2023年4月10日から2027年度中(時期未定)まで、渋谷にある劇場Bunkamuraシアターコクーンは一旦休館となります。休館前最後の公演である『シブヤデマタアイマショウ』を観劇したら、シアターコクーンでの今までの思い出が蘇ってきました。

可動式の空間を活かして生まれた名作たち

Bunkamuraシアターコクーンは総客席数747席、舞台面と客席の一部が可動式になっており、様々な作品が上演されてきました。中でも筆者が記憶に残っているのは、2013年12月に上演された『マクベス』。長塚圭史さんがシェイクスピア作品に初めて挑んだ作品で、マクベス役を堤真一さんが演じられました。客席が舞台を取り囲むセンターステージにしたことで、マクベスの世界の閉塞感を表現。

また、冒頭の魔女のシーンでは、魔女が客席の通路に登場、かの有名なセリフを言ったのちになんと客席に着席。そこでマクベスが「魔女が消えた!」と言い、観客は魔女と共に闇となったことを悟ります。さらにマクベスが最後に追い詰められ、「森が攻めてきた」シーンでは、客席に置いてある緑の傘を広げ、観客が“森”になるという演出でした。観客と作品が一体となった作品であり、そうさせる劇場なのだと強く体感したことを覚えています。

2021年8月〜9月上演、黒木華さんと中島裕翔さん、そしてこれまた堤真一さんが出演された『ウェンディ&ピーターパン』では、ピーターパンたちが宙を舞い、慣れ親しんだ物語とは異なる少しダークなピーターパンの世界観が劇場一杯に広がっていました。

2022年9月〜10月に上演された舞台『血の婚礼』(木村達成さん、須賀健太さん、早見あかりさんら出演)では、かなり閉鎖的に作られたセットで演じられた一幕から、スペインのだだっ広い丘を思わせる、舞台の一番奥の壁まで見える二幕へのギャップに惹き込まれました。

筆者は見ることが叶いませんでしたが、「コクーン歌舞伎」シリーズでもこういった自在な空間を活かした演出が評判でした。もちろん作品や演出家を始めとする創り手たちの力量があることは前提として、そのクリエイティブを発揮できる空間が、シアターコクーンという劇場だったのではないかと感じています。

再会の日が来たら、『シブヤデマタアイマショウ』

東急百貨店本店土地の再開発計画に伴い、2027年度までは休館となるシアターコクーン。今や何が起こるか分からない世の中ですから、本当にシアターコクーンで演劇を観る日が来るのだろうかと、センチメンタルな気持ちにもなってしまいます。しかし、休館前最後にシアターコクーン芸術監督の松尾スズキさんが総合演出を手がけた『シブヤデマタアイマショウ』では、演劇への愛がたっぷり詰まったコメディ(と風刺と愚痴)がたくさん!きっとまた、その日が来るはずだと信じ願いながら、それぞれの日々を頑張ろうと思わされました。

たくさんの人生の宝物を、ありがとう。またシアターコクーンに、会えますように。

Yurika

『シブヤデマタアイマショウ』でガッツリ踊り、ガッツリコメディに振り切る多部未華子さんが最高でした。シアターコクーンが進化し、より面白い作品が生まれる劇場になることを楽しみにしています。