2021年に韓国のミュージカルアワードで大賞を含む5冠を総なめしたミュージカル『マリー・キュリー』。誰もが知るキュリー夫人の物語を、史実に虚構を混ぜ合わせて描いた創作ミュージカルです。今回は、オンライン稽古の模様と、愛希れいかさん、屋良朝幸さん、上山竜治さん、清水くるみさん、演出の鈴木裕美さんが登壇した取材会の様子をお届けします。

「ありえたかもしれない」マリーの人生を描いた“ファクションミュージカル”

2018年に韓国で初演、2021年に韓国のミュージカルアワードで大賞をはじめ5冠を総なめしたミュージカル『マリー・キュリー』が日本初上陸!

男性科学者しかいない時代にノーベル賞を2度受賞した、科学者マリー・キュリーの「ありえたかもしれない」物語を、Fact〈歴史的事実〉とFiction〈虚構〉を掛け合わせて描いた、ファクションミュージカルです。

物語の舞台は19世紀末。マリーはパリの大学へ進学し、当時は認められていなかった女性科学者として、研究者のピエール・キュリーと共に新しい元素ラジウムを発見。ノーベル賞を受賞しますが、ラジウム工場では、体調を崩す行員が出てきて…。

放射能の研究やラジウムの発見でノーベル賞を2度受賞したマリ・キュリーの苦悩と葛藤が描かれた作品です。


主演のマリー・キュリーを演じるのは、愛希れいかさん。
宝塚歌劇団月組トップ娘役を6年7か月務めました。2018年に退団してからはミュージカル『エリザベート』、『泥人魚』、『マタ・ハリ』と数々の舞台で活躍しています。


共演には、『エリザベート』のルキーニ役が記憶に新しい上山竜治さん。マリーの共同研究者であり、夫のピエールを演じます。上山さんは、ミュージカル音楽をより自由な表現で届けていく音楽フェス「The Musical Day ~Heart to Heart~」の発起人でもあります。

マリーの親友となるアンヌ役を演じるのは、ミュージカル『ヘアスプレー』ではペニー役を演じ、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』への出演が決まっている清水くるみさん。

投資家のルーベンを演じるのは、音楽劇『スラムドッグ$ミリオネア』やオリジナルミュージカル『りんご』で主演を務めるなど俳優としての活動のみならず、振付やLIVEプロデュースなど多方面で活躍をする屋良朝幸さんです。

女性の科学者が認められていない時代にマリーはいかにして生きたのか

オンライン稽古は、劇中から3つのシーンを抜粋して披露。取材会には、愛希れいかさん、屋良朝幸さん、上山竜治さん、清水くるみさん、そして演出の鈴木裕美さんが登壇しました。

ミュージカル『マリー・キュリー』は、ファクションミュージカルといって、大胆な虚構を事実に混ぜ込んでいる作品。愛希さんも「皆さんが伝記でご存知のマリー、プラスアルファ、とても人間らしい部分が出ていて、私は共感できたり、心を寄せられるところがとても多いなと感じています」と話しました。


オンライン稽古で初めに披露されたのは、20代のマリーが、大学進学のためパリ行きの汽車に乗車するシーン。マリーの希望に満ちた心情を表しているかのようなピアノの音と、アンサンブルの身体表現が印象的な楽曲です。

撮影:平野祥恵

ポーランド人のマリーが男性客に絡まれているところをアンヌが助けてくれたことで出会った二人。互いに夢を語り合い、未来に胸を躍らせ、大学に進学するマリーとガラス工場に就職するアンヌは再会を誓い合います。

マリーが静ならアンヌは動という正反対な二人。稽古場での席が隣同士で、普段から親友のようにあれこれ話し合いながら役と向き合っているというお二人の関係性が作品にも反映されていました。

演出の鈴木さんは、「愛希さんは猪突猛進なところが、くるみちゃんは自分が正しいと思っていることはなんでも口にするところが、それぞれ役と似ている」と話しました。

撮影:平野祥恵

次に披露されたのは、投資家のルーベンの講演に論文を持った科学者たちが集まっているシーン。

数ある論文の中から、ルーベンはマリーの論文に興味を持ち、研究を支援することを約束します。「科学」や「論文」と聞くと堅苦しいイメージを持ちますが、そんな考えを覆されるキャッチーな楽曲のダンスナンバーとなっていました。

撮影:平野祥恵

今回、屋良さんは、アニメーションダンス(※)を踊りながら歌うという挑戦が!演出の鈴木さんとアイデアを出し合いながら創っているんだそう。また、共演の聖司朗さんは、World Of Dance Tokyoで優勝を果たすなど、様々なダンスコンテストで優勝しています。屋良さんは、「聖司朗くんが異質な空間を作っていて、ミュージカルというジャンルの中では、本当に新しい表現だなぁと思う」と話します。

※アニメーションダンス:アニメーションダンスは、ポップダンスの一種で、まさにアニメの映像の動きに似たダンススタイルを指します。「ロボットダンス」と表現されることも多く、ウェーブ、スローモーション、ヒット、ヴァイブレーションといった技を駆使して人間離れした不思議な動きを表現しています。「踊る」と言うより「演じる」に近い表現が必要とされるジャンルです。

「屋良さんは集中力と振り覚えが物凄く早い!」という愛希さん。「決して簡単な振りではなかったので、この時間であの振りを!?」と驚いたそう。鈴木さんも「15分休憩しますって休憩していたら、屋良さんは1曲振り付け終わっていた」と言います。屋良さんは「ジャニーズで滅茶苦茶な経験をしてきた賜物かもしれない…(笑)」と語り、経験を活かした作品作りとなっていたようです。

屋良さん演じるルーベンは、とても不思議で異質なキャラクター。「自分の目的を果たすためにマリーを利用している部分と、お客さん目線でシーンを傍観している部分と、シーンを牛耳っている部分と、様々な面を持っている。こういうキャラクターを今まで自分が演じたことがなかったので新鮮」と語ります。

撮影:平野祥恵

最後に披露されたのは、マリーと夫のピエールが研究室でラジウムが不治の病を治すという、新たな可能性についての仮説を立てているシーン。ルーベンを説得し新たに資金援助を受け、2人が研究へと突き進む様子が描かれます。

撮影:平野祥恵

科学に魅了されているマリーとピエールが、いかに共同研究者としても、夫婦としても結びつきが強いかがわかる楽曲です。

献身的にマリーを支える夫ピエールを演じる上山さん。愛希さんとは前作『エリザベート』から共演が続いています。上山さんが演じていたルキーニは、愛希さん演じるエリザベートの命を狙っている役でしたが、今回は逆に守る役。愛希さんは、「そういう意味ではものすごく新鮮ですし、自分が思い付かないところからアプローチしてくださるので、本当に面白い」と話していました。

撮影:平野祥恵

鈴木さんが「韓国の演劇やミュージカルファンの方々が期待している通り、本作も楽曲が素晴らしい!」とコメントした通り、どの楽曲も人物たちの心情に寄り添い、時に掻き立てる素晴らしい楽曲揃い。

マリーが、外国人であることや、女性が科学をやるのを認められていないという境遇の中でどうやって生きていくのか。日本初上陸の“ファクションミュージカル”をお見逃しなく!

撮影:平野祥恵

ミュージカル『マリー・キュリー』は、3月13日(月)〜3月26日(日)東京・天王洲 銀河劇場、4月20日(木)〜4月23日(日)大阪・梅田芸術劇場・シアタードラマ・シティにて上演です。公式HPはこちら

ミワ

シンプルなセットに、俳優の身体表現を生かした演出、素晴らしい楽曲にすぐに本作の虜になってしまいました!マタ・ハリやエリザベートとはまた違った、けれど芯の強い女性を演じる愛希さんに注目です。