『シング・フォー・ミー、ライル』は、『ラ・ラ・ランド』や『グレイテスト・ショーマン』を手がけたベンジ・パセック&ジャスティン・ポールが楽曲を手がけるファンタジーストーリー。字幕版では、世界的シンガーのショーン・メンデスが「ライル」を演じることでも話題になりました。今回は、「ライル」を俳優の大泉洋さんが演じた日本語吹き替え版の鑑賞レポートをお届けします。(字幕版の試写会リポートはこちら

出会いは「珍獣ペットショップ」から

1962年に発行された絵本『ワニのライルがやってきた』をはじめとしたバーナード・ウェーバーの『ワニのライルのおはなし』シリーズを原作としている『シング・フォー・ミー、ライル』。ニューヨークに越してきた少年と「歌うワニ」ライルとの日々を描いています。

舞台はニューヨーク。自称「銀幕スター」の売れないショーマン・ヘクターは、今度こそはひと山当てようと飛び込んだ「珍獣ペットショップ」で、「歌うワニ」の「ライル」と出会います。

ヘクターはライルと生活をともにし、やがてライルとともにステージに立ちます。しかし、お客さんを前にしたライルは歌えず、ヘクターは自身のマフラーと音楽プレイヤーを渡すと、ライルを残して街を去ってしまいます。

それからしばらくして、ライルが取り残された部屋にジョシュたち一家が越してきます。数日後、新しい学校になじめないジョシュが部屋で悶々(もんもん)としていると、天井裏から物音が。ジョシュが恐る恐るのぞきにいくと、そこにいたのは大きなワニのライル。驚きつつも、ジョシュはペットができたと大喜び。そしてジョシュはある夜、初めてライルの歌声を耳にし、次第に心を通い合わせていきます。

ベテランミュージカル俳優との最強デュエットも披露

今回ライルを演じた大泉洋さんは、「ヤクルト400W」のCMで『ハナミズキ』のカバーを披露するなどメディアで度々歌声を披露。また、2年連続で司会をつとめた2022年の「紅白歌合戦」では同じく司会をつとめた橋本環奈さんと『星に願いを』を披露し、歌唱力の高さが話題になりました。

実は大泉さんは、ファンの前で歌声を披露することが多く、ファンの間では歌唱力の高さは周知の事実。しかし、本作においてはそういった人ほど驚くのではないかと思っています。

大泉さんは昨年の夏から歌のレッスンを受け、ハリウッド制作陣のお墨付きを獲得。筆者も長いこと大泉さんのファンなのですが、「ライル」の歌声は、うれしさ・悲しさ・切なさ…それらの全てが歌声に乗って伝わってくる、より感情に訴えかけてくる情感のある歌声でした。

ここから、いくつか歌唱動画をご紹介します。

まずは、ヘクターとライルのデュエット。吹き替え版でヘクターを演じているのは、これまで数々の名作ミュージカルに出演し、過去には劇団四季に所属していた経歴を持つ石丸幹二さん。ヘクターと楽しげに歌うライルの声にこちらまで心が弾んできます。

2曲目は、ジョシュの母ミセス・プリムとライルのデュエット。吹き替えを担当しているのは声優・歌手として活躍している水樹奈々さん。こちらも聞いているだけで心が沸き立ってきます。

最後は、ライルの切ないソロナンバー。切なくも甘い歌声に筆者はハンカチが手放せませんでした。

ライルは「家族」 1人と1匹が起こした奇跡の行方は

ジョシュだけではなく、「完璧な母親」を意識しすぎるあまり迷走するミセス・プリム、新しく赴任した学校で生徒になめられているミスター・プリムと、プリム家は個々に問題を抱えています。しかし、ジョシュとライルとの出会いから一家は変化を迎え、さらに大きな奇跡を起こすことになります。

全体的なストーリーは王道ファンタジーでありながらも、既存の展開にとらわれないラストだったのではないかと思っています。子どもが見て楽しめる作品であるのはもちろんですが、「1人と1匹」の関係性は大人が見ても優しい温かい気持ちになれる作品です。

余談ですが、大泉さんは20年ほど前に舞台で歌声を披露した際にも、ミュージカル出演のオファーがあったそうです。その時は辞退したそうですが、そんなエピソードを知るファンとしては、大泉さんが出演する「ミュージカル映画」は待ちに待った作品。「紅白歌合戦」などの歌唱で何となく気になった方はもちろん、彼の歌声を良く知る方にもおすすめしたい映画です。