英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー発の大注目ミュージカル『マチルダ』が、とうとう日本で初開幕!本公演初日、劇場にはミュージカルファンはもちろんお子様連れや海外旅行客の姿も多く、作品の注目度の高さがうかがえました。舞台の様子をリポートしていきます。(2023年3月・東急シアターオーブ)※ネタバレあり(制作発表の様子についてはこちら

小さな天才・マチルダの完成度に引き込まれる

ミュージカル『マチルダ』は、天才少女マチルダが子供たちを抑圧する大人に立ち向かう物語。やはり当作の目玉といえば、高い知能と唯一無二の想像力を持つ主役のマチルダでしょう。

舞台のマチルダは、とにかく喋る喋る!疑問に思ったこと、頭に浮かんだ物語、さらには本で覚えたブルガリア語までスラスラと長いセリフを迷いなく話す様子には引き込まれます。

本公演初日のマチルダ役は、嘉村咲良さん。舞台ではセリフも歌もダンスも観ていて気持ちが良いほど堂々とこなしていたのに、本作が初舞台というのですから驚きです。

大人が思わずギョッとするようなマチルダですが、不憫であるさまを「正しくない」と率直に表現したり、孤独を隠すための嘘が下手だったり、ときどき見せる5歳の少女らしい可愛らしさが愛おしくなります。

強烈な大人キャラにも親しみを感じるポイントあり

マチルダの周りに居る大人たちは、見た目も性格も強烈なキャラクターばかり。彼らを演じるキャストには、日本のミュージカル界をリードする個性豊かな俳優陣が集結しています。

監獄のような学校で子供たちを脅かすミス・トランチブル校長をこの日演じていたのは、小野田龍之介さんでした。いちミュージカルファンとして本作の日本上陸を待ち望んでいたと言う小野田さん。ミス・トランチブルが登場するたびに客席が沸き、彼女のガキ大将のような忘れがたいキャラクターがばっちり伝わっていました。(インタビュー記事はこちら

マチルダを唯一理解するのが、彼女の担任の先生であるミス・ハニー。生徒たちに優しく、控えめな暮らしを十分だと語る彼女ですが、子供時代のトラウマから抜け出せずどこかおどおどしています。そんな彼女と子供たちの将来の夢が交差する「When I Grow Up」は、印象的なミュージカルナンバーの1つ。

子供たちの目線からは自由でのびのびと聴こえる曲なのですが、ミス・ハニーが歌うフレーズではどこか胸が切なくなります。この日の咲妃みゆさんが演じていたミス・ハニーは、胸の中で大人として強くなろうとするひたむきさを小さく燃やしていて、親しみを感じました。

児童書の挿絵のように個性が誇張されたキャラクターたちと、口ずさみたくなる音楽に『マチルダ』ワールドへすっかり引き込まれた2時間40分でした。

さきこ

筆者は3階席から鑑賞したのですが、上からだと積み木のようにカラフルな照明や規律を守ってきびきびと踊る学校の子供たちの様子が綺麗に観えます。一方1階席では、フィナーレに紙飛行機や紙吹雪が飛ぶシーンがあり、こちらもかなり盛り上がっていました!噂では紙飛行機にはミス・トランチブルによる子供たちの成績が書かれているそうで、運良くキャッチできたらこっそり中身を開いてみてくださいね。