を切り抜けます。しかし、そこにはまだ開国を迫る諸外国が待ち構えていました。開国へと踏み切らざるを得ない日本は、目まぐるしく近代化への道を疾走するのです…。

日英合作による、新たなアプローチ。

本作は、英国メニエール・チョコレート・ファクトリー劇場と、梅田芸術劇場の共同制作。2004年にオープンしたメニエール劇場は、席数200弱と規模は小さめですが、『屋根の上のバイオリン弾き』『メリリー・ウィー・ロール・アロング』など質の高い名作を扱うことで有名です。梅田芸術劇場との初のコラボレーションとなる今回は、元々西洋の視点で描かれた「ニッポン」に加え、日本側のディレクティングがいかに融合するのかが見所です。

そして演出を担当するのは、『TOP HAT』『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』を手がけたマシュー・ホワイト。この作品を”like a rare jewel(希少な宝石のよう)”と表現する彼が、どのような輝きをもたらしてくれるのでしょうか。

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今だからこそ、今の礎となる歴史を。

最後に、江戸の町を息づかせてくれる豪華キャスト陣を紹介します。

まず、物語全体を俯瞰しながら進行する狂言回しは、山本耕史さんと松下優也さん。香山弥左衛門は、海宝直人さんと廣瀬友祐さん。ジョン万次郎は、ウエンツ瑛士さんと立石俊樹さんのダブルキャストとなっております。将軍/女将は、元宝塚歌劇団雪組トップスターの朝海ひかるさんが務め、その他実力派俳優が多数揃っています。

物語の中で激動の波にもまれていく登場人物たち。開国を迎えあらゆる変化に晒される江戸末期は、何もかもが急速に変化し続ける現代に通じるともいえます。特にコロナ渦においては、昨日の常識が今日には通じなくなってしまうという場面も多かったはずです。そんな不安定さの中にいる私たちは、同じく懸命に生きようとする彼らから、何かしらのパワーを感じることができるのではないでしょうか。

東京公演は、日生劇場にて2023年3月8日(水)~29日(水)。大阪公演は、梅田芸術劇場メインホールにて2023年4月8日(土)~4月16日(日)を予定しています。公演日によってはアフタートークなどのイベントも盛り込まれているそうなので、詳しくは公式サイトをご確認ください。

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この作品では、教科書で習った日本史とは異なる「ニッポン」像を垣間見ることができるのではないでしょうか。また、一国が動く歴史的瞬間を支えた人々の勇姿は、明日への活力を与えてくれると思います。